日記

2005年06月24日(金) あの日



へえ。今日だったのですね。
ええ。確かにあの日も、ひどく、暑い日でした。


こんばんわ、今日はサーガエピ2のお誕生日なのですね。もえぎです。
びっくりするほど全く知りませんでした。清々しいほど知りませんでした。
午後に紺堂嬢がメールで教えてくれるまでちっとも知りませんでした。
笑ってしまいそうになりました。
どうして七年前のことはああもつまびらかに覚えているというのに。
どうして四年前のことだってああもあざやかに覚えているというのに。
たった一年前のことをすっぱりさっぱり忘れ去ることが出来るのかと。

ごめんなさい。エピ2をお好きな方に、今日の日記は大層つまんないと思います。
実際余り語りたくはないのです。
きっと。一歩間違えたらとても酷いことを口にしてしまいそうな気がして。
けれどそれでもわたしのおもい。わたしの感想。
EDを迎えた頃には体重まで減ってしまったわたしのおもい。
ゼノというものがすきだから。だいすきでたまらないから。
だからこそエピ2に関しては口をつぐみたくなるのです。
そして、こんなことを考えます。
『エピ2、まだでないのかなあ!』って。わくわくとした笑顔と共に。
なんかもう全部なかったことにしたいみたいですね(笑)
ごめんなさい。わたしはとんでもなくひねくれたろくでなしですから。
わたしをあそこまで追い込み絶望させうちのめした存在を祝うことが出来ないのです。

そういやあの頃ってどんな日記書いていたかなあと思いまして。
当時の日記帳をぱらぱらとめくってみました。
2004年六月二十四日。つい笑ってしまいました。
そこには、書いた本人にしか解読出来ないであろうのたくった書体でこうありました。
一言。
『あいたいのに。あえたのに。』
それ以降は真っ白。七月の半ばまで延々空白。
けれどそれが逆にあの頃の心情を物語るようでえらく生々しく見えました。


仕事がお休みなので。今日はひねもすのたのた。
……とみせかけて、午後は結構働いていたり。
とても朝ごはんをアクエリアスをコップに一杯で済ませた人とは思えません。
今日ぐらいは。ね。と思い、エピ1のサントラをセット。
懐かしい愛しいそしてかなしい色んなものをぐるぐるさせながらお掃除開始。
スプレー撒いたり雑巾かけたりシャワーかけたら天井から降ってきてきゃーてなったり。
この間ずっとBGMがGnosisだったりPanicだったりしたのはご愛嬌ということで(笑)
で。時折目元がじわりとしてたのはひみつです。

あの頃の文章をひょこりとみつけました。
日記に書こうとして、内容が内容だけにやっぱやめ、と思い載せなかった。
けれどまあ。こうして一年経ったことですし?
感想含め、最後にちょっとだけのっけちゃいますね。
―…怒らないでくださいね。
あの頃。わたしは。本当にこうおもいました。
エピ2プレイして。終わって。そして。










『予算が足りないとか、そんなだったら、腎臓くらい売りますのに。
まんだはん(注:ミナミの帝王)にお願いでもしてみて。
ファンが何百人か集まって腎臓売れば結構な値段になるでしょうにね。
ああもう良いですよ……わたしの心臓も角膜も全部切っても。
ゼノが元の姿に戻ってくれるのなら。

こんなにかなしいのなら心臓なんて要らない。』



2005年06月19日(日) 五つの橋も渡らず五つの丘も越えず浅い眠りを求め?



