小説集
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2004年11月27日(土) :
 


あなたが欲しい
 あなたがいれば、俺は何も要らない
だから…

――――――

「マーティン 悪ぃ、少し五月蝿くなるかもしれん」
判っているという風に笑ったマーティンが、デイヴを自分のベットに寝かせたアルフレッドに十字架のペンダントを渡した
「さっきデイヴに渡そうとしたらアルが戻ってきたからさ
 つけてあげてよ」
訝しげにマーティンを見る。デイヴが受け取るとは思えないようなものだ
「デイヴだって いつまでも君に頼っていられないって知っているんだよ
 君の変わりになるものさ。気休めでもいい
 君…アルからつけてやればアルの変わりになる」
「そんなもんかねぇ…」
鈍く光る十字架を見ながらアルフレッドは思い返した

 ――俺を頼ったというのに、俺は気付いてやれなかった
   それでもデイヴは俺を求める…

そろそろ潮時なのかもしれない
引き際を見誤れば、自分も堕ちるのだ
また、あの痛みが出始めてきた その為にもデイヴから離れていなければならない
「わかったよ」
デイヴが待つベットへ入り、カーテンを閉める
血を飲んで体力・気力を回復したデイヴは起き上がり、ちょこんと座っていた。その姿は、着ている大きい服のせいで更に幼さを強調していた。
「マーティンからだ」
鎖をつける時に、少し触ってしまったらしく デイヴの身体がかすかに震えた
それを無視して向き合ったままフックをかける
「吸血鬼に十字架とは、ずいぶんと珍妙な組み合わせだな」
笑いながらプラチナ・ブロンドの髪をくしゃくしゃっと撫でてやると 子供らしく、嬉しそうに笑った

 ――! なんだ…

デイヴ・デイブは物として扱われてきた
愛情も、温かい家庭も、人間として生きるのに必要なものすべてを知らずに育ったらしい。笑いも、涙も知らず 怒りと闇に浸かりながら今まで来たのだ
デイヴは求め方を知らず、奪うか壊すかしかなかった
そして、男を悦ばせる方法しか デイブが生きる道はなかった

 ――そうか、愛情を求めてたんだな…

彼には何もいらない
包んでやればいい
だが、それは自分ではない
デイブ・デイヴに笑いを与えたのは、本人がどう思っているものであれ フランク・ミラーだった
歪んだ卑しい笑いしか出来なかったデイヴが、子供がするように 無邪気に笑ったのだ
「アル 俺はどうすればいいの?」
「そうだな お前はお前のままでいいんだよ
 どうするかは俺には決められない お前たちの身体なんだ」
そっと、デイヴの身体を寝かせ 自分も横になる
子猫が乳をねだるように、デイヴはアルフレッドの胸の中に入ってきて甘えてきた。その細い身体を抱きしめてやる
「俺は …いない方がいいの?」
「そんなことはない デイヴがいなけりゃぁデイブは存在できなくなるし、デイブがいなければ、デイヴが精神に異常をきたす…そんなことはどうでもいいさ お前がデイブを救ったんだからな」
「…だって、だって アルとの約束を破りたくなかったんだもん!
 デイブが血を吸おうとたから…そうしたら、俺が俺じゃなくなる
 そんなのは嫌だ 完全体になんてならなくていい いつまでもここにいたいから」
泣き出したデイヴを、さらにぎゅっと抱きしめる
本来ならこんなところにはいないはずの子供、ヴィルト・イルバンの皇位継承者、自分でありながら自分でないものの目から見ていなければいけない身体、性格が歪まない方だおかしいだろう
「いい子だ」
「アル 俺を嫌いにならない で…」
最後は眠りに入りながら、寝言のように呟いていた

俺は、誰も救えない
デイヴも、そして自分自身も
俺にはデイヴを慰める資格なぞない

俺も、デイヴも 同じはみ出した存在だから
傷の舐めあいしか出来ないのだ

「…ごめんな」

Fin




2004年11月26日(金) :
 


