水野の図書室
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2004年07月31日(土) 安西水丸『ホテル・ダンディライオン』

イラストレーターであり、小説・エッセイも書く安西水丸。多才な人ですねー!
画風同様、小説も独特で、つかみどころのない浮遊感が漂います。
オークウッド・ビーチにあるダンディライオンという名のホテルで過ごす
ぼくとミミューのお話は、物憂げなスタイルを崩さないことには、かたくなで。。

最初から飛ばします、ふたりの世界。
まあ、それが恋愛という状態なのね。ふたりさえ、いればいいんですよ。

この雰囲気、前にもどこかで会ったことがあるような気がして、ぼんやり考えて
ハタと気づきました。田中小実昌『夏の日のシェード』(2002.10.24記)です。
シアトル(たぶん)で暮らすぼくとミヤのお話。
田中小実昌も小説以外にTVドラマや映画でも活躍した多才な人でした。



2004年07月26日(月) 河野多恵子『朱験』

あぅ、、思いの外、すごいものを読んだ気がします。
『朱験』── 若い妻が他人には話せないような願望に取り憑かれるお話。
もー、久しぶりのゾクゾク感がたまりません。

この作品を恋愛小説アンソロジーに選んだ江國香織にもゾクッときました。
フッと持っていかれるような、ただならぬ妖しい世界なのです。

河野多恵子の他の作品も読んでみたくなりました。
アンソロジーの醍醐味のひとつに、嬉しい出会いというのがあって、最近では、
桐生典子との出会いにドキドキだったのですが、河野多恵子にも、、、
うーん、一目惚れ状態かも。

桐生典子、河野多恵子に共通する特異な感覚には、自分の内面に眠る何かを
揺さぶられるようで、新しい“場所”を教えてもらった感じです。


2004年07月23日(金) 吉行淳之介『謎』

藤堂志津子の「昔の恋人」で大人の恋物語に浸ったあと、もう少し恋愛モードで
いたくて、恋愛小説アンソロジー「ただならぬ午睡(ごすい)」(光文社文庫)を
読み始めました。とびきりの8編を選んだのは、江國香織です。

彼女が選んだ作家は、吉行淳之介・河野多恵子・安西水丸・江國香織ご本人・
佐藤正午・村上龍・平林たい子・チェーホフ・・と、まあ、バラエティ豊かなこと!
辻仁成がいないのが、ちょっと寂しい気もしますが・・「ただならぬ」場所に誘われ
ましょうか。

最初は、吉行淳之介『謎』。
奇妙な世界です。奇妙なのに、とりあえず奇妙な枠にギリギリ留まり、気分は
悪くならないのが吉行淳之介のすごいところ。こちらが夢見ていたような。。
裏表紙に「現実があやうくなるほどの、めくるめく鮮烈な恋の話」とあったのを
思い出して、裏表紙を確認しました。めくるめく、ほどじゃないけれど、現実が
あやうくなるほどの、という、まさにそんな感じ。一瞬、自分は何?って、ね。


2004年07月19日(月) 藤堂志津子『魔法』

「昔の恋人」(集英社文庫)最後のお話も、やはり昔の恋人と再会するお話。
17年ぶりに初恋の相手と再会した睦葉は、恨むでもなく責めるでもなく、当時の
想いを相手に告げるのです。

んー、、睦葉のように上手に言葉を選んで話ができたら、いいですね。
気持ちを言葉にするって、難しいし、言葉にしてしまうと、相手の受け取り方に
よっては、本当のところがねじれて伝わるような気がして、一番大切なことは
なかなか言えなかったりします。

遠い日の恋を、なつかしいけれど、今の生活をなげうってまで戻ってやり直したい
恋ではないと冷静に見つめることができるのは、今が幸せだからでしょうか。
過去の恋を引き寄せるかどうかは、それに値する相手かどうか、じゃないかと
思うんですが・・。(うきゃ!アブナイ発言)
もちろん、恋は相手まかせじゃいけません。恋の魔法をかけるのも解くのも
自分しだいなんですから。

4編の再会物語はどれもリアリティーにあふれ、小説を読んでるというより、友人の
身の上話に耳を傾けてる感じです。気軽に読むには、少々重くて。でも、そんな
友人の体験談が、いつか参考になるのではと思えてくる1冊。
恋愛関係がうまく築ける人は、人間関係を構築していくのも得意なような気がします。


2004年07月16日(金) 藤堂志津子『貴石』

夫が病気で亡くなってから、昔の恋人と逢瀬を重ねる菜未子の胸には、長い間
想い続けていた人がいて……。

会いたい人がいるって、大切なことなんですよ。
生きていく糧みたいなものです。
そして、その人からも会いたいと思われていたら、幸せです。

会いたい=愛している、でもあるんです。
心から愛している人がいたら、強く生きていける・・


2004年07月08日(木) 藤堂志津子『浮き世』

豊かな愛情に包まれて育った人って、なんとなくわかります。
人は愛されることで、愛することを知るんですよね。

『浮き世』は、恋愛を遊びと考える女、宇多子のお話。
真面目な兄嫁、和恵との対比がわかりやすく、宇多子の浮ついた言動に、どんどん
苦々しさを感じていくことでしょう。
ところが、人のこころを弄ぶ宇多子に、なんて女だ!!と炸裂寸前、場面は急展開。
幼い頃、肉親の愛情に餓えていた姿を見せられて、怒りは哀れみに変わるのです。

ラストで明らかにされる“浮き世”の意味が鮮やかで、うーん、さすが藤堂志津子、
見事です。
ますます、藤堂さまから、いろんな恋物語を聞きたい気持ちに。


2004年07月03日(土) 藤堂志津子『昔の恋人』

先月、恋愛アンソロジー「LOVERS」(祥伝社文庫)で、いろんな恋を読んだのに、
んー、いまいち、物足りなさが残ってすっきりしません。
どれも未熟な恋だからかな・・と気づいたところで、思い出したのが、藤堂志津子。
大人の恋を読みたいときは、藤堂志津子なのです。
重過ぎず、妖艶過ぎず、何か教えてもらえそう・・という訳で、大人の恋が四つ入りの
「昔の恋人」(集英社文庫)を読み始めました。

最初は表題作『昔の恋人』。十数年ぶりに昔の知り合いから電話がきて、会いに行く
ことになった女の胸の内は……。というお話。

主人公の女性が22歳だった頃、ふたりの男性と奇妙な三角関係だったことを回想
するあたり、せつないものがあります。自分の気持ちに軋轢や葛藤を感じながらも
どちらかの男性を選ぶわけでもなく、ただ、見送っていくような日常は、誰にとっても
なつかしくほろ苦い思い出。
若い頃って、言いたいことも言えずに後悔するばかりだったのに、いつの間にか、
言わなくてもいいことまで言ってしまって、反省することも。そんなこと、ありませんか?

かつて、友だち以上に思っていた人が、自分のことを恋人だと思ってくれていたら
・・・・・・うれしいですね。


水野はるか |MAIL
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