週一日記にする気ですか?もえぎさん(苦笑)
ああもう留守とかそういうんではなくてひたすらにごめんなさいです……。


こんばんわ、『お久し振りです』がよく似合う今日この頃のもえぎです。
いきなり更新したかと思いきや次には一週間の沈黙ですからね。
自分でたちが悪いと思うのですから、お客様はより一層そう思われることでしょう。
すみません。この一週間は。その。なんと申しますか。
『起きられなかった』。のです。
お仕事終わって帰宅すると、夕飯を食べるやら食べないやら。
そもそも食欲自体がそんなになくて。けれどお薬を飲むには食事が必要。
で、どうにかこうにか胃にものを入れてお薬入れると、すぐ眠ってしまうのです。
起きていることが出来なくて。ただ。眠ってしまう。
考え事していても考えがまとまる前に眠ってしまう。
どんなにおかしな体勢でベッドに転がっていても眠ってしまう。
なんかもうとにもかくにも音楽も本も文章もゲームも何もかもほっぽらかして眠ってしまう。
まるで逃避。
コトノハきどりなのでしょうか?(苦笑)愚かしい。
ああ。けれど。もう永遠に目が覚めないように眠っていたい、とは少し、思います。

それにしても何故にこうも眠りたがるのか。
心底不思議に思っていたら言われました。
『疲れているのでは?』と。
その一言に、はた、と思考停止。そして目からウロコな気持ち。
疲れているから眠いのだと、ちっとも考え付かなかったのです。
で、体温計をいそいそ用いてみましたら案の定熱がありました(笑)
毎回毎回成長しないなあと思うのですが、どうしてこういうことに気付かないのか。
体の異変と、ならば取り敢えず熱でもはかるかという行為がどうしても繋がらない。
だからわたしは動物のお医者さんの菱沼さんが他人事とは思えません(笑)
まあともあれ原因解明、自覚も出来て。後は体調回復を待つばかり。
その前にきちんとご飯食べなきゃですかね。うー、食べる気しない……。


でも今週は、素敵なことがたくさんあったのですよ。
何ヶ月かぶりにキモノでおでかけしてみたりしましたり。
レトロガールスタイルでGO!GO!です。三十年以上前のキモノー。
母のお嫁入りの品だそうで。明らかにわたしより年上のキモノ。
おでかけ先は月に一度だけ立つ市。とびきり素敵な市。
お菓子屋さんのおねえさんと顔なじみになってみたり。
手作りの帯留めを作る和装のおにいさんと話し込んでみたり。
そしたらおまけしてくれた上にべんきょうしてくれたり。
和装二人が珍しかったのか、通りすがりのおねえさんに写真をお願いされたり(笑)
いつもならカメラは嫌いなのにそのときはすんなり被写体になってみたり。
可愛いおんなのこのポストカードにひとめぼれしてみたり。
そしたらそれを描いているおにいさんと少しお話出来たり。
葵嬢へのプレゼント含め、何枚も買っちゃったり。
やっぱりわたし、あそこ大好きだと再認識しました。
来月も行きたいなあ……。

おにいさんの作ってらした帯留め。本当に可愛いのです。
けれど身に着けるには、帯締めを平織りのものにしなくてはで。
……わたし、平らなやつ苦手なんです。むすびにくいので(笑)
どうしたものでしょうかと相談してみると、思いもよらない提案。
『レースに通しみては』
思わず目をぱちくりしてしまいました。
だって、この言葉を、背の高い、和装のおにいさんが口にされたのですよ?
今でも思い出すたび、ついつい口の端を微笑みの形に上げてしまいます。
どうやらわたしは、おとこのひとが、おとこのひとがそうそう口にしないであろう言葉を。
それを使われるのを、とてもこころうれしく思うようです。
レースといい、ラブロマンスといい、ロマンティックといい……。
おとこのひとが、おおきな手で、ちいさな三つ葉やすずらんを形作る。
それはそれは精緻な細工を。丁寧に。
少し想像してみるだけで、とても、素敵な光景だと思うのですけれど。


わたしは、なにやら無自覚に疲れているようなのですが。
ちょっとずつ、ちょっとずつ…なおしてゆこうと思います。
色んなことが滞っていて、お客様には心底申し訳なく感じています。
けれど。ゆっくり。どうにかこうにかなりそうですので。
よろしければ、こんな駄目管理人に、もう少しお付き合い願えればと思います。
……拍手のお返事遅れ倒して申し訳ありません。