俺は俺なんだ
 俺が本当は デイヴィット・ボーマンなんだ…

――――――

「なぁ マーティン」
 アルフレッド・ミラーはベットに寝転び 煙草を銜えたまま、カーペットに座り本を読んでいるマーティン・エイブラハムに声をかけた
「んー?火事はおこさないでよ」
 マーティンの一言に、アルフレッドは煙草を枕元に宮にある灰皿に押し付け火を消した
「あー いや、なんというか  デイヴのことなんだが…
 デイブがああなった時に デイヴが出てきたなんてあったか?」
(デイブは戦闘などで興奮すると、一時的に血を求め暴走する)
 マーティンは本を開いたまま天井を見上げ、考え込む「俺が知っている限りではないね」
「俺もねェ デイヴが出てくるのは……」
 二人ともFORTH 10の古参である。アルフレッドとデイブは創設当初から、マーティンは第一次補強の時から今に至るまで、死なずに残っている兵である。もう一人は隊長であるミハエル・チェカ。この4人がFORTH 10の中枢になっている
「…デイブがそれだけやばかったって事か?」
「かも しれない。デイブが直接人から血を吸おうとしたから止めるために出てきた とか。 だとしたらマズくないか?」
 アルフレッドは起き上がり、ブーツを突っかけた
「ああ、フランクにデイヴを拷問するように言っちまったんだ
 行ってくる」

  ――デイヴが出るほど、デイブは自分を見失っていたのか

 それに気付かずにフランクに渡してしまった。
 ヘリの中で、自分に伸ばされた 呪布でガンガラ締めにされ、激痛をこらえながら 自分に伸ばされた手 
 …あれは俺に助けを求めたのではなく、俺なら自分のことを分かって止めてくれるだろうと縋りついた手だったのか…
 俺は それに気付かなかった そしてデイヴの目の前で拷問を命じた
 デイヴの意図もデイブの暴走も 何故か考えなかった

 フランクはデイヴを嫌っている。拷問も容赦ないだろう。あいつは 俺以上の術者だ…先祖返りしないのがおかしい程の

「おい、フランク!」
 デイブとフランクが使う部屋の扉を開ける
 …遅かった
 デイヴはフランクに押さえつけられてはいるが、その目には反抗の色どころか光すら浮かんでいない。体中に呪布で焼かれた痕、それも何故かなかなか治ろうとしていない
 フランクは、その手を血で染めていた
「アル、こいつ しぶとくてさ …どうせ何をしても死なないし ほら」
 デイヴの髪を引き起き上がらせると、デイヴは少し呻いた。

  ――生きてる…

「アルだったら喋るのにね おかしいだろ?化も…」
「フランク、もう止めろ デイヴが悪いんじゃない」
 フランクの目に 一瞬、怒りがよぎった
「デイヴはは悪くない? アルがこうしろと言ったんだろ?」
「ああ、デイヴは悪くない さぁ、デイヴをよこせ」
 フランクはデイヴを掴む手をぱっとはなし、アルフレッドに殴りかかったが、アルフレッドはいとも簡単によけ、みぞおちを殴った。
「いくらお前が俺よりも強くたって、怒り任せじゃぁどうしようもないな
 …怒りが収まって 考えられるようになったら俺のところにデイヴを取りに来い そうじゃなかったら 殺すぞ?」
 頭を床に打ち付けてしまったデイヴに触ると、手を振り払われてしまった
「おい、デイヴ 落ち着け 俺だ!デイヴ!!」
 触られまいと暴れたデイヴが アルフレッドの声を認識して動きを止める
「ある… ある ごめんナサイ ゆるシテ」
「ああ、大丈夫だよ。俺こそ悪かった」
 汚れた身体を抱きかかえ、自分をにらむフランクに一瞥を投げかけ部屋を出た。


