監督:フーベルト・ザウパー 出演:(ドキュメンタリーなのでキャストクレジットはなし) おすすめ度:☆☆
【あらすじ】 世界第二位を誇るアフリカ大陸の淡水湖「ビクトリア湖」、かつては様々な生物が棲む生命の宝庫だったこの湖に、半世紀ほど前に何者かが外来魚の「ナイルパーチ」を放流した事で生態系が崩れ、今ではほとんど絶滅に瀕してしまった。その一方で大繁殖するナイルパーチに群がり、ナイルパーチを加工して西欧諸国に輸出する産業が隆盛、湖の周辺にはタンザニアの貧困層が溢れ返るようになった。
【感想】 第78回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞候補作品(受賞したのは『皇帝ペンギン』でした) 日本での劇場公開は2006年12月。気にはなってたんだけど単館ロードショーで、気にしてる間に気付いたら公開終了してましたねー。こんなんばっかりです(苦笑) レンタル屋に行ったら目に留まったので「おぉ!もうDVD化してやがったか!(うひひ♪)」という訳で鑑賞。
実は本作、知っていたのはタイトルだけでどんな内容のドキュメンタリーなのかは全く知らなかった。 でもタイトル見れば大抵の人が「地球上の生態系が崩れて来ているという実例を見せる話よね?」と思うハズ。当然ぴよもそう思って鑑賞した訳です。
まあ、それは間違っていない。 本作ではアフリカ・ビクトリア湖が「ナイルパーチ」という外来魚によって生態系が崩れてしまった実情を見せる。 日本で言うと琵琶湖が(だけじゃなく日本中の湖が?)外来魚のブラックバスによって、今正に生態系が崩れまくっているというのと同じような感覚なんでしょうか?たまに琵琶湖にバス釣りに行きますが、あそこのブラックバスは本当に意地悪でなかなかぴよのルアーに食いついてくれませんよ(とほほ)
話はうっかり脱線してしまいましたが・・・ でも脱線するのはぴよの話だけではありません。本作も話が脱線しまくって何が言いたいのかよく判りません(苦笑)
話の掴みはナイルパーチなんだけど、そこからそのナイルパーチを海外向けに加工して輸出して儲けようと企んだ企業の話が出てきて、その企業にナイルパーチを卸している漁師達が出てきて、その漁師やナイルパーチを輸送する飛行士達に体を売る売春婦達が出てきて、更に貧困・売春・モラルの欠如によるエイズ感染や危険な漁で親を失ったストリートチルドレンの話が出てきて、更に更にナイルパーチ輸送の陰に隠れて行われているであろう武器輸送の話も出てきて・・・
とにかく話がアチコチに飛び火し、とりとめもなく流れ、そして何もかも見せたようで何も核心に触れずに終る(苦笑)
タンザニア(というかアフリカ各国)の超ド級の貧困話は近年比較的世界中に報道されるようになったので、知らない人の方が少ないくらいだと思うし、アフリカ各国の内戦や近隣国同士の戦争に西欧諸国が武器を供給して甘い汁を吸っている事も比較的世間に知れ渡っていると思う。(近年このネタを映画化した作品は多いですしね) だから、武器輸送のネタが出て来た時には「おーっと!遂に黒幕糾弾ドキュメント来たねー♪」と期待したのですが、
なんだ?この尻切れトンボな見せ方は(薄涙) 尻切れドコロか糾弾の「き」の字もないよ。「何運んで来たんですか?」「さあ?私は運ぶ物の中身には興味ないしぃ」みたいな何のツッコミもないクソインタビューで煙に巻くってどーなんですか?(^-^; ナイルパーチを巡って貧困層が湖畔の集落に群がって治安悪化している状況も見せているものの、凄く失礼な言い方をすれば彼らは湖畔に集まる前から放っておけば死は免れないレベルのド貧乏だった訳で、見ていて彼らの窮状が「全てはナイルパーチのせい」だとはとても言えないですしね。
せめてどれか1つでいいからネタを掘り下げてとことん見せるか、もう少し見せ方を工夫して「全ては西欧諸国に搾取されるピラミッド構造が出来上がっているんです!」という関連性を持たせてネタを繋げて見せてくれれば、もう少し訴えるパワーが出たんじゃないだろうか?と思うんです。
何もかもダラダラとまとまりなく散漫に見せられると、どれもこれも本当に深刻な実情なのは判っていますが・・・見ていて訴えかけられるものがないので、正直言って「退屈」してしまう。 本当に勿体無いと思いますよ。この作品が扱っている題材は地球人なら誰もが知り・誰もが考えなければいけない非常に深刻な問題を取り上げていると思うんです。それなのにこの散漫でとりとめもない見せ方・・・(涙)
アフリカの窮状を全く知らない人には薦めますが、正直「ドキュメンタリー映画」としてはイマイチでした。残念です。
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