diary/column “mayuge の視点
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『****』編集後記 2005年4月号

 校了作業中、トラブル発生。すぐさま出発、デザイン事務所経由で印刷会社まで、深夜の千代田区をチャリで激走。帰りの九段坂、上りがきつい。編集長常々曰く「編集者は体力」。加えて、脚力も大事です。

2005年02月19日(土)

売れない発明家を笑えるのか

 僕は新しい響きの言葉が好きだ。気の利いた意味だったりすると、なお良い。だから僕は、自分で略語、新語を考えては使い、すぐに消費していく。「アケオメ、コトヨロ」なんていう言葉は、母の胎内にいる頃に使っていたので、今年の年初にまだ言っている人がいたのには少々驚いた。「メリクリ」にいたっては、父の精嚢にいるときに使っていたものだ。

 それはさておき、ここ最近で生み出した“新語”の一例を紹介してみたい。

「アネセン」
 「お姉さん専門」、つまり年上好きのことである。たとえば年下の女の子にフラれたときなんかに、「俺はアネセンだからさー、年下とかはションベン臭くて付き合ってられないわけよ」とうそぶく。三十を過ぎてから、周囲に「アネセン」で共感できる人間が激減し、お蔵入りの危機に瀕している。

「トリソン」
 これは飲み屋に行って、一回目の注文をした後に使う。「とりあえず、そんな感じで」の略である。たとえば、ニラレバと餃子と小籠包をつまみに頼み、「トリソンで、ルービー、ソギイーで(とりあえずそんな感じで、ビールを急ぎめでお願いします)」とキメる。たいてい店員に、軽薄でミーハーな馬鹿男に見られる。

「ビーラー」
 「ビール好き」を指してこういう。語感的には、「チーマー」「アムラー」などの流れを汲んでいる。たとえばビールを飲んで帰りたいけど一人じゃ淋しいとき、「ビーラー集合!」と快活に叫ぶ。高田馬場付近の学生なら、「ビーラー注目!」と応用してもよい。まず一発で理解してもらえることはない。

「ナー・コート」
 これは、トラディショナルな露出狂のオヤジが着ているような、くるぶし付近まで隠れる裾長コートのことである。「ナ? おじさん」に由来している。たとえば、服屋で試着して鏡を見ながら、「このコート、ちょっと裾が長すぎるなあ。下手するとこれ、ナー・コートでしょ」とカマす。たいてい連れに「?」という顔をされる。説明するとさらに引かれるので、結局その後おとなしくする羽目になる。

 こうして見てみると、どれもこれも僕以外に使っている人はいない。おかしいなあ、いいと思ったんだけどなあ。よくテレビで、「誰もそんなモン使いたくないだろう」というような無意味な“発明”を繰り返して、散財しているオジさんが出てきたりするが、僕がしていることは、かなりそれに近い気がする。

 ま、金を使ってないだけ、いいか。

2005年02月15日(火)