「デイヴ、ついたぞ?」
 シーツにくるまれたデイヴの身体を自分のベットに下ろしたアルフレッドは、マーティンに声をかけるとバスルームに入っていった。
「ア…」
 不安そうに声を上げたデイヴは、目の前にいる赤毛の男が自分を見ていることに気付きシーツの袷をきつく握った
「君とははじめまして かな?」
 穏やかに笑う男に眉を寄せる。アルとフランク以外にデイヴは姿を見せたことがなかったから、相手も自分も 初対面だった
「…」
「俺はマーティン・エイブラハム
 こんなんでも一応牧師の資格も持ってる…」
 デイヴの顔が驚きから驚愕に変わり、逃げようと動いたのだが、いう事を聞かなくなっていた足は役に立たず ベットから転がり落ちそうになったのだが、マーティンがとっさにその身体を抱えた
「イヤ…」
「ゴメン、驚かせちゃったよね
 君を灰にしようだなんて 考えもしなかったから…つい」
 そっとデイヴの身体を元に戻すと、ベットに寝かしてやる。マーティンはそのあまりにも細い体のどこに、いくら吸血鬼とはいえ 戦闘で見せた力があるのかと考えざるを得なかった
 デイヴの身体は、それほどまでに細いのだ
「君は デイブよりすごいんだね  …デイブだってすごいのにさ」

 物憂げにデイヴはマーティンを見た
 なんの敵意のない目
 アルフレッドですら 自分を初めて見たときには敵意を持っていたというのに…
「おれガ おれジャナクナルカラでテキタダケ…あるヲうらぎリタクナイカラ」
 体力を消耗し、上手くアンジェル語を喋れないデイヴをにっこり見つめたマーティンは 懐から何かを取り出しデイヴに差し出したが、デイヴの状態を思い出したのか 彼自身が何か作業をしてデイヴの目の前に持ってきた
「くろすダッテ おれハしナナイヨ?」
「それは知ってる …何かに縋ってもいいんじゃないのかな?
 アルだけじゃなくてさ、こういうものでも」
 目を細め 声を立てずにデイヴが笑う
「きゅうけつきガじゅうじか?」
「牧師が戦闘部隊に?と一緒さ 御伽噺の住人さん?」
「なぁにやってんだよ」
 バスルームから出てきたアルフレッドが、デイヴが笑っているのを見て驚いていた
 こんな風に普通に笑うと、ただの子供に見える
 いつもは無表情で、どちらかというと小生意気そうな顔しか見たことがなかったから、デイヴが笑うとは思っていなかったのかもしれない
「バスの準備が出来たから身体洗ってやる
 その前に 嫌ならデイブに戻ってもいいんだぞ?」
 一瞬にしてデイヴの顔から笑みが消えた
「まさか… こっちに定着させられたのか!?」
 横たわるデイヴの腕を掴み、力任せに引き起こす
「イタい…」
「痛いじゃない!どうなんだ 言え!」
 アルフレッドの怒声にデイヴは逃れようともがき、暴れた。アルフレッドが戻ってきたので、また本を読み始めたマーティンが視線を上げずにしゃべる
「アル、そんなに怒らなくてもいいじゃないか
 そんな事されたら、誰だって喋りたくなくなるよ」
 はっと動きを止めたアルフレッドはデイヴを見つめ、かぶりを振った
「わりぃ… これだけはかけた人間じゃねぇと解けないんだ
 定着させられたんだろ?」
 手首をつかまれたままのデイヴはうなだれ、首を左右に振る
 デイヴは、言われた事が当たっているとすぐ視線を逸らし否定する。その行動は、17歳の外見より 更にデイヴの幼さを強調している ……実際デイヴは行動、言動とも幼かった
「どうして変わらなかったんだ?その隙はあったろ そうすれば…」
「ソウスレバ?ソウスレバッテ あるガ アイツニ おれヲごうもんシロッテいッタンダ!おれヲ おれヲ」
 また暴れだしたデイヴを抱きしめる。息が出来ない苦しさにおとなしくなるまでそのままでた。

