水野の図書室
Diary目次|過去を読む|未来を読む
皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。
2004年03月26日(金) |
宮部みゆき『祝・殺人』 |
ミステリー・アンソロジー「蒼迷宮」(祥伝社文庫)を読み始めてから、なななんと 1ヶ月!スローリードにも、ほどがあります。ええ、ありますとも。。(苦笑) 街は卒業式帰りの袴姿の女性に彩られ、みなとぴあは竣工し、引越しセンター のトラックが今日もマンション前に、はりついております。春ですねぇ〜。
そんな3月26日。「蒼迷宮」の悼尾を飾るのは、宮部みゆき『祝・殺人』。 ひぇ〜!祝・殺人、って!?「祝」ときたら、合格、ご卒業、ご入学、ご結婚、 お誕生日、といった、おめでたいイベントが続くものなのに、なになになんなの? このタイトル!その上、冒頭は日本国憲法第21条の引用でインパクト大! 「通信の秘密は、これを侵してはならない」なのですよ。
宮部みゆき+通信の秘密!期待しない方がおかしいくらい、でしょ? もお、わっくわくで読みました。
で、どことなく、初々しい感じがして、初出を見たら、89年10月ですから、デビュー 間もないくらいなんですね。結婚披露宴に届いた祝電が、ある殺人事件に関係 しているのがわかって──というお話。昔の火曜サスペンス劇場を思わせる 展開が、妙にわかりやすくて、逆に物足りなさがあったり、犯罪の謎解きをする 女性と刑事の会話がどんどん説明口調になっていくのが、気になります。 まあ、いろいろ気になるのは、やっぱり、宮部みゆきに期待しているからですね。 期待しすぎて、感動が・・うすめ。。しかーし、いいねー!の宮部みゆきでした。 なんだか、好きな人の学生時代の写真を見せてもらった感じ☆
なお、21条には「出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」もあります。
2004年03月21日(日) |
篠田真由美『オフィーリア、翔んだ』 |
どうもよくわからないお話。 二人の男の対話だけですすむんですが、その内容は、片方の妻が自殺した訳は・・ というもの。はふ〜。これだけで、気が重くなっていきませんか?
その妻ときたら、男にとっては娘ほど歳が離れていて、病弱だったため学校も ほとんど行かず、買い物もしたことがなく、人形のような無垢なかわいいおんなのこ、 のようなのです。これで、妻?なんだかヘン。。
いえ、設定がどうだとかあーだとか言うつもりはないけれど、(十分言ってる感じ) 読みすすむうちに、ガクンガクンと気が滅入っていくばかり。。
ここで、突然ですが、、
1. 料理が得意で、毎日美味しいものを作る女 2. 仕事がバリバリできて、知的な会話ができる女 3. たくさんの趣味を持ち、楽しく暮らす女 4. ひとりでは何もできず、逆らうことも知らない、長い黒髪の美少女
さあ、1〜4で、妻にするなら、どれを選びますか? 4を選んだあなたは、この物語に涙するでしょう。
2004年03月18日(木) |
清水芽美子『車椅子』 |
車椅子、からイメージするものといったら・・すばる望遠鏡・ウエストコースト・ トレミー星座・ザクースカ・カプチーノ・・・おおっと、、これじゃ、しりとり!笑
車椅子のある風景というと、北川悦吏子脚本のドラマ「Beautiful Life」。あれから 3年くらいですか?恋人の車椅子を押す主人公、キムタクが自然体だったのが 印象的でした。「メイビー」も「ぶっちゃけ」もなかったし。 車椅子のヒロイン(常盤貴子)は気が強くて、やさしくて、一生懸命で、でも難病で。。 しくしく。。最終回は涙、涙でした。。最近、ふるふる泣けるドラマがないですねぇ。
清水芽美子の『車椅子』は、作者の車椅子への温かいまなざしを感じる秀作。 ある区民センターに、車椅子の女性が新しい職員としてやってきたことで、小さな 波紋が生じます。車椅子でスイスイ進む明るく元気な姿は、まわりの人をも元気に する一方 ──。
読み終えてから1週間あまり、いろいろ考えてました。そんなわけで、更新も滞って いたのですが、、。何を考えたかというと、自分にとって困難なことって、何かなとか。 一体、どんなハードルを求めているのかなとか。んー、目標設定したーい!
自分探しの旅にでたいものの、そうもいかなくて、、こころの旅、ってとこ。 あぁぁ、遠くへ行きたい・・。
2004年03月07日(日) |
菅浩江『箱の中の猫』 |
昨日の能面を題材にした『泥眼』とガラリと変わって、今日の舞台は近未来。 遠距離恋愛のラブストーリーで、胸がキュンキュン!
