僕だけを
見ていて欲しいなんて
そんな厚かましい事
謂えない。
謂えない。
+ + +低温火傷
「大尉」
ふわりと浮いている自らの両足は地に着いていない。薄暗い部屋の中で仮眠をとっている彼に手を伸ばす。
が、頬に触れるかという距離で其の目を縁取る睫毛が揺れ、後退りをした。頭の中では優しい笑みを絶やさずに自分の元へと近付いてくれる彼の姿が緩慢にスクロールされている。
彼の周りの空気の濃度は高い。
重厚な雰囲気を常に身に纏っていて、最初は気後ればかりしていたのに何時の間にか心地良いとさえ感じる。他者を拒む、軟らかで堅固なバリアーは僕には反応しない。
微かな優越感が胸を掠めた。
「大尉、僕は」
厭きてしまう訳が無い。
けれど僕は、
数多の中から僕を選んだ貴方じゃなく。
僕しかいない
彼の人の處へ
往きたい。
まるで低温火傷の様に
貴方への想いが疼くけれど。
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2002年12月25日(水)