僕は、時折、消えるのだ。
振り返った瞬間、
目をそらした瞬間、
ほら、もう居ないから。
驚いて少し目を見開く君の表情が、
好きだから。
またふと現れて、
頬をふくらませた君を抱きしめるのが、
好きだから。
だから、
君が泣くなんて思わなかったんだ。
ごめんね?
あんまり、消えないようにするから。
誰かを思うだけで
涙があふれるような
そんな
強い感情
仕草や声や髪の質
思い出してこぼれるのは
微笑みでありたいよ
ねえ?
会えなくて
届かなくて
そのうえ
声まで奪うのですか?
ひとり空回る
夜は更ける
呼び出し音 延々と
あなたに捧げる言葉が
また
死んでいく
やけに静かな部屋
秒針のカチカチが妙に響く
ながらく忘れていた感覚
一人の夜 枕を濡らすなんて
ああ 今 この瞬間
隣に君が居てほしい
無機質な応答メッセージ
投げ出された電話は沈黙
こんなの慣れていたはずなのに
君の空 きっと星が瞬いて
ああ 今 この瞬間
君の唇に触れたい
街灯に雪が円錐に輝く
足跡を白く塗りつぶす
僕はどこから来たのだろう
ふとした瞬間に意識する孤独
ああ 今 この瞬間
君の体温を感じていたい