恋人は空の上。国際宇宙ステーションの乗組員なのです。地上で彼の帰りを 待つ彼女は児童館で働く保育士。うーん、好感がもてる組み合わせ♪ 会えないふたりは、10日に一度のプライベート通信なるもので、おしゃべりします。 ふたりの会話が、、素敵です。「会いたい、会いたい」とか連呼しないところが いいですねぇ〜。まあ、新幹線に飛び乗って、なんてできないし。。
ところが、そんなある日、宇宙ステーションにトラブルが発生し ──。
純愛、(← わお!キーを叩きながらドクンとしました!)なのですよ〜。 ピュア、(← きゃ!つぶやいてみると口元がゆるみます)なのですよ〜。
タイトルは、量子学の学者であるシュレーディンガーの猫と呼ばれるパラドックス からのもので、それが恋愛とどんな関係がと思うでしょ? このタイトルは抜群です。ぜひぜひ読んでみてください。
・・恋の行方は聞いちゃいけないんです。
泥眼(でいがん) とは、能面のひとつで、元は人間の存在を超えた菩薩だったものが、 能の歴史と共に女の生霊を表す面となったもので、、と説明しても、どんな面なのか よくわからないですよね。なので、こちらを。女面(怨霊系)でお会いできます。 泥の眼といっても、眼には金が使われるとは驚きです。この面をつけて舞う姿を、 文字だけでキリキリ伝える乃南アサ、素晴らしい!
ストーリーは、とってもシンプル。面打ちにプライドを持つ面打師に泥眼を依頼した 日本舞踊家が、妥協を許さない厳しさで面に注文をつけていきます。
乃南アサがじわっと描く日常の恐怖も巧いなあと思いますけど、研ぎ澄まされた 能面打ちや踊りの世界を見せてくれるのも巧いですねぇ。 ミステリーアンソロジー「蒼迷宮」(祥伝社文庫)の中で、他の作品とは違う恐ろしさ が際立って、いい感じ。
ええ、ホント。乃南アサの文学的鉱脈の幅広さを感じました。
2004年03月05日(金) |
若竹七海『濃紺の悪魔』 |
夏海の次は七海です。海を見に行きたいなぁ〜。窓の外は雪景色ですが。 寒さが戻ってきたので、片付けたブーツを(← 気が早いのです)また出しました。 先週は暖かかったのに、こう寒暖の差が激しいと、身体がついていけません。
ついていけないのは寒気団だけじゃなくて、『濃紺の悪魔』も。。。 アクション満載の探偵ものは……難しいですね。
長谷川探偵調査所の探偵、葉村晶が大活躍する今回の依頼は、有名人の身辺警護。 若くしてマスコミにうまく乗り、実業家として成功している女性の身辺に起きる不可解な 出来事に、晶が果敢に挑みます。
んー、いまいち、ピンとこなかったんです。長谷川所長!もっとしっかりしてくださいまし。 依頼主との話し合いは、きっちりつめておいてくれないと、、。 探偵社の所長が頼りないのは、お約束ですか? 加納朋子の仁木探偵事務所も、助手の安梨沙がいるから、看板出していられるような ものでした。。
・・有名になるって、大変ですね。。心も身体もタフじゃなくちゃ務まらないですよー。
2004年03月02日(火) |
青井夏海『大空学園に集まれ』 |
青井夏海 ── ペンネームですよね。青い夏の海・・いいなぁ・・深呼吸したくなりました。 きっと、決めたら迷いがない人なんだろうなぁ、なんてイメージが広がります。
'94年に連作野球ミステリー集『スタジアム 虹の事件簿』を自費出版したのが、デビュー のきっかけというか、デビューなのです。す、すごい!もっとすごいのは、これがある人の 目に留まり、書評で取り上げられたことで、'01年に復刊され、『赤ちゃんをさがせ』を発表、 現在に至るわけで、自費出版から復刊まで、なななんと、7年かかっていたとは!! ペンネーム以上に迫るものがあります。ん?もしや、本名?んー、どっちでしょうか。。 ペンネームなら、潔さを感じるし、本名でいらっしゃるなら、素敵な名前!
『大空学園に集まれ』は、25年前に大ヒットしたテレビ番組に隠されたもうひとつのドラマ を紐解いていくもので、ちょっとせつないほろ苦さが漂います。
昔の栄光にしがみつく男と、青春時代の思い出を冷静に振り返ることができる女の対比が わかりやすく、言い古された言葉を使うと、誰もが自分の人生では主役、ということでしょう。 青井夏海、他の作品も読んでみたくなりました。
ペンネームで驚いたといったら、乙一。(本名は安達寛高) 「水野の図書室」は乙一から始まりました。
|