監督:西川美和 出演:宮迫博之 つみきみほ 平泉 成、他 オススメ度:☆☆☆☆
【あらすじ】 明智家は誠実で周囲からの信頼も厚いベテランサラリーマンの父、良妻賢母の母、痴呆症の祖父、そして子供の頃から憧れていた職業・教師になった倫子の4人家族。倫子は結婚を前提に交際している同僚教師がいて、家庭は円満そのもの・・のハズだった。 その明智家の団らんが砂上の楼閣だった事が祖父の死によって明らかになる―そして泥棒まがいのペテンぶりに激昂した父が勘当し、家族の誰もが忘れたいと思っていた兄が、10年振りにひょっこり帰って来たのだ・・・
【感想】 最近TVドラマで役者としての頭角をメキメキと現している「雨上がり決死隊」の宮迫博之がスクリーンデビュー!彼の脇を固める俳優陣も実力派俳優を配して臨んだ渾身の一作。監督はこの映画が初メガホンで、更に脚本も手掛けた才能溢れる女性監督・西川美和氏。
ホームドラマの「平凡だけど温かい家庭」100点満点な家族・・・その家族の1人1人が抱える闇。 その余りにリアルで、余りに辛らつな「闇」の描写に、ぴよは共感を突き抜けて感動すら覚えちゃったね! この新人監督さん(新人脚本家さんとも言えるか)は実に人間描写が巧みだし、また配役の人選もドンピシャリとハマっていた。平泉成と大谷直子の夫婦って、本当に実生活で夫婦だって言われてもうなずけちゃうくらいに息が合ってる!(笑) 更に加えて言うなら・・・ボケたじいちゃんを演じた落語家・笑福亭松之助氏の素晴らしさと言ったら!!
ボケたじいちゃんが死んで(死ぬきっかけは母の心の闇の部分だ)、その葬式の席で今度は誠実を絵に描いたよーな父の嘘が露呈する。家族をペテンにかけて勘当された兄を異端視していた妹が知る、我が家族のなんと愚かな事よ・・・
1番近しい存在・家族。 でも1番近しいからこそ取り繕ってしまう、つまらない虚勢を張ってしまう、もっと簡単に言えば「いい家族を演じてしまう」自分って、実は誰でも感じてはいないだろうか? 話は兄の帰省によって、その取り繕っていた家族が「本当の自分」をさらけ出す事になるんだけど、つみきみほ演じる妹だけは父や母がさらけ出した「本当の自分」を認める事が出来ない。でもこれも見ていてうなずける設定だったと思うし、彼女の存在はこの家庭を「平凡だけど温かい家庭」として取り繕うための「箍(たが)」だったんだろうと思う。
その後の展開もすごく気が利いてると思った! 今まで言う事成す事ウソとペテンばっかりだった兄に「お前って人を騙した事が1度もないよな」と感心された妹が、初めて兄をペテンにかけようとする。しかもそのペテンは「平凡だけど温かい家庭」を守ろうとするために。
でも彼女が兄に誘われても越えられなかった川の先には・・・
リアルで辛らつで、でも家族の崩壊とその後に仄見える再生を予感させる含蓄の深〜い話。 すごく地味で淡々と話は進むけど、久し振りに丁寧に作られた質のいい邦画を楽しませてもらった気分! あ・・・書き忘れてましたが初主演の宮迫クン、彼の演技はいいね♪役者専業になった方が飯食えるんじゃない?(笑)
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