「君の名は。」を「君の名は」と書かれていると「里見☆八犬伝」を「里見八犬伝」と書いてる人に対してと同じくらいのもやっとを感じる口ですが、ティーンエイジャー&リア充カプに大人気と評判の「君の名は。」、ぼっち鑑賞してまいりました。 観たのは先週のことなのですが、二回目を観る前に感想吐き出すだけ吐き出しときたいので、ざっくりと書き並べてみます。
「君の名は。」、名前は聞いたことのある、作品名も聞いたことのある、公開されるたびにオタク界隈では何かしら話題となる新海誠監督の作品ということで、この作品についても夏前からぼんやりとは知っていたのでは、と思います。 ……が、特に意識し始めたのは、少年ラケットサイン会のために山手線に乗った時。参加券入手のタイミングか実際のサイン会のタイミングか記憶が定かでないのですが(サイン会の時はオリンピックの広告が目立ってたから、多分参加券入手の方だと思う)、パンフレット表紙にもなっているキービジュアルが使われたポスターに惹かれたのがきっかけでした。 青空を流れる彗星、二人の立つ場所を隔てる光、そして「まだ会ったことのない君を、探している」というコピー。うわっ、これめっちゃ好きなやつだ……とまあ、さっくり捕まりました。現実の世界で出会う前に非現実的な世界で出会っているって、最高にお約束が素敵なやつじゃないですか! しかも東京ドームシティで新海誠が描く宙展がやっているということは宇宙が絡むわけか! めっちゃ観たいわ! ていうかとりあえずTenQとやらに行ってみたいわ! 東京ドームシティの最寄駅知らんわ……!
そんなこんなで公開中には観に行こうと決意し、公式サイトも見てみたのですが、あらすじ紹介でまた沈没。「辿り着いた先には、意外な真実が待ち受けていた」って、これ会えんやつだ……! パラレルワールドか生きている時代が違うかのどっちかで、会いに行った先で彼女は存在しないやつだ……! PVの類を見ていると、以前に隕石が落ちたことがあるようなので、隕石が落ちたことのある世界とない世界のパラレルか、隕石が落ちる世界で隕石が落ちないようにすることでパラレル化するやつかなまほろば砲! どっちにしても二人は会えない! 空間的遠距離恋愛切ない……! とかなんとか先走って切ながりつつ、入ってきたネタバレがほぼ「新海誠の薄味」のみの状態、しかし新海誠の濃縮状態はよく知らない、かろうじて接したのは「星を追う子ども」コミカライズ版1巻(フェアで無料で読めた)と「言の葉の庭」冒頭のみ(フェアで無料公開されてたが全部見る時間がなかった)という状態でいざ鑑賞。
冒頭、大人姿の三葉が描かれているのを見て、なるほど三葉の方が実は年上というオチか、いきなりネタバレだな、などと思う。はいはいはい、合ってるけど君合ってないよそれ。覚えてないけど多分瀧の成人姿も描かれてたはずだよ君。 PV等で語られていた「見ていたはずの夢は思い出せない」や「目が覚めるとなぜか泣いている」という文言から、入れ替わりについて当初は記憶・認識していなかった二人が、ある時から記憶が残り始める展開かしら……と思っていたらさにあらず。最初からきっちり覚えてはいる。事情を呑み込めてないけど入れ替わりを認識している(最初はただの夢だと考えてはいるけれど起きた出来事を覚めたら忘れているような展開ではない)。 最初は、二人の入れ替わりはかなりコミカルに描かれていて、素直にニヤニヤさせられます。特に東京生活にテンションあげてる三葉(姿は瀧)が可愛いのなんの。三葉in瀧の時に思わず可愛く思ってしまう司や、逆に瀧をそれまで異性として意識してなかった奥寺先輩が三葉な瀧に惹かれていくのも面白い。 だがしかし、瀧のいる場面で描かれたカレンダーは2016年のもの、三葉がいる場面で描かれた黒板の日付は2016年とは違う曜日といった台詞なしで貼られた伏線があったり、平日のつもりで支度をした瀧in三葉が妹に休日であることを知らされるなど、二人の生きている時間の流れが異なることはきっちり描かれており、そこからもう切なさ乱れ撃ち。 三葉の世界での日付・曜日はわかるものの、算数に弱い私はそれが何年のものかは分からないまま、お互いスマホを持っているのだから十年・数十年単位の時間ずれではないはずだと考えながら、どうしてお前らは新聞を読まないんだテレビを見ないんだ現代っ子めともやもやしてました。私の子供の頃の時間ずれ作品だと、カレンダーや新聞やテレビの日付で時間ずれに気づくんだよ……! おのれスマホで全てが完結する現代っ子め!
