監督:花堂純次 出演:三浦友和 田中好子 勝地 涼、他 オススメ度:☆☆☆☆+
【あらすじ】 静岡県浜名郡舞阪町で生まれ育った河合純一。彼は先天性の視力障害で生まれつき左目は見えず、右目も3歳の時に手術で奇跡的にわずかに見えるようになった・・喜ぶ母親に主治医は残酷な宣告をする。「いずれこの子は必ず失明します」 家族や友人、周囲の暖かい愛に育まれた純一だったが、中学3年の時に完全に失明してしまう。大好きだった水泳も、周囲の足を引っ張るからと大会出場を辞退しようとする純一。だが、熱血教師・森田やクラスメイト、家族の励ましでもう一度夢に向かって努力しようと立ち上がったのだ・・・
【感想】 1992年バルセロナ、1996年アトランタ、2000年シドニー、3度のパラリンピックに出場し、現在までで金メダル4つを含む合計14個のメダル獲得という偉業を成し遂げた河合純一氏の、子供時代からシドニーパラリンピックまでの半生を綴った映画。
ぴよの周囲には「障害者」と呼ばれるような人がいない。 だから、実際に体に障害を持つ人の気持ちや、障害者の家族の気持ち、障害者と向き合う人達の実際の気持ちというのがどういうものなのだかよくわからない。 ただ、よく耳にするのは「障害者だからといって、決して特別な訳じゃない」とか、「気の毒にと思われたくない」という言葉。
この映画は事実が元になっているので、そこの所がかなりリアルに描かれている。 完全に失明してしまった純一少年に、子供の頃から通い慣れた駄菓子やのおばちゃんは、心底気の毒そうな顔で言う。 「可哀相にねぇ・・もう何の夢も持てやしない。」 「これからは誰かにすがって生きていかなきゃいけないんだから、他人様に嫌われないようにしなくちゃね」
・・決して純一少年に意地悪を言っているんじゃない。おばちゃんは心から純一を心配しているのだ。 だが時として他人の同情の言葉というのは、相手の心を八つ裂きにする。 水泳部顧問の森田教諭に泣いてすがりつく純一少年の姿に、涙しない人はいないでしょう。
決して河合純一氏を美化した映画ではない。 純一はクサったりふてくされたりするし、友達と喧嘩もする。反抗的な言葉もポンポン言う。
それでもどうしても教職に着きたいという彼の信念、そしてそれをサポートし続けた家族、決して純一を特別扱いしない心優しい友人達、純一の夢をなんとかして叶えてやりたいと遁走した熱血教師、それから純一の水泳の才能を見出してパラリンピック出場を支えてくれた盲学校の教師も・・・
純一の血の滲む努力と、それを見守る素晴らしい環境、このどちらが欠けても今の「河合純一」はあり得なかった。
「事実」ほど人の心を打つモノはない。 この素晴らしい奇跡の物語を、もっともっと沢山の人に知って欲しい。
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