>十三日
・16時の方
短すぎるのもどうかなあと思ったのですけれど、あんな形にしてみました。
本当にフェイエリィは、たくさん実験的なことが出来て楽しいです。
今までのふたりとは少し毛色が違いますけれど、根底は同じなのです。
シンプルならシンプルなりのやりかたがあるかと、それを書いてみた感じです。
このふたり。もう少し頑張って、何か出来たらと企んでみたりしています。
丁寧にやさしいお言葉、ありがとうございました(ぺこり)

>十五日
・11時の方
しあわせでいて欲しいのですよね、あのふたりにはつくづく。
何度目ともしれない再プレイしていて、序盤だけでもそう思う始末です(笑)
余りにも色んなことがありすぎましたけれど一言でまとめればただこれだけ。
しあわせでいてほしい。それだけのことなのです。
……ワガママではないですよね。せめて、これくらいは。
素敵にやわらかなお言葉、ありがとうございました(ぺこり)



―…そう。フェイエリィ。
接触者対存在ではなくて、フェイとエリィ。
このふたり。ただ。ふたり。
いまのわたしに、出来るだろうか?と思惑がほんのりもやもやと。
もう少し自信が持てたら、ひそかなくわだて、明らかにしますね。



2005年06月12日(日) 更新履歴


なんの前置きも脈絡もなく拍手のお話全部更新です。
今までのとはかなり毛色が違うので、どうか怒らないでやってください。


こんばんわ、やっぱりわたしはあのふたりがすきすぎるようです。もえぎです。
バハラグも三周目に入り、やや中だるみのような状態になり。
ドラゴン十匹計画も少し滞っていて。
そしたら夢にムニムニが出て続きを催促されてしまったり(笑)
などなどしている間にやり始めたのは何度目ともしれないゼノの再プレイでした。
いつも。いつでも。七年前のあの日から。
凹んだときやらかなしいとき、いつも処方箋にしていたのはゼノプレイでした。
……エピ2以後、それすらも恐怖になり、行き場がなくなり。
どうしようもなくなってしまっていたのですけれど。やりはじめました。おそるおそる。

そしたらもう。
たのしくて。うれしくて。しかたがなくて。

やっぱりわたしはゼノが好きなのだなあと再確認しました。
そして接触者と対存在なあのふたりが好きすぎることも。
まだバルトと地下鍾乳洞うろついてる辺りですが、それだけでも楽しい。
自分でもどうしてこんなに何もかもが楽しくて嬉しいのか分からない。
でもでもやっぱり。たのしくてうれしい。
些細な台詞にいちいちくすくす笑ったり。
演出の秀逸さに息をのんだり。
今ならすべてがわかってしまうことにちくりと胸を痛めたり。
『汝ら、神のごとく…』に背筋を凍らせたり。
OP、オペレーターさんのモニターに『UNO』の文字があり。
その側には某ウーヌスムンドゥスみたいな円環があり。
もしかしたらウーヌスムンドゥスネットワークオンライン?とか思ったり。
フェイの踵落としの音の生々しさに惚れ惚れしたり。
効果音がいちいち好きで、戦闘画面の動きが好きで、たまらない。
エレハイムもいちいちなんもかんもが可愛くってどうしようもない。
だからそんな勢いのまま拍手更新なのです。

内容は、こんなのです。
・インラヴアゲイン×5

何があってもフェイエリィが出るということですね(笑)
けれど、余りに勢いのままなので、きちんとカウントはしていません。
小数点ついてるのがあったりします。
エリィの短すぎる独白が三つに、会話だけのが二つ。
ふと、思います。
わたしはこころよりこのふたりのしあわせを願ってやみません。
最後に、今日はありがとでした葵嬢。また会おうねー。

それにしてもサイト放置ですみません(苦笑)
拍手のお返事、させて頂きます!