 吸血鬼に力を持っているのにもかかわらず、デイヴは男に抱かれている限り暴れることを知らない
 そう躾けられている
「体洗うぞ?」
 かすかにデイヴの頭が動いた
 「っあ…」
 先ほどまでこじ開けられていたそこに指が入れられたのが分かった。しかしその指は、自分を快楽に導くものでも、痛めつけるために入れられたものでもない
 ただ、純粋に中に吐き出された欲を掻き出すために入れられたものだった
 しかし、男同士の性交を教え込まれている身体は 快楽を求め 自分の意思とは裏腹にアルフレッドの指を求め 焦がれたいた
「くあぁ」
 狭い内部で指が開かれ、思わず身体が仰け反りあわててアルフレッドの身体にしがみついた
「痛くないか?」
 指を飲み込んだだけで嬌声を上げるデイヴに、愚問だと思いながらも声をかける。デイヴの足と足との間に残る赤い血を見て、征服欲にかき立てられるが 押しとどめながら、フランクが放った欲を出してやる
「ある、いレテ…オねがイ」
 熱くなったものを、アルフレッドの腹に擦り付けながらデイヴが切れ切れに懇願する
「ダメだ」
 抱きたいのは山々だったが、今 抱いてしまえばフランクがしたことと変わりがない
「フランクに抱かれたのを忘れたいんだろ?そんなのは御免だ
 俺は代わりじゃない」
「…あるダッテ たッテルジャナイ」
「悪いか?そんな声出されたら誰でも勃つ 
 だがな、ろれつもまわらねぇヤツを抱く気は無い
 それより血を飲め」
ほらという風にデイヴの頭を自分の左の肩に引き寄せる
「イラナイ… あう!」
駄々をこねるデイヴに、アルフレッドはデイヴの中に入る自分の指をデイヴを危うくするポイントを突いた
「俺は抱かないからな
 飢えを止めるのは抱かれるか飲むかだろ?ほら、飲め」
手近にあったかみそりを取り、首筋を切る
血の臭いに デイヴは身体を引きつらせた

ゆっくりと身体が離れ、立ち上がった
たち膝で、片足を床についてデイヴの体を洗っていたアルフレッドの肩に手を置くと震える舌を出しながらデイヴが血を流す傷口に顔を近づける
荒い息遣いが聞こえる
その息が肩にかかる
何度もためらい、頭を振るのが感じられた
「いいから飲めよ…」
ぐいとデイヴの頭を、自分の切った傷口に押し腰を抱えてやる
一度、血を舐めてしまえば、あとは一心不乱に飲み続ける
「つぅ!」
いつものことだが、傷から滴り落ちる血では足りないので、デイヴが牙を突き立てたのだ
吸う方も吸われる方も、この行為に生理的欲求が付きまとう
自分の身体を縮め、腹の辺りにあるデイヴのモノと自分のものを握り、もう片方の手は、もう一度デイヴのそこへ潜り込ませた
「!!?ある、やめて!!」
フッと息を吐く。血を飲まれて頭が重かった
こうでもしていないと、理性が負けて本能のままにデイヴを抱くだろう

デイヴが身をよじりながらも、また傷口に口をつけた

ただ、流れるシャワーの音と、荒い吐息 そして粘着質な音だけが響く

「ぷはっ」
デイヴが傷口から口を離しアルフレッドにしがみついた
傷は治っており、傷があった後にはうっすらと鬱血があるだけだった
「お願い 入れて!アル おねが…―――!!!」
「くっ…」
アルフレッドの手の中に二人の白濁した液が吐き出された
デイヴはアルフレッドの肩に頭をもたせ掛けた
「アルのばかぁ」
アルフレッドは意地悪く笑ってシャワーを取り、デイヴと自分の体を洗い流すとデイヴを連れてバスルームを出た




