水野の図書室
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皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。


2005年07月31日(日) 北森鴻『古九谷焼幻化』

カメラの次は古九谷焼です。ということで、舞台は金沢。越名は、香港にいる兄の
依頼で、金沢の旧家で極秘裡に行われる蔵開きに行くことに。蔵開きとは、旧家
にある骨董品を初めて業者に売りに出すことで、掘出物が見つかる可能性が
高いものの、偽物でないとも限らず、審美眼が試される場なのです。

日頃は、骨董商より古道具屋だと自嘲する越名。真贋を見極め、本物の古九谷
の壺を競り落とすことができるでしょうか──。

古い商家・未亡人・友禅の座布団・蟹の棒寿司……蔵開きの情緒たっぷりです。
完璧な蔵開き(行ったことないけど・笑)とワクワクしていたら、わ!そんな!の
展開に。その上、まだサプライズが!業者間の競り合いも、ここまでくると、、、
何と言ったらよいのか、命がけですね〜。骨董業界も大変なようで。。
越名が頼もしく見えてきました。

蔵開きに立ちあってみたい……羨望。


2005年07月28日(木) 北森鴻『ジャンクカメラ・キッズ』

ジッポーの次はカメラです。ジャンクカメラ──壊れたカメラのことでメーカーの
交換部品の保管期間を過ぎてしまったため、修理することができないカメラ。
つまり、使えないカメラ?いえいえ、使えないけど使えるカメラなんです。部品を
取り出して別のカメラの修復に使ったり、レンズが無傷ならレンズを利用したり。

他のカメラの再生に使われるならと、ジャンクカメラのワゴン売りを始めた越名。
ところが、越名の想いとは別の使い方があったとは!犯罪が絡んで、読み手の
方もため息です。骨董業の難しさも知り、影の部分を見てしまった気分。どんな
商売もそうでしょうけれど、楽しいだけじゃないんですね〜骨董屋さん。。
店番だけなら、いろんなお宝に囲まれて幸せ気分ですが……。

気になるアルバイト店員・安積は、越名の心配のタネになっている様子。
でも、安積がいるおかげで、安積の友人の女子高生が雅蘭堂に来るようになり、
時間が止まっていたかのような骨董屋で、何か始まる予感です。

個人的には、店番は、女子高生じゃなく、30歳くらいの優しそうで儚げなきれいな
人希望です──!村松友視の『時代屋の女房』を思い出しました!時代屋は
大井町。雅蘭堂は下北沢なので、店番は若いコな訳ですね。納得。


2005年07月20日(水) 北森鴻『ベトナムジッポー・1967』

先月、『根付け供養』を読んでから、次はこれと決めていた「孔雀狂想曲」。
『根付け供養』の骨董屋、越名集治の雅蘭堂を舞台に、数々の骨董品をめぐり
事件が起きる8編のミステリー連作集です。タイトルをサッと見たところ、カメラ
から古九谷まで、雅蘭堂で扱う骨董品は幅広く、お店に入る前からワクワク。
北森鴻と骨董品強化週間といきましょう。

最初の骨董品は、ベトナム・ジッポー。ベトナム戦争で米軍兵士たちが愛用した
オイルライターで、名前や部隊のエンブレムを彫り込んだジッポーは、戦場に
おける兵士たちの名刺であり、夜間着陸をする軍用ヘリへの誘導灯でもあり─
と知ると、ただの古いライターじゃないんですね。

『ベトナム・ジッポー・1967』は、そんな歴史を刻んだジッポーをめぐるお話。
ルポライターとして当時のサイゴンを知る老人が長年胸に秘めていた疑問に、
越名が応えてくれます。ジッポーの秘密を基に。さすが、骨董屋。よくご存知で。

この老人の孫娘、安積(あつみ)が押しかけアルバイト店員になるようですが、
雅蘭堂には違和感があるような女子高生が、越名の仕事にどう関わっていく
のか、気になります。有能な助手になることを希望しますが、なんだか、お店の
大事な物を壊しそうで、心配。。


2005年07月14日(木) 逢坂剛『弔いはおれがする』

「零時の犯罪予報」(講談社文庫)の悼尾を飾るのは、『弔いはおれがする』。
大御所、逢坂剛です。ハードボイルド風のタイトルに、グイッとつかまれて、
その読みやすさとメリハリ効いたストーリー展開に、スイスイ一気読み。

おれと四面堂遥が、偽百ドル札で暴力団を相手に一芝居をうつお話です。
面白そうでしょ?面白かったですよ〜♪緊張したり、緩んだり、考えたり、安心
したり、心配したり、笑ったり、心がストレッチした気分。ふたりのコンビが、
良いのですよ。四面堂遥の頭の良さと強気な姉御っぷりに憧れます。そして、
人脈の広さにも!おれは、どうかって?んー、、、、いい人みたいです。

小説を読む楽しさを改めて感じた作品。劇画チックでも、嫌みがありません。


これで、「零時の犯罪予報」は閉じることになるのですが、実は日記に書いて
ない作品がひとつ──薄井ゆうじの『みちしるべ』。
……日記に書かなかったのは、つまらなかったわけじゃなく、そっと胸の奥に
しまっておきたい世界だったから、かな。


2005年07月07日(木) 倉知淳『桜の森の七分咲きの下』

新入社員が会社の花見の場所取りをしていると、いろんな人がやってきて……
というお話。誰も死なないので、気楽に読めます。新入社員のキャラが憎めなく、
そうそう、こういうタイプの人が場所取りを命ぜられるのよと、微笑ましく思って
いたら、もっと強烈キャラの人が登場!待ってました!倉知作品に、お馴染の
“猫丸”です。相変わらず、ぶかぶかの上着で愛嬌たっぷり、人懐こい笑顔で
馴れ馴れしくも鋭く、ミステリー読んでるのに、嬉しくなるじゃありませんか!

登場人物には、みな理由があるように、猫丸が現れたのも、それ相応な理由が
あるんです。桜の木の下で起きた一連の出来事に、ある解決を示して見せて
くれる猫丸。解決があって謎が生まれる奇妙な味わいのミステリーとなりました。
珍しい構成ですね。とても新鮮で弾みます。

猫丸は市井の賢人なのか、ただの変なヤツなのか、興味は尽きません。
他の作品で、また会いたい・・猫丸。


水野はるか |MAIL
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