監督:マジッド・マシディ 出演:ミル・ファロク・ハシェミアン バハレ・セッデキ アミル・ナージ、他 オススメ度:☆☆☆☆
【あらすじ】 アリは修理してもらった妹ザーラのたった一つの靴を、おつかいの途中で失くしてしまった。家は貧しくてとても新しい靴を買ってもらえそうにない。一計を案じ、アリの運動靴をザーラと交互で履いて学校に行く事にしたのだが、午後から授業のあるアリはザーラが学校から戻って来るのを待っているとどうしても遅刻してしまうのだ。そんなある日、子供マラソン大会の3等商品が運動靴だと知ったアリが、ザーラの為に3等目指して出場する事になったのだが・・・
【感想】 1997年イランの作品。日本公開は1999年辺り?第71回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされています。 イランの映画なんてたぶん「少女の髪どめ(2003.6.24)」くらいしか見た事ないよなぁ〜?と思って調べたら、なんと同じ監督さんの作品でした(苦笑) ちなみに「少女の髪どめ」は2001年の作品です。
アリとザーラはイランの貧民街に住んでる仲良し兄妹。 イスラム圏の国は貧富の差が特に激しいと聞いてますが、日本では考えられないよーな超ド級の貧乏っぷりです。 父ちゃん一応仕事は持ってるものの、家賃は5ヶ月滞納しっぱなし。洗濯屋モドキの内職?をしてる母ちゃんはぎっくり腰が悪化して寝たきり一歩手前状態。 家は「1LDK」と言えば聞こえがいいけど、ガランとした部屋が1つあるだけで、そこで煮炊きしてくつろいで勉強して寝るみたいな・・・こりゃーちょっと気前のいい牢屋ですか?みたいな作り(^-^;
イスラムの学校は当然だけど小学校から男女別で、しかもこれは偶然なのか?午前中が妹ザーラの学校、午後からは兄のアリの学校の授業があるという「半日授業体制」になってる。 これが功を奏して「午前中はザーラが靴を履き、通学路の途中でアリに靴を渡して午後はアリが靴を履く」という荒業がこなせる訳ですわ。
この映画は決して「貧乏ってヤだよねー」という話じゃないですよ。 作品の根底を流れているのは「他人やお互いを思い遣る、慈しみと優しい心」という、実に気持ちのいいものです。
そもそも靴を失くした段階で親に話せば、こっぴどく叱られはするだろーけど靴は買ってもらえたと思うんだよね。 でもこの兄妹は、自分の家の台所事情がよく判ってるからそれを親に言い出せない。そればかりか、途中でザーラの靴を同じ学校の子が履いてるのを見かけて「返してもらおう!」と喜び勇んでその子の家に行ってみたものの、その子の家は父ちゃんが盲目で自分達と似たりよったりの貧乏度だと判ると、返してくれとは言い出せなくてすごすごと戻って来る。
子供だけじゃなくて、この映画に出てくる大人達も善意に溢れている。 自分ちの砂糖すらないのに、教会から預かった角砂糖の塊を砕きながらも「これは預かり物だから使っちゃダメだ」と我慢する父ちゃん。ちょこっとくらい拝借しても罰は当たらないと思うんだけどナ。 アリの運動靴がブカブカで、うっかり脱げて側溝に流されてしまって泣いているザーラに、見ず知らずのおっさんは優しく声をかけてザーラの窮状を聞き届けると彼女の代わりに靴を取ってくれる。それが当たり前のように。
なんでもないエピソードを繋げているんだけど、どれもこれも静かに心に染みる「優しさ」を持ってる。
更にオイシイ事に子役の2人が猛烈に可愛いんだよね。 兄ちゃんのアリも妹のザーラも、実に切なそうな顔でこれまたよく泣くんだけどサ、この2人が大きな目をパッチリ開けてポロポロと涙流すと思わず「おばちゃんが好きな物買ってあげるから何でも言ってごらん?」←だからお前誰だよ(笑) って言いたくなっちゃうよーな愛らしさなのよ!
オチは見えてても(父ちゃんの買い物シーンはちと判り難いね。あのシーンは一番最後の方が良かったのに)、それでも誰もが優しくていい気持ちになれて、そして愛らしい子供に思わず目を細める。 子供を使った作品ってやたらと泣かせが多くて、正直言ってぴよはちょっと苦手な部類なんだけどさ・・・
この作品はオススメです!見終わった後とっても気分が良くなりますヨ♪
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