監督:ニコラス・ヴァニエ 出演:ノーマン・ウィンター メイ・ルー、他 オススメ度:☆☆☆☆
【あらすじ】 ノーマン・ウィンターは半世紀の間ロッキー山脈で生きて来た「最後のトラッパー(罠猟師)」だ。彼はネイティブ・アメリカンの妻「ネブラスカ」と7頭の犬ぞり犬と共に大自然の中で生活していた。しかし森林伐採と道路敷設により森の生態系は崩れ、狩りが思うように出来なくなったノーマンは山を降りようか悩んでいた。そんな彼の元に生後10ヶ月のシベリアン・ハスキー「アパッシュ」がやって来た。他の犬と馴染まないダメ犬アパッシュに最初は手を焼くノーマンだったが・・・
【感想】 2006年3月に犬ぞりでシベリア横断8000km走破という偉業を成し遂げたフランス人冒険家ニコラス・ヴァニエ氏が、カナダ北極圏横断中にたまたま出合った「ロッキー山脈最後のトラッパー」ノーマン・ウィンター氏に深く感銘を受けて製作したドキュメンタリー風ヒューマンドラマ。 ドキュメンタリーっぽい作りですが、きちんと脚本があるドラマです。しかし映画中に語られるエピソードは、実際にノーマン氏が体験した事を下敷きにしてあるそうですので、全くのフィクションという訳でもないらしい。
よくこの手の「似非ドキュメンタリードラマ」だったり、「ドキュメンタリー」と銘打っている作品にも関わらず人為的な演出がされていると、必ず「こんなのドキュメンタリーじゃない」「飼育された動物を使って演出するなんて騙しだ」等とおっしゃる方がいますが、ぴよに言わせればそれは映画の訴えたいテーマを完全に見間違えてる気の毒な皮肉屋さんでしかない。
この映画に登場するノーマン氏は、役者ではなくご本人が出演して演技をされていますが、長年かの地で生きていたからこそ語れる厳しい現実や、彼の自然に対する畏敬の念と共存していく思いのたけを聞いて、何の感銘も受けずにいられる人がいるんだろうか?彼の一言一言の言葉の、何と重みのある事か! 彼はあの厳しい自然の中で必要な分だけ木を切り、獣を捕らえ、魚を釣り、そして自然を守り共存している。 「地球環境を守ろう!」と声高に訴えながら飽食と贅沢を享受する都会の似非セレブとは訳が違う。
映画はあるシベリアン・ハスキーとの出会いがドラマとしてクローズアップされています。 ノーマンも妻も犬達を愛しているけれど、決して犬と馴れ合いの関係は持たない。いわゆる「ペット」として愛玩している訳ではなく、厳しい自然を生き抜く為のパートナーとして犬を飼育し、犬達もノーマンを主人と認めて信頼する「主従関係」がきっちりと結ばれているのが見ていて気持ちいい。 時にダメ犬だと思っていた新米犬に命を助けられたり、時に狼に狙われた犬達を必死で守ったりしながら、犬も成長し人も改めて自然と野生動物への脅威と共存を実感していく様子が、とてもリアルに描かれていたと思う。
ノーマンの妻ネブラスカなんて、顔は日に焼けて髪はボサボサなんだけどカッコいい〜♪ この方は実際のノーマンの奥さんじゃないようですが、んなこたぁ〜どーだっていいですよ。ネイティブ・アメリカンの女性の懐の深さと情の厚さ、そして自然の中で生き抜く叡智と行動力には「漢(おとこ)らしさ」すら感じる清々しさがある。
そもそもね、この手の映画をぴよが悪く言う事ってないですヨ。 だって「大自然」「民族」「動物」という、ぴよが大好きネタの3点コンプですよ! 万人ウケするタイプの作品じゃないのは百も承知・・・でもお暇があったらたまにはこういう映画も見てやって下さい。
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