監督:デヴィッド・R・エリス 出演:キム・ベイシンガー クリス・エバンス ジェイソン・ステイサム、他 オススメ度:☆☆☆☆
【あらすじ】 高校の生物教師ジェシカは、ある日突然家に押し入って来た男達に拉致・誘拐されてどこかの家の屋根裏部屋に監禁されてしまう。部屋にあった唯一の電話は主犯格の男に叩き壊されてしまうが、何とか配線を接触させると見知らぬ誰かの携帯に繋がったのだ。繋がったライアンという青年に必死で自分の状況を説明するジェシカ。最初はいたずら電話だろうと相手にしなかったライアンだが、緊迫するジェシカの声にただならぬものを感じ、彼女を救出する為に遁走するのだが・・・
【感想】 「L.A.コンフィデンシャル」でオスカー女優となったキム・ベイシンガー主演最新作。 偶然繋がった1本の電話が織り成す息詰まる犯罪サスペンス・・・と聞くと「フォーン・ブース(2003.9.8鑑賞)」みたいだなと思うんだけど、何と脚本の原案を書いたのはフォーン・ブースを書いたラリー・コーエン氏。 この方、よっぽど電話を使った話がお好きなよーです(笑)
さて、奇しくも2日続けて「携帯電話を使ったサスペンス物」を鑑賞する事になったのですが(昨日は「着信アリ2」)、こちらの作品の方が断然面白かったですね。
まずテンポがよくてダレない。最初は何が起こってるのか主人公ジェシカにも観客にもさっぱり判らないんだけど、映画が進む内に彼女の周辺の状況や置かれた立場、そして犯人像と目的等の情報が徐々に明るみに出てくる。 見せ方がウマいんだよね。ある意味手垢の付いた展開ですが、それをどれだけスマートに飽きる事なく観客の興味を惹いて見せていくかが勝負とも言える訳で、本作は脚本が非常にしっかりしていてウマいなぁ!と思ったな。
最初に映画のあらすじを聞いた時は「電話が繋がるなら警察に電話すりゃいいじゃんか」と思ったんだけど、電話は粉々に壊れてて中の配線部分もバラバラになってる状態の物を、理科の教師という事で多少電気系統にも明るいとう設定?(でも生物教師だって・・)の彼女が、ちぎれた配線をモールス信号みたいにパチパチと接触させてたまたま電話が繋がった相手に助けを求める、という展開になっている。
まあ、こんな事あり得ませんがね(笑) でもこの作品のウマい所は、誰が聞いてもあり得ない設定だからたまたま電話を受けた青年ライアンも最初はまるで信じないという所ね。 「イタズラ電話にしちゃ手が込んだ設定だネ」とライアンは軽くあしらって電話を切ろうとするんだけど、この電話を切られたら次いつ繋がるか判らないジェシカは必死な訳で、ジェシカの必死な様子に段々ライアンも「まさか・・・ねぇ?」と疑問に思い、それが段々確信に変わる様子を見せる→観客にもスクリーンを通して同じ体験をしてもらって、このあり得ない設定を鵜呑みにさせる、という手法を取っています。
だから本来穴だらけのハズの設定や状況がその後続いたとしても、もうその頃にはライアンも観客も「何だってアリ!」というトランス状態に持ち込まれてて、こーなったら製作者側の独壇場(笑) やりたい邦題やられてるんだけど、観客はただただライアンと共にクライマックスへ向けてガンガン行くしかない訳。 これはもう「脚本勝ち」としか言いようのない・・・見終わって時間が経って冷静に考えてみると「んなアホな」と思うんだけど、映画見てる間は全く違和感を感じさせないというのはスゴいですヨ!
ただ息詰まるサスペンスだけでは観客はダレる。緊張感というのはそんなに持続しませんからネ。 そういう観客心理も判っているのか?要所要所に笑いのツボを用意して上手に息抜きさせるように作ってあります。
と、褒めちぎってる本作ですが欠点はやはりある。 それは「是非金を払って見に行きたい!」と思う程の客寄せパンダ役者が出演していないという事でしょう(笑) するとどーなるか・・・日本での上映館の数も少なく宣伝費もかけないからメディアで取り上げられる機会も減る。 当然だけど興行収入もそれ程見込めないし、話題にもならずに闇に埋もれる(苦笑)
B級ちっくな小品の秀作としてかなりオススメしたい1本なのですが・・・これは「見た人勝ち」ってヤツでしょう。 映画館でもしこのタイトルを見かけたら、是非足を運んで見てください。なかなかよく出来た作品ですヨ! (本作は2005年2月26日から全国ロードショー予定)
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