Experiences in UK
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2006年05月22日(月) 第144-145週 2006.5.8-22 急回復している英国の出生率、ガッチャマン発見

(急回復している英国の出生率)
18日に英国家統計局(ONS)が発表した統計によると、2005年の英国の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供数の推計値、Total Fertility Rate, TFR)が13年ぶりの高水準である1.80になったそうです。英国の出生率は2001年の1.63をボトムに4年連続でハイ・ピッチの回復傾向を続けています(ちなみに日本は1.26程度)。

ONSのプレスリリースは、いくつかの注目すべき関連データを紹介しています。例えば、以下です。
・2005年の乳児死亡率が過去最低の0.5%まで低下した。
・2004年に30歳台前半(30-34)の女性の出生率が20歳台後半(25-29)のそれを初めて上回って、年代別で最高の出生率となった。2005年も同様の傾向が続いた。
・婚外子の増加という長期的な傾向が持続している。2005年は新生児の42.8%が婚外子だった。ちなみに、95年は30%程度。

婚外子の割合が高いことには驚かされますが(日本は2%程度)、これでも欧米全体でみると平均程度のようです。欧米で婚外子の割合が高まっている背景には、結婚形態の多様化や婚外子に対する法的な扱いの違い(欧米では日本ほど不利な状況におかれない)などがあるようです。
他方、婚外子の増加傾向と密接な関係があると推測される事実として、英国ではティーン・エイジャーの妊娠・出産率が大陸欧州と比べて高いということがあります。これは英国において社会問題となっており、政府は教育の徹底などによって10代の妊娠率を半減させるという目標を掲げています。

(出生率上昇の背景)
英国で出生率が急回復している要因については、リリースでは触れられていません。
因果関係は明確ではないものの、いくつかの制度的な要因を指摘することができます。例えば、近年の政策レベルの動きとしては、「育児休業」制度の拡充(99年より)、「全国保育戦略(National Childcare Strategy)」による保育サービスの充実(98年より)、それらを総合するものとして「ワーク・ライフ・バランス」支援策(00年頃より)などがあるようです。
最後の「ワーク・ライフ・バランス」支援策を政府が標榜している背景には、「現代における社会的、経済的、経営上の中心的な課題は、仕事と家庭生活を両立させるような柔軟な働き方を可能にすることである」という問題意識があります(HM Treasury and DTI, “Balancing work and family life: enhancing choice and support for parents”)。具体的には、「父親休暇」制度の導入や「在宅勤務」等柔軟な勤務形態を要求する権利の新設などが実現されています。

現在の日本では、少子化対策として、経済的な側面からの支援が中心に議論されているように感じられるのですが、それだけでは社会は動かないように思えます。重要なのは、政府レベルで上記括弧内のような指針(新しい価値観)を明示したうえで、それを実現するような制度の変更・拡充を講じることなのではないでしょうか。

実際のところ、英国における出生率の上昇に対して何が奏効しているのかはよく分かりません。しかし、「ワーク・ライフ・バランス」政策など社会全体の方向性や価値観に影響を与えるような思い切った試みが何らかの効果を及ぼしている可能性はありえるでしょう。
「イギリス人は歩きながら考える。フランス人は考えてから走り出す。そしてスペイン人は走ってしまってからやっと考え出す」という国民性に関する有名な比喩がありますが、保守的な国民性が強いように考えられるイギリス人が、実は旺盛な進取の気性を併せ持っているということは、当地で暮らしていて本当に実感することです。新しい試みを見切り発車(と日本人には思えるような形)で始める際の彼らのコメントはつねに「問題が見つかれば都度見直していけばいいじゃないか」です。

(ガッチャマン発見)
週末に近所の公立図書館に子供が借りていた本を返しに行ってきました。子供たちは、母親に連れられてしょっちゅう図書館通いをしているようですが、私がゆっくりと館内を見て回るのは今回が初めてでした。
二階に児童書のフロアがあり、子供たちが本を選んでいる間に各書棚間を徘徊したところ、意外な(というほどでもないのですが)発見をしました。それは、英訳された日本のコミック本が多数置かれていたということです。私の知っているものだけでも「鉄腕アトム」「名探偵コナン」などがあり、その他良く知らない日本のコミックが数点置いてありました。
日本のコミックやアニメーションが、英国のみならず世界各地で大いに人気を得ていることは承知していましたが、実際にモノを目にすると改めて感慨深い気分になります。その楽しさや素晴らしさをいちばんよく知っているのは、数十年前にこれらにいれあげていた我々自身なので、ちょっと幸福な誇らしい気分になります。

いちばん驚き、個人的に心がときめいたのは、「ガッチャマン」の豪華特製・コミック・ストーリー本でした。タイトルが“Battle of the Planets”となっており、科学忍者隊の隊員の名前などが西洋風に変えられているのですが、絵は我々が見ていたものそのままでした。
実はなぜか「ガッチャマン」を少し知っていて大好きな長男は、思わぬめっけものに狂喜し、即借り出すことを決断、家に持ち帰ってからも肌身離さずに持ち歩いています。本当は私ももっと見たいのですが、なかなか貸してもらえません・・・。

日本のアニメといえば、以前に近所に住むフランス人家族のご亭主から誇らしげに見せてもらったジャパニーズ・アニメがありました。彼のPCの中にダウンロードされているお宝映像ファイルで、それは「マジンガーZ対デビルマン」でした。たぶん劇場映画用に作られたものだと思うのですが、すべてフランス語の吹き替えが付いていました。
彼曰く、「フランスのTVでは昔マジンガーZが流れていて、自分は小さい頃から大好きだった」とのことでした。けっこう前から日本の名作アニメーションは海外に輸出されていたようです(真偽不明ですが、80年代の米国で「新造人間キャシャーン」が流行していたという話をきいたことがあります)。

さて、図書館一階にある一般向け書架をそれとなく見て回っても、日本の小説の英訳本がけっこうあることに驚きました。海外での評価が高いことで知られる村上春樹は言うまでもなく(ハルキ・ムラカミの名前は英国の一般書店やメディアでもしばしば目にする)、桐野夏生の「OUT」や吉本ばななの英訳本が置かれていました。


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