監督:小泉徳宏 出演:佐藤隆太 サエコ 向井理、他 オススメ度:☆☆☆+
【あらすじ】 「大学1年で司法試験1次試験に合格した」学内1の天才・五十嵐が、ある日のプロレス研究会にやって来た。五十嵐は昨年の学祭で見た「学生プロレス」に感激して自分も仲間に入れて欲しいと言う。晴れてメンバーになった五十嵐は天才らしく何事もメモを取ったり、写真を撮っては事細かに注釈を書くマメさを見せるものの、何故か肝心のプロレスの段取りが覚えられずにいた。初試合で段取りを忘れた五十嵐がやったガチプレイ(本気試合)が逆に大人気になるのだが・・・
【感想】 2004年に公演された人気劇団「モダンスイマーズ」の舞台「五十嵐伝〜五十嵐ハ燃エテイルカ〜」を映画化。 主人公演じる佐藤隆太クンは様々なドラマや映画で名脇役っぷりを披露していますが、メジャー作品では初主演。更に主人公が片思いしているプロレス研究会メンバー「朝岡麻子」役を「サエコ@ダルビッシュの嫁」が演じています。
主人公の五十嵐は事故で頭を強打した事がきっかけで「高次脳機能障害」になってしまい、事故以降の記憶を保持する事が出来ずに一晩寝ると何もかも忘れてしまうという設定。 アレですね、「メメント」「50回目のファースト・キス」「博士の愛した数式」と同じネタです。 特に「一晩寝ると前日の事を忘れる」という設定は「50回目の〜」と全く同じ。以前感想に「一晩寝たら忘れるという記憶障害があるのかは謎」というような事を書きましたが・・・本当にこんな症状は存在するの?(^-^;
まあそんな訳で「よくあるネタ」なので、かったる〜い気持ちで見ていた訳ですが(苦笑) 本作、意外にいい話でした。期待してなかっただけにちょっとラッキーな気分です♪
正直「お笑い部分」は大して笑えない、と言うか相当お寒い感じだったものの(こら)、 「高次脳機能障害」になった五十嵐の心の叫び、この障害になってしまった人とそれを支える周囲の家族模様を非常に丁寧に描けていたと思いますね。主人公の本音や葛藤を本人が泣き叫びながら語るという「泣かせ演出」にしてしまうと鼻白むものですが、彼の書いた日記を父親が読む事で観客も知る、という捻った見せ方にしたのは高得点です。 それから五十嵐の父を演じた泉谷しげるサンは素晴らしかった!彼の一人演技にマジ泣きしちゃいましたよぅ〜
後、スタントなしで役者さんが全部演じたというプロレスシーン、クライマックスの試合シーンは本当に手に汗握る迫力と臨場感がありました。敵役のシーラカンズのお2人の動きも本当に玄人はだしと言うか・・・と思ったら、シーラカンズの1人は本物のプロレスラーさんが演じていたらしいです。そりゃー「玄人はだし」じゃなくて「玄人」だ(笑)
基本的にまったり進行、しかも予告編で見て想像した通りの予定調和な作りなので、安心して楽しめる半面意外性や驚きはありませんが、主人公を支える周囲の変化の見せ方が上手かったので、ヒューマンドラマ・成長物語としてプロレス技同様にキレイにオチも決まった、という感じですか。 ・・・実際は主人公は成長しないんですけどね。明日になったら何もかも忘れちゃうんですし(苦笑)
ところで本作の最大の不満は何と言っても「予告編の作り」ですかね。 少なくとも映画の作りとしては、中盤まで観客にも劇中キャラに対しても「主人公は高次脳機能障害である」という事実を隠したまま進行して行くのですが、予告編でネタバレしているので客はその後の展開が丸々読めてしまう。 映画の作り自体が最初から主人公の障害についてネタバレしているなら問題ないですが、作りはあくまでもそれを隠して話が進行して行くので、見ていてハラハラ感や先の展開を期待するという「お楽しみ感」はなくなってしまいました。
集客を望もうと思ったらネタバレも止む無し・・・とも思いますが、実際作品自体が良く出来ていただけに、だったらせっかく本編では隠されていた主人公の秘密なんだから、予告編でネタバレはして欲しくなかったなぁ〜という気はします。 でもよく出来た作品だったと思いますよ。ネタバレされてても泣かせられます。邦画らしい優しい作風ですね。
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