2004年11月25日(木) : デイヴは何故…
 

注:やおい小説です
  苦手という方はご遠慮ください

――――――


いやだ やめて 俺が悪いんじゃない
         悪いのはデイブだ だから…

――――――

 荒々しく扉が開けられ、怒りを漲らせたフランク・ミラーは包帯に包まれたもモノを自分のベット―2段ベットの下段―にどさりと落とすと、包帯の中のものが呻き 動いた
 その様子を無表情に見つめ、戦闘服のジャケットを脱ぎ、ハンガーにかけ 煙草を取り出した
 「あ う…」
 包帯の隙間からあいた穴から声が漏れ、包まれた人間はそうとう苦しんでいることがわかる。フランクは少し手を動かすと、包帯の中の人物は身体を引きつらせおとなしくなった
 煙草を吸い終えたフランクは、荒々しく息をする人物の顔に巻かれた包帯を剥ぎ取る。それはただの包帯ではなく 呪がかかれた呪布であり、その下からはケロイド状になった顔が現れる。しかし、ゆっくりとだが、その顔は本来の姿へと再構築していく
 呪布に巻かれた人物の顔がすっかり元に戻ると、フランクは少しずつ他の部分の呪布を解いていく
 怯えた目でその様子を見ていた青年は涙をこぼした
 「泣いてどうする お前が蒔いた種だろ?」
 青年が叫ぶ
 「違う!俺のせいじゃないっ デイブが デイブが…やだ!やめてっっ」
 長時間、呪布で縛られ能力を抑えられていたため 起き上がれずにいる青年の足と足の間に手を入れ、潤滑剤にぬれたそこに指を入れたフランクは 下卑た笑いを浮かべた
 「大分こぼしたな お前が戻ってしまうと困るから…」
 指を飲み込んだそこから引き抜くと、逃れようと身体を動かした青年の手を引き、頭の上で束ねて呪布で縛った。悲鳴が上がる
 「ごめん なさいぃ  お願い ゆるして…」
 「何を許すっていうんだ デイヴ?デイブがああなる前にお前が出ていれば大事にならずに済んだはずだ お前はわざとあの状況を楽しんでいたろ?」
 「ちがっ あう!」
 「少し我慢しろ お前をこっちに定着させる
  逃げられたらこまるからな」
 デイヴと呼んだ青年の額に手を当てたフランクは呪を唱える。すると、デイヴが凄まじい悲鳴を上げるが、気にする様子もない
 「…お前を定着させて、能力を軽く封印した さぁ、脚を開け」
 力なく首を振ったデイヴは、弱々しい声をあげる
 「いや…もう いやだよ」
 泣くデイヴを嘲り笑い、デイヴの髪を掴んだフランクは 嫌がるデイヴの身体をうつぶせ、腰を引き上げる
「い、や やめ ―――!!」
声にならない悲鳴が上がる。 ただ、潤滑剤で濡れただけのそこに フランクは自分のモノをあてがい、一気に根本まで埋め込んだのだ。
 何もされていなかったデイヴのそこは裂け、赤い血が内腿を伝う。それはシーツに赤い染みを作った
 精神をこちら-この世 に定着させられ、その上 吸血鬼の再生能力を含めた すべての能力を使えないようにされたデイヴの身体は、血を止めるすべは自然に任せるしかなかった。しかし、自分のそこを押し開けるモノが それを許すはずがなかった
「んん!」
 フランクがデイヴの熱くなったものを握った。デイヴの脚がガクガクと震える。
「なんだ、いいんじゃないか」
 デイヴを串刺しにしたままフランクは枕の端を割き、紐を作るとデイヴのモノをきつく縛り 腕の戒めを解いた
「勝手にいくなよ?」
 デイヴの体がこわばったのが、目に見えてわかった。それを、冷たい目で見ながらフランクは動き始めた
「お前に苦痛を与えても無駄だからな
 拷問は苦痛だけじゃない 快楽もあるんだ」
 そのまま耳たぶを弄ってやると、ピクリと身体がはねる。体を離したフランクは、しっかりと腰を支え本格的に抜き差しを始めた。皮肉にも、結合部分から流れ落ちる血が熱のすべりをよくしている。
 痛みに震えていたデイヴも、いつしか声には苦痛でない色が混じり おずおずと腰を動かしはじめる。
 フランクは、そっと背中にある傷の一つにふれた
「!!!」
「きつ…」
デイヴはというと、きつく目を閉じシーツを握りしめている。断続的にしめつけていた壁が少し緩むと、大粒の涙を溜めた目が開き フランクを見た
「も 許して …苦しいよ 」
フランクの口が上がる
「それはよかったな でも、俺はまだだ
 …そうだな、自分で動いてみろ 簡単だろう?」
 デイヴの目から涙が見る間にあふれ、顔に懇願の色が浮かぶ
「お願い いやだよぉ…お願 い!!」
 ぬれたそこを触ってやると、デイヴは嬌声をあげた
「俺をいかせられたら 外してやるよ ほら」
 何を行っても無駄だと気付いたデイヴは枕に顔をうずめ、腰を動かし始めた

