2003年09月18日(木) |
名もなきアフリカの地で |
監督:カロリーヌ・リンク 出演:ユリアーネ・ケーラー メラーブ・ミニッゼ シデーデ・オンユーロ、他 オススメ度:☆☆☆☆−
【あらすじ】 ナチスのユダヤ人迫害により弁護士の職を失ったヴァルターは、ケニアに渡り農場で職を得た。1938年4月、夫ヴァルターに呼び寄せられてこの地に移り住んだ妻のイエッテルと幼い娘レギーナ。ところがケニアの過酷な環境に馴染めないお嬢様育ちのイエッテルは、始終不平を漏らしドイツに帰りたいと言っては夫と衝突する。 そんな中、娘のレギーナは現地で雇った料理人のオウアに「小さなメンサブ(奥さん)」と呼ばれて可愛がられ、引っ込み思案で臆病だったレギーナはオウアと友情を通わせる事で、ケニアの大地に馴染んで行ったのだが・・
【感想】 第75回アカデミー賞最優秀外国語映画賞受賞作。 舞台は第二次世界大戦前のナチス・ドイツのユダヤ人迫害が激化する頃から終戦後の1947年まで。ナチスのユダヤ人迫害を題材にした映画は数多く作られているけど、ケニアに亡命する話というのは今までにないアプローチだよね。 つーか、あの時代にドイツに住むユダヤ人はこんな辺境の地にまで逃げていたんですか・・それすら知らなかったっすよ。
お嬢様育ちでブルジョア・マダムのイエッテルが、ケニアという土地と原住民に馴染めず(と言うか馴染もうとせず)、家族や友達が残っているドイツに帰りたがるくだり・・・「何すっとこどっこいな事言ってんだ!このワガママ女め!命が助かっただけ有難いと思え!!」くらいな気持ちで見てたんだけど、考えてみると「ドイツに帰りたい」「ドイツの頃の方がよかった」とイエッテルが言うのは致し方ない事だと思う。 彼女はその後ナチスが自分達ユダヤ人にどんな仕打ちをするのか、この段階では予想もしていなかったのだ。
現実が見えているヴァルターと、まるで認識のないお嬢様育ちのイエッテル。イエッテルの目から見ると、ドイツではリッチな弁護士として働く自慢だったハズの夫は、今では小汚い農場で肉体労働をするしょぼい男。しかも弁護士の職を失っただけでしっぽを巻いてケニアに逃げ出した根性なしにしか見えない。
彼女、映画冒頭からかなり感じ悪さ爆発させてますが(苦笑)、これが当時の世間知らずなブルジョアユダヤ人マダム達の偽らざる実感だったんだろうな、と思う。
過酷で数奇な運命。我が身の不幸を呪うイエッテルが、ようやくケニアという国で自分の生き方を見つけた時、この地をわざわざ選んだハズの夫が「この土地では自分らしく生きられない」と嘆くという皮肉。 アイデンティティーにおいては男よりも女の方が確立されているような気がする。 夫は冷静に時代を見据えて立ち回れるものの、結局この地に自分の居場所を見出す事は出来なかった。だけどあれだけ頑なにこの土地を拒絶していたハズの妻は、「この地で生きていくしかない」と悟った時、誰よりも柔軟にこの土地を受け入れて自分の生きるよすがを見出して行く。
この映画の夫婦に限った事ではなく、現実でもこういう「男と女の生き方のギャップ」というのは感じますわ。 何か男と女という「性」の違いを見せつけられたよーな感じがしたんだけどね。
映画が言いたい事とはちょっと違うのかもしれないけど、「女性」という性の強さと柔軟さを考えさせられる話だった。 イエッテルもレギーナも、きっとどこに移り住んでももう自分を見失う事はないだろう。 ケニアという大自然、そしてオウアとの交流は、それを教えてくれる素晴らしい環境だったんだろうと思う。
・・・あぁ、ケニア。行ってみたいなぁ〜♪(笑)
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