奥寺先輩と瀧とのデートをお膳立てした三葉が、身支度しながら泣いてしまう場面あたりから、本格的に切なさが増していきます。この後髪を切ってしまう三葉について、確かに失恋は失恋だけども諦めるのは早いよ!と思いもしたのですが、実際には彼女はもっと手痛い失恋をしていたことが後で判明する……という構成がにくい。けれど、瀧が「ずっとなにかを、誰かを、探している」と思うようになったのも「星の降った日」からだとしたら、状況も相手のこともよく分からないまでも、なぜか自分を知っている様子で話しかけてきた女子高生のことが心に残り続けていたのかもなとも思えてくるわけで、両想い時期は二人被っていると言えなくなくもないような。少なくとも三葉が渡した組紐を大事に持っていたのは確かだしね……! 三葉との入れ替わりがなくなった瀧が、必死になって彼女の住んでた町へ向かおうとする場面も切ない。途中の名古屋駅や五平餅にニヤニヤしながらも切ない。特に図書館で被害者名簿を見る場面。テッシーと早耶香の名前が並んでいることから、当然三葉の名前もあるだろうと分かってはいても、胸に来るものがありました。切ない。
ここからの展開は、未来の出来事を知る人間がタイムリープして過去を変えようとする展開の亜種になるわけですが、瀧(姿は三葉)では父親を説得しきれず、三葉本人の説得でやっと成功する、けれど瀧(姿は三葉)が父親と会ったことが父親を動かす大きな理由となる……というのは、入れ替わりとタイムリープと両方合わせた設定だからこそという感じで面白かったです。 いやほんと、この映画、斬新という評価や感想を見かけはするけれど、設定とストーリー面に関してはむしろべったべたにべたなんですよ。 夢の中で別人の人生を体験する。 人格入れ替わり。 特に男女入れ替わり。 時を超えたやりとりから恋へ。 同じ時間を生きていると思っていたら実は数年ずれている。 過去に戻って災害を回避しようとする。 忘れたくない人なのに忘れてしまうし思い出せない、でも心には残ってる。 記憶のない二人が再会する。 これ全部、手垢ついてるレベルでべったべた。もういっそベタドラマとして作ってるんじゃないかたりらリラ〜ンと思っちゃうくらいですが、何がすごいってこれだけ要素てんこ盛りなのに話がきっちりまとまっているし、さらっと素直に楽しめてしまうということ。そして、それぞれの要素に無駄を感じられないこと。これはもう技としか言いようがない。 カタワレ時に二人の時間が奇跡的に交錯するのも、お約束お約束と思いながらも素直に泣けてしまいました。お互いがお互いの片割れなんだよな……と。
ただ、タイムリープに関しては七瀬ふたたびの漁藤子システムがしみついてる私。瀧が三葉に未来を与えたとしても、その時点で過去を改変しようとした瀧と改変されて生き残る三葉との幸せはありえないんじゃないか。三葉はいつか(タイムリープの記憶はない)瀧とまた出会うかもしれないけれど、瀧の側は三葉のいない世界を生きるしかないのではないか……そんな風に考えながら見ていたので、ご神体のあるクレーターのそばで改変のために頑張ってた瀧が改変後の世界にあっさり合流した場面では、以後の涙が引っ込んだ代わりに「ハピエン約束された!」と心の中でガッツポーズ取ってました。 記憶のない瀧と三葉が再会して、名前を尋ねあう場面に至って、タイトルの意味まできっちり回収ですよ。ただのタイトルオマージュインスパイアに終わってないんですよ……! でもまあ、自分だったら多分好みで、改変前瀧と改変後三葉とは別世界の存在にして、バッドエンドのようだけど見方によってはハッピーエンド……みたいな話にしちゃってたかなと思います。というか、そういう話を予想してたんで。そういう意味では、あくまで自分の中ではという枕付きで、ここまで見事なハッピーエンドにもっていく感覚は「斬新」と思えるものでした。改めて考えると、確かに今作のようなW主人公で自分が予想していたようなバッドなハピエンは難しいような気もしますが……。
RADWIMPSの歌についてはなかなか映画を見てる最中は歌詞にまで気が行かなかったので、展開とリンクしてるのを確認するためにも、劇場でもう一回観てみたいです。
あとこう、とてもとても「踊り場ホテル」や「タビと道づれ」を読み返したくなったぞー!
背景美術の美しさは本当に見事でした。新宿見覚えある新宿……! 古川にも行ってみたいなー。
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