薄暗い部屋に デイヴの口から漏れる喘ぎと 荒い息、粘着質な音だけが響く

 デイヴの腰に置かれた手が動き、肩を掴むとフランク自身を入れたままデイヴを仰向けにする
 デイヴは悲鳴を上げた
「痛い 痛い はずして はずしてぇ!!!!」
 こぼした液体で濡れ、解けにくくなった紐を津から任せに解いてやると 細く、男のものとは思えないしなやかなデイヴの腕が絡みついてきた
 牙が光る口を口で塞いでやると、ますます深くしがみついてくる

――くそっ 何で俺は こいつを…

「―――っ!!!」
 デイヴの身体が震え、白濁した液体が飛び散った 
 フランクは締め付けるデイヴの中に自分の欲望を放った

――こいつに喋らせようとしても 無理だ
  どんなに抵抗しようとしても持って行かれる
  …オットー・ルッツコフマンが執着するはずだ
  こんなのはなかなかいない 中毒になる…

 涙を流し横たわるデイヴを見ながら、フランクは デイヴが何も効かない事に気づいた

――だが… 効果はあるな

 もう一度、デイヴの足と足の間に手を差し入れる
 デイヴの目が さっと恐怖に染まった

「さぁて、喋ってもらうとしますか…」





2004年11月16日(火) : PERSONA
 

  やあ デイブ

自分…若い自分が声をかけてくる

  デイブ?無視するなよ

自分のものとは違う 細くしなやかな腕が背後から絡み付く

  アルから名前もらったんだ 本当ならそう呼ばれるはずの名前だけどさ?

左の耳に顔をよせクスクス笑う こいつから逃れる術はない 囚われの身だ

  デイヴだってさ どうしたの?

出来ることなら耳を塞ぎたい だがこいつの前ではそんな事が許される訳がない
血の欲望を抑えられず、デイヴを呼び起こしてしまった…いつもなら自分が血を飲んで渇きを抑えているのだが、三日前の喧嘩のせいで興奮し、デイヴを抑えられなくなり こうしてこいつの支配下に置かれている
 
アルはやさしいね デイブじゃないって分かってても血をくれたし抱いてくれたよ?

顔をそらすと面白そうに笑い、さらにきつく抱き着いてきた

  妬いてるの?アルだって死体みたいに反応しないデイブなんかよりよっぽどいいと思うけど?ねェ

やめてくれ…

 なんで?本当の事じゃない?身体を使うのが嫌ならさっさと俺にちょいだい

吸血鬼としては同じとはいえ、デイヴの方が格が上だ…デイヴはオットーそのもの

 二人も必要ないじゃん 血を吸う勇気もないのより、完全体の方が へぇ…

デイヴの見えない呪縛を断ち切り自分に殴り掛かろうとしたが、闇が手を伸
ばし身体を押さえ付けた

お前こそ なんで なんで血を飲まない おまえ!

