監督:パク・チャヌク 出演:チェ・ミンシク ユ・ジテ カン・ヘジョン、他 オススメ度:☆☆☆☆+
【あらすじ】 オ・デスは妻と娘のいる普通のサラリーマン。ところがある日突然オ・デスは姿を消した。不仲だった妻が殺された事から殺人容疑をかけられたオ・デスだったが、実は彼は何者かに捕らえられてそのまま15年間も監禁されていたのだった。 15年後にようやく脱出したオ・デスは自分を監禁した犯人への復讐を誓う。すると犯人から彼に「15年間も監禁された理由と犯人を5日間で探し出せ。さもなくば殺す」と逆に脅迫されたのだ。
【感想】 土屋ガロンと嶺岸信明の共作で96〜98年に「漫画アクション」誌で連載された同名コミックの映画化。 原作は日本のコミックですが韓国で映画化され、更に2004年カンヌ映画祭で上映されるや10分間のスタンディング・オベーションが起こり、見事グランプリを受賞した事で話題になっていますよね。
男の鬼気迫る復讐劇と、平凡な男が何故15年間も監禁されるハメになったのか?そして犯人は?というサスペンスを見せる非常に手の込んだ作品です。
が、この作品・・・何を書いてもネタバレしそうでして。 という訳で、この映画未見の方はこの先を読むのはご注意下さい
なるべくネタバレにならないように頑張って感想書こうと思いますが・・・
この映画のキモは、15年振りに監禁から逃れたオ・デスが犯人と最初に携帯電話でコンタクトを取った時に犯人から言われる言葉「塵のような砂も、大きな岩も、等しく水底に沈む」←こんなよーな内容のセリフ 意味は「大きかろうが小さかろうが、罪の重さに変わりはない」といったトコロか。
「人は生まれながらにしてみな罪人だ」と書いていたのは聖書のどの章だったか・・・。 どんなに聖人君子だと言われる人でも、自分の意識外で他人を傷付ける事はあるハズ。自分の言った何気ない一言が、知らない間に誰かを傷付けていたという事は誰しも1度は経験しているでしょ? それは罪なのか否か・・・やっぱり傷付けられた相手にとっては罪に決まってる。それによって運命すら変わってしまう人だって中にはいる。そんな些細な事を、と思うのは罪の意識もなく不用意な言葉を発してしまったコチラ側の言い訳で、傷付けられた側にとってその「何気ない一言」は償わせても償わせ切れない深いダメージを被っているのだ。
その一方で、復讐こそが生きるよすがになる事もある。 死んでも死に切れないという恨みの感情が、人を生かし続ける理由にもなり得るのだ。
作品の初期段階から非常に緻密に計算され尽くした伏線が張り巡らされ、何気ない小さなセリフ一つにも後に重要な意味を持たしてクライマックスではあっと驚かせ、観客を有無も言わさずこの映画の世界観に引きずり込むパーフェクトな脚本と演出になっていたと思います。 役者の鬼気迫る演技も完璧で、ダレる箇所など一つもない。正に「完全な映画」だと思います。
しかしながら、ぴよはこの作品が全く好きになれない。 鑑賞後いつまでも引きずる、筆舌に尽くしがたいこの猛烈な嫌悪感をどう表現すればいいのか・・・ それはこの映画で使われていたネタが、人として最もタブー視されている事だったからなのか?勿論それもあるだろうし、この作品が取り上げた「人の犯す罪」と「復讐」への追求振りが、余りに冷酷無比だったからのか? そこに贖罪はあるのか?そこに救いはあるのか?
人間の根本の部分を掘り下げて直視し、完璧な脚本・演出・演技でそれを観客に体現させた非常に素晴らしい映画だと断言出来ます。出来ますが・・・
何度も言うが、ぴよはこの作品を好きになれない。
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