2004年02月28日(土) |
グッバイ、レーニン! |
監督:ヴォルフガング・ベッカー 出演:ダニエル・ブリュール カトリーン・ザース チュルパン・ハマートヴァ、他 オススメ度:☆☆☆☆−
【あらすじ】 ベルリン崩壊前の東ドイツ、ある日、反社会主義デモに参加して捕まったアレックスを偶然見かけた母は、心臓発作を起こして昏睡状態になってしまった。8ヵ月後に母は奇跡的に目覚めたが、彼女が昏睡している間にベルリンの壁は崩壊、ドイツは劇的に変貌を遂げていたのだ。 医師から「もう1度強いショックを与えたら、命取りになるだろう」と告げられて戸惑うアレックス・・・10年前に父が家族を捨て西ドイツに亡命した反動から、必要以上に社会主義に傾倒するようになった母。アレックスは母の為に自宅を壁崩壊前の状態に直し、東ドイツ体制が今も続いているかのように装うのだが・・・
【感想】 第16回(平成15年)東京国際映画祭・特別招待作品。 実はこの作品は水曜日(25日)に鑑賞したんですが、急遽「ロドリゲス祭り」を勝手に開催してしまったので(苦笑)、映画感想UPが先送りになっちゃいました。なので、ちょっと印象が薄れて来ちゃってる。(^_^;)
話は、ベルリンの壁崩壊による東ドイツの昏迷を見せる・・・んじゃなくて(タイトルだけ見るとそんな印象だけど)、あくまでも親子の愛を見せるヒューマン・ドラマ仕立て。 東ドイツ体制に身も心もどっぷり浸かった母親にショックを与えないよーに、壁崩壊の事実をひたすら隠してアタフタするアレックス君と周囲の人間模様、更に母親側からの「子への愛」部分もさりげなく見せる手の込んだ作りです。
「ヒューマンドラマ=お涙頂戴」という図式は誰もが考えがちですが、この作品は決して押し付けがましい「親子愛」や泣かせな作りをしていないのが、ぴよにはとても好感が持てました。 「泣かせ」どころか、アレックス君が母親の為に東ドイツ状態を演出するくだりはかなりユーモラスです。 特に衛星放送セールス会社の同僚と一緒にニュース番組を作る辺りは、母親の為という大義名分で自分達が楽しんでるんじゃねーのか?と思う程、実に嬉々として「東ドイツ演出」を頑張っちゃってて思わず笑っちゃいました。
全体的にエピソードが増長で、同じようなイベントの繰り返しになってしまうので多少展開がダレる感じもありますが、このちょっとおっとりしたペースの方が逆にこの作品の雰囲気には似合っていたような気もしますね。 木目細やかに当時の東ドイツ市民の様子も描いているので、アレックス君の奮闘振りがより微笑ましく見れますし♪
母親側からの告白はちょっと意外な展開でしたが、子供からだけでなく親からも双方向で深い愛情を通わせていたというエピソードとして上手に話をまとめていたと思うし、映画冒頭で使われている無意味に思えた宇宙飛行士のエピソードも、後の展開にきちんと絡ませて(しかも結構笑っちゃう)、なかなかソツのない作りです。
肝心の「母親は実際の所、東西ドイツが統一された事を認識していたのか?」という部分が、最後の最後まではっきりさせないで終わっていますが(看護婦のララが母親に話すくだりがありますが、母親自身がそれを理解してるかまでは謎) この微妙な終わり方だったからこそ余韻が残るんじゃないかと思う。 アレックスは死ぬまで母親を騙し通して、母に幸せな一生を送ってもらったと信じているだろうし、母親は自分の為にここまで我が子が骨を折ってくれたという事が嬉しかったに違いない、と。
「泣かせ」な映画が好きな方には少々物足らないかもしれませんが、実際の親子の愛ってこの作品の色みたいな・・・ ぼんやりしてて、ゆるやかで、不確かなようでいて、でも根はしっかり繋がってる。
そんなものだとぴよは思うんですよね。
|