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2001年09月17日(月) 孤独

 
私が孤独であるとき、私はもっとも孤独ではない。


(キケロ)



2001年09月16日(日) 星の子

 
しばらく、眠っていたにちがいない。目をさましてみると、三つのことがちがっていた。虫たちがまたもどってきて、夜明けの星が東の空にまたたいていた。そして、母さんがぼくのとなりにすわっていた。母さんは静かに、ただ待っていた。母さんのからだのぼんやりした輪郭がとても自然におさまっていたので、母さんが実際にぼくに声をかけてくれるまで、母さんがそこにいるとは信じられなかった。それに、ぼくがきてほしいと思ったから、母さんがそこにいたというわけじゃない。

「あなたの学んだことを教えてちょうだい」
母さんの声は低く、夢の中できこえるようだった。

ぼくもおなじ、ささやくような調子で答えた。
「夜には・・・、夜にはね、きっとだれでも、自分が自分の友だちになるんだ」

母さんは短く息を吸いこんだ。そして、母さんが分かってくれたことをぼくは知った。


『朝の少女』 マイケル・ドリス



2001年09月15日(土) 朝の少女

 
「ひとつ方法がある」
父さんはやさしくいうと、そばにくるように手招きをした。父さんはひざまずいてあたしとおなじ背の高さになった。そして、
「わたしの目の中をのぞいてごらん。何が見える?」
といった。

身をかがめて、濃い茶色の円の中をのぞきこむと、ものすごくふかい池の底にはいっていくような気がした。ふたりの小さな女の子があたしの方を見かえしているのに気づいた。きれいな顔で、まゆはカヌーのようにまっすぐ、あごはほっそりしていて、レモンのようになめらかだった。あたしが見つめていると、ふたりの口もとがそれぞれ大きくひろがった。とても、かわいかった。

「この人はだれ?」
その見なれないふたつの顔から、あたしは目をはなすことができなかった。
「父さんの頭の中に住んでいる、このかわいい女の子たちはだれなの?」

「これが、おまえが知りたがっていたことの答えなんだ」
父さんは、あたしにいいきかせる。
「この子たちはいつも、いつもここにいるよ。おまえが会いたくなったら、いつでも会いにきたらいい」


『朝の少女』 マイケル・ドリス



2001年09月14日(金) ヴィンセント・ギャロ

 
ギャロは多彩な経歴の持ち主だった。

「俳優」として活躍する彼のことは以前から知っており、出演する作品は概ね観ていた。『アリゾナ・ドリーム』では役者志願のジョニー・デップの友人役を演じていた。一度観たら忘れられない風貌、デップとは対照的ともいえる早口で、ロバート・デ・ニーロやケーリー・グラントの物真似をする大袈裟な仕種が可笑しかった。『フューネラル』では死体の役、『ネネットとボニ』では主人公が憧れる人妻の亭主、白いコック帽に青い眼をしたパン屋を演じていた。『愛と精霊の家』、『フィガロ・ストーリー』、『パルーカヴィル』・・・・彼が演じるだけでどんな小さな役も印象深くなった。

それ以前はというと、ざっと挙げて、ジャン=ミッシェル・バスキアとバンドを組んでいたミュージシャン。今では作品に高値がついて本人が買い戻せないほどの(日本でも画集が出版されている)画家。コスチューム・ナショナルのカタログを手がけたカメラマン。YAMAHAのプロのバイクレーサー。更には専門誌に寄稿するほどのオーディオ専門家(日本では彼が俳優であるというよりも先にその筋の専門家としてオーディオ・ファンには知られていた)であり、三十年代、四十年代のハイファイの有数なコレクターで、レアなギターのコレクションも多数、ロスアンジェルスの自宅のスタジオにはアナログの録音機材が完備されている。雑誌で知る限り、ヴィンテージ・クローズのコレクションは200着以上、昔から住んでいるニューヨークはリトル・イタリーのアパートメントには、7000本もの映画ビデオが並ぶ。熱烈な映画ファンである彼は、ある雑誌のインタビューで非常に辛辣で厳しい俳優・監督批評を独壇場で展開、そこではデビッド・リンチやハーモニー・コリン、ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、スーザン・サランドンらが槍玉に挙がっていた。また、今シーズンのトランス・コンチネンツとパルコのイメージモデルを務め、自らパルコのポスター、テレビCMも制作している。


『SWITCH』JULY 1999/横井里香



2001年09月13日(木) バッファロー'66

 
2月下旬1本の映画を観た。タイトルは『バッファロー'66』。物語はこうして始まった。主人公ビリー・ブラウンは、5年の刑期を終え、故郷ニューヨーク州バッファローに戻る途中、自分に全く関心のない両親に「政府の仕事で遠くに行っていた、これから女房を連れて帰る」と嘘をつき、通りすがりの女レイラを拉致、彼女に妻を演じることを強要する。

いいか、本当にオレを立てろよ
両親の前でオレを馬鹿にしてみろ、その場で殺してやる
オレの顔を潰したら二度と口をきかないぞ
そのかわり、うまく演じたら親友になってやる
一番の親友だ
約束だぞ