・七日
>0時の方
お返事遅くなりまして申し訳ありません……!
ふふふ、バハラグやりたくなってきましたか?
それにしてもコメントをヤリヤリでこられるとは思いませんでした。
ここはひとつ、ようはアレアレアレ…で返すべきでしょうか(笑)
ドラゴン十匹計画、残り七匹頑張ろうと思います。
お言葉ありがとうございました!



2005年06月05日(日) 『だいすきをおしえて』



ひょろひょろ留守にしまして申し訳ありません。
それでもドラゴン十匹計画はなおも進行中なのです(笑)


こんばんわ、まあ色々とメタメタなわけで。もえぎです。
先週にえっらいダメージを食らう事件があったのですよ。
それが既に起こされていた撃鉄なところにきたものですから。
引き金がひかれたら後は……というわけです。
そんなこんなでケルパーもガイストもめっためただったりします。
ひしひしとダメージが後を引いて、今にも続いてしまっているみたいですね。
あと他に、多分あれもあると思うのです。
ほら。今月は六月じゃあ、ないですか。六月なのですよ。
去年の六月に何がありました?
―…あったでしょう?

もう細かな日にちさえ覚えていませんが六月でしたね。あの日。
熱い熱い朝の陽射しの中、白いスモックを着ていました。
気温によるものか、予感によるものかのか分からない汗が、
背骨の曲線に沿って冷たく滑り落ちる感覚さえ覚えています。
そうしてお店の開店を待っていて。扉が開くと同時に駆け出して。
エレベーター使えば良いのに、一番に飛び出すとエスカレーターを駆け上がった。
六階ぐらいまであるのに走り続けて、到着する頃には息も上がっていて。
そんな風にして手に入れ胸に抱き締めたものに打ちのめされた日から一年。

だから、多分あれなのです。指輪物語のバギンズさんもそうだったです。
(何故か映画版はフロドくんと呼ぶくせに原作だとバギンズさんと言いたくなる)
黒の傷から一年後とか、シェロブの毒から一年後とか伏せったりしてらしたでしょう。
その痛みを受けたのと同じ日に。
わたしが受けたものは幽鬼から受けたような大層なものではありません。
それでも……かなし。かった。な。
一言でみもふたもなく言っちゃえば思い出し凹みでしょうか(笑)
体と精神がそれをおぼえているから、撃たれてしまう。
わたしを包囲したままの銃は一体何丁あるのやら?


さあてそんな気配を打ち砕くべくドラゴン十匹計画いってみましょう(笑)
第三段の今回は、ツインヘッドこと当家のひいゆです。ひーちゃんです。
実はこのお話、とっくに完成していたのです。
ただここ数日わたしがメタメタすぎてネットに繋ぐことが出来ませんでして。
そのためここまで流れてしまいました。ごめんよひーちゃん。
さてさて、ツインヘッドなひーちゃんを、わたしは女の子だと思っています。
公式設定で『ドラゴンに雌雄の区別はない』とか言われてるのに。勝手に(笑)
まあそれはおいておくとしても、この子は女の子だと思っているのです。
しかも、ちょっとおすまし顔の似合う、おねえさん気質な子。
そのくせちょっとてれやさんで、はずかしがりやさん。
自分でもそんな性格を承知しているので、それを隠すべく更におねえさんであろうとする。
そして実際頭は良いし、能力値も高いし、見た目も綺麗。まさにおねえさん。
今更言うのもなんですがわたしドラゴン捏造しすぎでしょうか。
でも『ひーちゃん』って愛称は漢字表記だと『姫ちゃん』になって可愛いと思うのです。

