2005年08月27日(土) |
愛についてのキンゼイ・レポート |
監督:ビル・コンドン 出演:リーアム・ニーソン ローラ・リニー クリス・オドネル、他 オススメ度:☆☆☆−
【あらすじ】 インディアナ大学の生物学助教授キンゼイ博士は結婚初夜にいきなり夫婦の性生活の危機に直面したものの、真面目なキンゼイは2人の関係を専門家医師に相談し、見事夫婦の危機を乗り越えた。その後自分と似たような悩みを抱える若い学生が多い事を知ったキンゼイは大学で「性行動」についての講座を開くが、学生達の質問が余りに多岐に渡り、この方面の分野がいかに未開拓なのかを実感。キンゼイは科学者として性行動の実態について調査しようと決意するのだが。
【感想】 1948年と53年にアメリカ人の性行動に関する調査報告書「キンゼイ・レポート」を発表し、性科学のパイオニアと言われた生物学・性科学の権威「アルフレッド・キンゼイ」氏の半生を描いた作品。 作品中に映し出される性器部分のアップをボカすかボカさないかでちょっと話題になりましたよね。 (結果的にボカさずに公開するっちゅー事でまたまた話題にもなりましたけど)
さて、そんな「モザイクなしのノーカット版♪」をお楽しみにして見に行った性衝動の押さえ切れない御仁には、はなはだ鼻白んでしまう事請け合いであろう(苦笑)非常に真面目に作られた伝記映画です。
そもそも何故生物学(しかもタマバチ研究の権威)のキンゼイ博士が「人間の性行動」に興味を持ったのか。 ここら辺りのキンゼイ博士の背景の描き方が非常に巧で、自分の実体験と世間の迷信とのギャップ、父親との確執、そしてキンゼイ氏の科学者らしいアカデミックな考え方をソツなく観客に見せて行きます。
話のキモは「科学者バカ」キンゼイ氏を、血の通った「心ある科学者」として成長させた妻の存在でしょう。 人間の性行動に関する調査を始めたキンゼイ氏は、時として「セックス」を科学する内に「心」が置き去りになって「セックス=生物の生理的行動」という記号化されてしまう。 何の悪気もなく「科学としての探究心」から堂々と浮気(しかも相手は男!)してしまうキンゼイに、泣きながら「愛」を説く妻の姿には心打たれる・・・つーか、コレって人として当たり前の事でしょ?と思ったんだけどサ(^-^;
要するに、本作はキンゼイ氏がセンセーショナルなレポートを作り上げる為の苦労・苦悩をドラマティックに見せたり、その衝撃的なレポート内容を提示する事で観客を煽ろうとしている訳ではなく(苦労・苦悩は勿論見せてくれるんだけど) あくまでもキンゼイ氏がこの調査を通じて、人として科学者として成長していく様や妻との心の結び付きを見せたかったんだろうなぁ〜と思う訳です。
で、映画ラストの様子も何だか「はぁ?それで?」てな感じで拍子抜け(苦笑) いや悪くはないんですけど、どうもピンと来ないというのか・・・言い方悪いんだけど「すげーセンセーショナルなネタなんだけど余りに真面目に作り過ぎて面白味を感じない」というのか。 まあ・・・ネタがセンセーショナルだから逆に努めてストイックに作ろうとしたんでしょうけどねぇ。 結果「いい話なんだろうけど面白くはない」という感想になってしまう訳で。(^-^;
でも、「タブーを破る・パイオニアになる」という事はいつの時代であってもとても大変な事なんだなーと思う。 世間の非難の中にあって、それでも己の信念を貫くという事の難しさ。
くじけそうになっても妻との「愛」があるから生きていける・・・面白味は感じなくても(←しつこい)いい話です。
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