監督:スサンネ・ビア 出演:ハル・ベリー ベニチオ・デル・トロ デヴィッド・ドゥカヴニー、他 オススメ度:☆☆☆☆
【あらすじ】 オードリーの幸せな生活は、ある日夫が事件に巻き込まれて射殺された事で終わりを告げた。葬儀にやって来た夫の親友で幼馴染みの「ジェリー」は、ヘロイン中毒で堕落した生活を送っていたが、周囲が見放す中1人夫だけがジェリーと付き合いを続けていたのだった。ジェリーは初めて会うオードリーの子供達の事もよく知っていた。夫から色々と話を聞かされていたのだという。今まで敬遠していたジェリーに親近感を感じたオードリーは、ジェリーに同居を申し出るのだが。
【感想】 2007年にアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた「アフター・ウエディング(未見)」のメガホンを取った、デンマークの女流監督スサンネ・ビアの初ハリウッド進出作品。 ・・・という情報は鑑賞後知った。とにかくベニチオーーー!ベニチオ出演作だよぉーーー!←毎回バカですいません
大好き♪ベニ男ちゃん、毎回奇天烈な役ばかり演じる。本当はとってもイケメンなのにぃ♪(超ぴよ的私感) 今回はどんな突き抜けた役なのかなぁ?と思ったら、ドラッグ中毒のおっちゃんでした。まあ、ハマり過ぎです(^-^; そしてちょっぴり久しぶり?にハル・ベリーを見た気がする。それよりもっと驚いたのはオードリーの夫役・・・映画見てる間中ずーっと「うーん。誰だっけ?喉まで出掛かってるのにワカラナイ。でも絶対に知ってる顔だ。誰だっけ」と思い続けていたんだけど、何と「X-FILE」のデヴィッド・ドゥカヴニーだった。うへぇ〜!すげー老けた(ってか丸くなった?)なぁ!!
内容はこんなお軽い調子ではありません。むしろ物凄く暗〜いネタ。 愛する人を亡くした妻と、唯一無二の親友を亡くした男が、同居してお互い影響し合う事で、絶望の淵から這い上がって再生して行こうとする姿を淡々と描いた作品です。 男の方には、元々はエリート弁護士だったのにドラッグにまみれて既にズンドコに落ちていたというオプション付き。
正直、本作はかなり客を選ぶ手合いなんじゃないかと思う訳です。 ダメな人には全く受け入れられない作品でしょう。ネタは地味で暗いしエンターテイメント性は皆無。オードリーが下らない事でカリカリとジェリーに噛み付く姿にイラ付く人も多そうな予感。
しかしながら、最愛の人を喪った事のある人だったら、本作はかなりズシンと来るんじゃないかと思います。 愛する人が死んでしまった。もうこの世にはいない。頭では理解していても心はなかなか付いて行かないんですよね。 本作は、最初は喪失感を共に持つ2人が同居して支え合おうとするものの、お互いが心に抱えたモノにぶつかり、そしてそこから更に立ち上がって行こうとする姿を丁寧に描いて行きます。
もうとにかくベニ男、上手い!スゴイ!アンタは神!! ドラッグでイッちゃってるベニ男、薬を我慢するようになってちょっとスッキリしたベニ男、友を思いオードリーと子供達を支えたいと真摯に向き合うベニ男・・・ぴよの耳たぶも引っ張って下さ〜いっ!!←ただのバカ(^-^;
それからハル・ベリーも上手かった。 本当は意地悪な女なんじゃないんだよ。愛する夫の知らなかった部分を、それまで疎んじていたジェリーが知っていた事が凄く悔しかっただけなんだよね。 子供達に水泳の楽しさを教えるのはジェリーの役目じゃなくて愛する夫のハズだったんだよね・・・夫を亡くした喪失感と空虚な心と焦燥感を、実にリアルに演じていたと思います。
夫を喪った女と親友を喪った男の同居・・・安直に考えればここから恋愛ネタになだれ込むトコロでしょう。 でも本作はギリギリの所で敢えてそれをしない。あくまでも「魂の呼応」として、男女を越えた純粋な人間の再生物語として描いている部分に好感が持てました。
ハワードが「一人は淋しいから」と、妻との離婚を踏みとどまる。 その一方でオードリーとジェリーは心を強く生きて行く事を決断する。 でももう一人じゃない。心には夫がいる。親友がいる。肉体はなくなってもオードリーの心にもジェリーの心にも彼が残してくれた素晴らしいモノが沢山満ちている。 そしてたとえ離れ離れになったとしても、オードリーとジェリーは心が真っ直ぐ繋がった「人生の同志」になったハズ。
大切な人を喪った経験のある人ならば、彼らの再生物語にきっと自分の姿を重ね合わせる部分があるでしょう。 そして幸いにもそういう辛い経験をした事のない人・・・そんな人も本作を見て何か感じて欲しいです。
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