闇が身体を押し潰し動けなくなるとデイヴが目の前にしゃがんだ

 アルと約束したんだ …じゃあ、アルのとこに戻るから、闇を愉しませてあげてよ

ヤメロ!ヤメテクレ


「デイブどうした?」
デイブ…何故デイブなのか
「デイヴか?」
身体を動かし、横にいたアルフレッドの首に腕を巻き付け自分の顔を彼の胸にうずめた
「デイヴ どうした?」
しっかりと抱きしめられる。こうしてもらうと何もかも忘れられる
何でないと首を振る
「血か?」
「…もっときつく抱いて」
アルフレッドの大きな手髪をすく 少し落ち着いてきた
「好きなだけいていいんだからな?」
アルの手を払い胸を押し返す 知らず知らずのうちに涙が溢れていた
「なんで、なんで俺はずっといちゃ駄目なの?
俺じゃダメなの?デイブの方が大事なの?なんでなんで…
ねぇ、俺の方がいいでしょ?俺の方が役に立つし ねぇアル…」
ぎくりと言葉を切る アルフレッドは今まで見せた事のないような顔をしていた
「少し黙ってろ」

涙をこぼし眠るデイヴをベットに残し、アルフレッドはシャワーを浴びる
自分はデイブもデイヴも 何もしてやれる事がない
デイヴはデイブを傷つける
デイブはすべてを飲み込み 自分の殻に深くこもる
いつか必ずどちらか選ばなくてはなくなる だが選べなかった
デイヴは自分を求め甘える
デイブは手を差し伸べないかぎり とまどい、立っている
どちらとも一人の人間だ
例えデイヴが あのオットーそっくりだったしても…
二人…二人を抱くことが正しいとは思わない
しかし他に選択肢があるか?
あったのかもしれない
あったのかもしれないが、俺は見過ごした
腰にタオルを巻いてベットへ向かうと、デイヴは目を覚ましていた
「気分はどうだ?」
小生意気な目が少し細まる
「いつもよりは いいよ」
デイヴはデイブより、少し子供だった。実際年も若いらしく、20だと言ったが 17・8のガキといっていいだろう
本来ならこの年で成長が止まるはずだったのだ、デイヴの時は身体も少し若返っている
今はあまり差はないが、デイブが年を重ねる姿を デイヴはどう思うのだろうか
ベットに入り込み横になると、脇に寝ていたデイヴが腕の中に入ってきた
「アル…俺じゃダメなの?」
すがるように見られ、何を言えばいいのか
「いや 駄目って訳じゃ…」
視線を逸らすと、デイヴの顔が曇った
「デイブの方がいいの?」
「そういう事じゃない お前達は 俺がどうのこうの決めることじゃない
 俺には選べんよ」
デイヴが胸に張り付く
「ごめんなさい ただ…ただ」
「いや ……俺が悪かった どっちかなんて決められないんだ
 だがな、お前は肉体がなくとも、精神の状態でも存在できる だがデイブはどうだ?長い間肉体から離れていると異常をきたして消滅しちまう そうしたらお前もおかしくなるだろ?」
「…うん、わかってる。解ってるけど …俺は アルを アルを独り占めしたい」
アルフレッドは笑った 本当にデイヴはまだ子供だ
「じゃぁ 俺を吸血鬼にするしかないな」
「ずるいよ 完全体にならなきゃ出来ないよ」
髪をすいてやる。デイブの時は力を抑えているのとヴィルト・イルバンの人間に見つからないようにするため濃茶の髪にしているのだが、デイヴはそんなことも気にせず本来の髪の色――プラチナ・ブロンドの柔らかい髪だった
猫が咽を鳴らし甘えるようにデイブは抱きついた
「もう少しだけ ここにいさせて」
最後は眠りに入りながら喋った

――俺は自分に関わった相手を泣かせることしかできないのか
デイヴもデイブも
誰かこの二人を救える人間は現れるのだろうか
それは俺ではない事は確かだ

この二人が壊れる前に… 誰かが









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