様々な手法を駆使して作られたこの作品は1人の男によって監督、主演、脚本、音楽のすべてが手がけられていた。物語る力と演じる力の魅力。ベン・ギャザラ、クリスティーナ・リッチ、アンジェリカ・ヒューストン、ロザンナ・アークエットら脇を固める俳優の熱演によって、一つひとつのシーンが丁寧に作り込まれ仕上げられていた。

観る度に新しい発見があった。音楽の使い方はもとより、リバーサル・フィルムを活かした映像の深さがその効果を充分に上げていた。そして何よりも登場人物達。世間から少しだけ外れた彼らの突飛でおかしな言動や仕種に笑い、寓話のような優しさと孤独に共感した。すべては哀しみの中に息づき、人々は何かに欠けていた。その何かを見つけたいと願った。1時間53分のストーリーがもたらしたもの、それは、少年時代のリアルな思い出が重なるある種の痛みだった。彼に会って話を聞きたいと思った。彼の名は、ヴィンセント・ギャロ。


『SWITCH』JULY 1999/横井里香



2001年09月11日(火)

 
散歩がてらに 旅に出る


(太田朋)



2001年09月10日(月) la vie

 
La vie est un travail qu'il faut faire debout.

人生は、立ってしなければならない仕事である。


(ALAIN, Propos d'un Normand)



2001年09月09日(日)

 
"Love ought not to make requests," she said, "but shouldn't make demands, either. Love must have the strength to reach certainty for itself. Then it no longer undergoes the power of attraction, but exerts it. Sinclair, your love is being attracted by me. Whenever it begins to attract me, I shall come. I don't want to make a gift of myself, I want to be won."

「愛は願ってはなりません」と、彼女は言った。
「要求してもなりません。愛は自分の中で確信に達する力を持たねばなりません。そうなれば、愛はもはや引っ張られず、引きつけます。シンクレール、あなたの愛は私に引っ張られています。それがいつか私を引きつけたら、私は行きます。私は贈り物をあげません。私は獲得されたいのです」


『 DEMIAN 』 Hermann Hesse



2001年09月08日(土) 困難

 
She stroked my hair with a hand that was light as air.

"It's always difficult to be born. As you know, the bird must make an effort to break out of the egg. Think back and ask: Was the path really that difficult? Wasn't it also beautiful? Could you have thought of a more beautiful or easier one?"

彼女は片手で私の髪の上を空気のように軽くなでた。

「生まれることは常に困難です。鳥が卵から出るのにほねをおることはご存知でしょう。ふりかえってたずねてごらんなさい、自分の道はそれほど困難だったか、ただ困難なばかりだったか、同時に美しくはなかったか、自分はより美しい、よりらくな道を知っていただろうか、と」


『 DEMIAN 』 Hermann Hesse



2001年09月07日(金) Strong Enough


God, I feel like hell tonight
Tears of rage I cannot fight
I'd be the last to help you understand
Are you strong enough to be my man?

Nothing's true and nothing's right
So let me be alone tonight
You can't change the way I am
Are you strong enough to be my man?

Lie to me
I promise I'll believe
Lie to me
But please don't leave

I have a face I cannot show
I make the rules up as I go
It's try and love me if you can
Are you strong enough to be my man?

When I've shown you that I just don't care
When I'm throwing punches in the air
When I'm broken down and cannot stand
Will you be strong enough to be my man?

Lie to me
I promise I'll believe
Lie to me
But please don't leave


『Strong Enough』 Sheryl Crow



2001年09月06日(木) フィガロの結婚

 
あの二人のイタリア人女性が何のことを歌っていたのかは、今でもわからない。実のところ、知りたくもない。言わぬが花、ってこともあるのさ。俺はこう思いたいんだ。彼女たちは、言葉に表現できないほど美しいことを歌っていて、だからこそ胸が痛くなるのだと。

そう、あの歌声は心をしめつけた。灰色の場所にいる誰もが、夢にも思わなかったほど、高く、遠くへ。何か美しい鳥が、俺達の単調で狭い檻の中に、羽ばたきながら飛び込んできて、あの塀を消してしまったかのようだった・・・そして、ほんのわずかな時間・・・ショーシャンクの全員が、自由を感じていた。


『ショーシャンクの空に』 (レッドの語りより)



2001年09月05日(水) 生きる

 
生きる、ということは、徐々に生まれることである。


『戦う操縦士』 サン・テグジュペリ



2001年09月03日(月)

 
愛を優しい力と見くびったところから生活の誤謬は始まる


『惜しみなく愛は奪う』 有島武郎



2001年09月02日(日)

 
旅は人を謙虚にする。
世の中で人間の占める立場が
いかにささやかなものであるかを、
つくづく悟らされるからだ。


(フローベール)



2001年09月01日(土) 生きる

 
人は異郷に生まれてくる。
生きることは、故郷を求めることである。


(ベルネ)


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