僕が見た「電車男」

 最近やけに、電車の中でケンカが多い。週に一度は目撃している気がする。実際、僕が通勤で使っている東急田園都市線では、かつてケンカが元で殺人事件が起きているのだ。車内で4人組の少年に注意をした銀行員の男性が、三軒茶屋駅のホームに引き摺り下ろされ、暴行を受けた挙句死亡。まったくふざけた話である。
 先日目撃したケースはこうだった。
 僕はいつものように「平和ポジション」をゲットしていた。車両の連結部付近、駅の乗り降りで煩わしい思いをしないで済む、あの場所だ。その背後で、きな臭い動きが起こった。
 若い男がしきりに舌打ちをしている。余計な争いに巻き込まれたくない僕は、駅に到着するタイミンングを見計らい、駅名を確認するフリをしてチラッと振り返った。すると二十代後半だろうか、背が低くて痩せ型の若造サラリーマンが、何だか不満気な顔をしてユラユラしている。見たところ、へなちょこ気味な男だ。僕は、少し安心した。「ケッ、このへなちょこ、うるせえよ」と、少し思った。もちろん口には少しも出していない。
 その後、へなちょこの舌打ちはエスカレート。どうやら、奴の隣りに立っている大男の肩が、時折触れているらしい。「その程度のことで周囲を嫌な気持ちにさせんなよ、このへなちょこ野郎」。やっぱり口には出さない。しかし、へなちょこのくせに大男にケンカを売るとは、もしやこいつ格闘技経験者か?
 舌打ちのボリュームアップとともに、車内に緊張が走る。二人の周囲が考えていることは(おそらく)ひとつ。
 「大男は、いつキレるのか」
 僕がまたチラッと振り返ると、隣りのオヤジも僕同様、チラ見中だった。やっぱり気になりますよねえ。
 電車は溝口駅のホームを前に減速。ここでへなちょこが下車態勢に入った。荒々しく網棚からカバンを降ろし、「あー、まったくよー」などと小声でつぶやく。あくまでも小声だ。扉が開くのに合わせ、へなちょこは猛然とダッシュ。そのとき、しっかりと大男にぶつかってから出て行った。
 「やり逃げかよ」。周囲はあっけにとられる。姑息な野郎め。すると大男、観客の期待を感じたのか、ハッと気がついたように奴を追った。他の乗客をかき分け叫ぶ。
 「降ろしてくれ。俺を、降ろしてくれ」
 悲痛だが、紳士的だった。大男の声は「モーゼの十戒現象」を呼び起こした。
 溝口駅のホームをドタドタと走っていく大男の足音が聞こえる。「ああぁぁぁ……」。へなちょこの悲鳴が続く。どうやらへなちょこは、ただのへなちょこだったようだ。「あぁぁ…やめろ…よ…ぉ…」。そして扉が閉まった。
 車内には、何とも嫌ーな空気が残される。一方で観客たちには不思議と、あるすがすがしい思いが共有されていたように感じた。
 「がんばれ、電車(大)男!」

2005年02月08日(火)

恐るべき十八歳

 先日、著者の岡さんと会食。

 岡さんも僕も、プロ野球は横浜ファンである。いよいよ今年もキャンプ期到来。当然、話題は今季の展望、ということになる。
 「多村はいいよねえ」
 「成長しましたよねえ。地元(横浜高校)出身ってのもいいんですよ」
 「吉村っていう若いのもいいわけよ」
 「ああ、背番号31番の奴ですね。よくそんなマイナーな選手知ってますね」
 「俺、シーズンシート持ってるし。吉村なんか、多村以上に成長するかもねえ」
 打線の話は盛り上がる。
 「問題はピッチャーですよね」
 「だよなあ」
 店内にもすきま風が吹き抜ける。しばし二人とも沈黙。これはまずい。話を膨らませねば。
 「新監督の牛島さんはどうなんでしょうねえ。僕はちょっと心配なんですけど」
 「牛島か。牛島は大丈夫だよ。俺はね、ある話を聞いたから、心配はしてないわけよ」

          ◇

 こんな話だ。
 牛島は名門・浪商高校を卒業後、投手として中日に入団した。同期入団には、牛島を含め投手が四人。ルーキーイヤーのある日、その四人が投手コーチに呼ばれた。コーチは四人に、ある質問をする。
 「9回裏、俺たちは3対2でリードしている。ヒットで出たランナーは二塁まで進んだが、2アウトまで漕ぎ着けて、カウント『ツー・スリー』。お前なら、この状況でどんな球を投げる?」
 大学やノンプロ出身の投手たちは口々に答える。
 「得意のスライダーをアウトコース低め、ですね」
 「真っ直ぐを力いっぱい、インコース高めヘ投げます」
 コーチはここで、高卒ルーキーに尋ねた。
 「牛島。お前ならどうする」
 すると牛島は、こう切り返した。
 「コーチ。ツー・スリーまでの配球を教えてください」

          ◇

 「そのコーチ、『こいつはすごい』と思ったらしいよ。18歳だからね、当時牛島は」
 「確かにそれはすごいスね」

 そんな感じで、さらにこの後も野球ネタで盛り上がった。
 我々二人、今季も「横浜で一喜一憂」となりそうである。

2005年02月01日(火)

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