監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ 出演:イワン・ドブロヌラヴォフ ウラジーミル・ガーリン コンスタンチン・ラブロネンコ、他 オススメ度:☆☆
【あらすじ】 母とつつましく穏やかに暮らす兄弟の元へ、ある日突然12年ぶりに父がひょっこり帰って来た。写真でしか知らない父親が目の前に現れた事で動揺する2人だったが、直に兄のアンドレイは逞しく家長然とする父を慕うようになる。だが弟のイワンは父親が胡散臭く見えてどうにも馴染めない。翌日母の提案でキャンプ旅行に出かけた父と兄弟の3人だったが・・・
【感想】 アンドレイ・ズビャギンツェフという舌噛みそうな名前の監督さんの長編映画デビュー作品。デビュー作にしてヴェネチア国際映画祭のグランプリ・金獅子賞を受賞し、映画祭で上映した際には15分間もスタンディング・オベーションが止まらなかったそーだ。そればかりではなく世界各国の映画賞を総なめにし、正に世界が認めたロシア人新人監督さんの作品。
世の中には「踏み絵」のような映画があるとぴよは思う。 非常に格調高く文学的で、映像美も申し分なく、内容はシンプルでありながらメッセージ性が強く、しかもパッと見ただけでは何が言いたいんだかさっぱり判らない。 その映画を見た事でどれだけ感動出来るか否かが、見た人の情緒の豊かさ等の尺になる・・・要するに「この映画見て訳わかんないなんて言ってるよーじゃ人間として底が浅いネ」と言われるような、「映画通」を自認してる人なら絶対に絶賛しなければいけないよーな、絶賛出来なければ人間として劣ってると言われそーな、そんな作品。
この映画が正にそういう「映画好きと言ってるヤツにとって踏み絵のような作品」だと思うんですわ。
さて、 この映画の公式HPのトップに書かれている文章をそのまま書き写してみましょう。
なぜ父親は12年振りに家に帰って来たのか? なぜふたりの息子を湖への旅に連れ出したのか?どうして何も語らないのか? なぜ息子たちに辛く厳しくあたるのか?島で掘り出したあの箱には何が入っているのか? 12年もの間どこで何をしていたのか?いったいこの父親は何者なのか? なんで今さら帰ってきたんだ
これは2人の息子(特に弟のイワン)の心の叫びなんですが、観客も全く同じ事を思うハズ。 で、この話は公式HPでも書かれてるのでネタバレではないと思うけど、上記の疑問に対する答えが全くありません。 要するに、この作品はこれらの疑問点を解決してスッキリさせる事が問題ではなく、これらの疑問というのは「父親」という存在と息子の関係、息子側から見た掴み切れない「父親」という確かでありながら不確かな存在の象徴として描かれているんだろうと誰もが推察出来ます。
で? どこで感動するんですか?(^-^;
映画はキリスト教的宗教観をふんだんに散りばめ、絶対的な父親の存在と父親に対する理由なき畏怖、複雑な息子の心情を実に美しい映像に絡ませて見事に描き出し、役者のセリフを極力少なくして演技で見せていく格調高い作り。 役者もこの難しい役を見事な演技で応えてくれて、そりゃー世界で大絶賛されるのもさもありなん!でしょう。
で? 見てもちぃーっとも面白くないし感動もしなかったんですけど、ソレガナニカ?(^-^;
大体からして、この父親が好きになれないもん。 12年も家族ほったらかしにしておいて、今更ひょっこり帰って来てエラそーにすんぢゃねーよっ!! 「母親に甘々に育てられたから根性なしだな。オレが男というモノを見せてやる」ってつもりなんだか知らねーけど、今更そんな事するくらいだったらちゃんと帰って来てきちんと子育てに参加しとけってーんだ!(怒) イワン、おまへはちぃーっとも悪くないゾ。こんな胡散臭い父親の事をムリに「パパ」なんて呼ぶ必要ねーゾ。
この映画を見て感動出来るか出来ないかが「人としての優劣の尺」だと言うなら、ぴよはバカの単細胞で情緒のカケラもないアホの門外漢で結構だ! どーせぴよはB級バカ映画とアクション見て大喜びする、オツムの程度の低〜い底の浅い人間ですヨ。
まるで「裸の王様」に出会ったような気分だ。 さっぱり目に見えない「素晴らしい衣装」を誉めそやさなければ許されない。 そのタブーを敢えて犯すのには勇気がいる。
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