ひーちゃんをこんな性格だと思うようになったのは、編成の影響が多分にあります。
ミストさん、ネルボさん、ジョイさんの万能隊につけていたのです。
(残り一名はゾラのむすこだったりビッケバッケだったりします)
この『綺麗なお姉さんは好きですか?』なパーティの専属ドラゴンだったのです。
おかげでこんな性格だと思い込んでしまうようになりました。
ジョブがばらばらで使いにくいと思いがちのパーティなのですけれど。
以外にも、それなりに便利だったりするのです。
わたしはドラゴンが少しでも怪我したりするのをとても嫌います。
そんなとき。わざわざプリースト隊にLV30のホワイトドラッグをして貰わなくても。
この隊にいるジョイさんの、LV10のホワイトドラッグで間に合うわけです。
あと、HP残り少しで生きてる敵パーティへのトドメにネルボさんの魔法とか。
むずかしいダンジョンにおいては宝箱捜索チームとして大活躍ですし。
しみじみライトアーマーがいると便利だなあと思います。
女の子至上のわたしとしては、女の子は絶対二軍にしたくないのです(笑)
もともとはその一心で誕生したパーティなのですけれど。
まさかこんなに使い勝手がよくなるとは思いませんでした。

さあてそんなわけでして。
本日のお話は、ちょっとてれやさんなおねえさんドラゴン。
ツインヘッドと隊長のお話です。
……書いてて楽しいのですが、一個気付いたことがあります。
なんか書いてるうちに、書き方がレンダーバッフェと似ていることに気付きました(笑)
性格の方向性も似ている気がします。
ではいつかツインヘッドとパルパレオスで書けたりするかもですね。
とまあ、そんなウダウダ話はおいといて、お話をどうぞです。





『だいすきをおしえて』(バハラグ。ドラゴン十匹計画。菫の清らな双頭)

 少し視線を逸らしているのは、別につん、とすましているわけではないのだけれど。明後日の方向見やる二つの頭と四つの眼は、時折ちらちら何かに吸い寄せられるみたいになって。彼女は、そんな自分の思い通りにならない気持ちと首を、そのたび慌てて元に戻す。最初みたいに。涼しげな顔でおすましして。
 でもでも。どうしても聞こえてきてしまう風の音と、楽しげな声には、やっぱりやっぱり気を取られてしまう。そしてついつい、その聡明さをもって、観察してしまう。ちらちらこっそり。気付かれないように。


 仲間のドラゴンたちが、皆群がるようにして、たった一人の人間に押し寄せている。彼はそれを嫌がる素振りもなく、さも楽しげに微笑みながら腕を伸ばし、声をかける。そして彼がそうしてくれるだけで、どのドラゴンも例外なくすっかりご機嫌になってしまうのだった。
 流石に真緋の不死鳥たるサラマンダーは一番付き合いが長いだけあって、正面から擦り寄るとあからさまに甘えてみせる。普段は冷静なアイスドラゴンだって、彼といる時はうきうきと胸躍るのを隠しきれない。長い体を上手く利用して、軽く尻尾を絡ませながら撫でるのを催促する。いつもおとなしくもじもじしたモルテンは、自分の体がふわふわと心地良い羽毛にくるまれているのを知っているので、彼の後ろから隠れるように頬擦りを。そしたら、彼が突然のやわらかさに蒼い瞳を細めながら構ってくれるのを理解しているから。豪快さんな性格であるサンダーホークは、甘え方も豪快さん。特に戦法もない。真正面からどかーんとぶつかっていって、どかーんと彼を飛ばしてしまわないようにだけ気をつけながら、どかーんと抱き締めて貰えることを望む。加入時期は最後ながら、生来のあまえたさんな気質から、ムニムニの甘え方も他のドラゴンたちに負けてはいない。と言うよりも、彼と出会ってからの時間がまだ短いので、より一層構ってもらおうと必死。ぐりぐり体を押し付けると、一生懸命あそんであそんでと訴える。
 そんなドラゴンたちを、一匹として無碍に扱いもせず。それぞれに深い愛しさと慈しみを持って、ビュウは接する。時には淡い微笑を灯して、時には大きな笑い声を上げて、時には厳しく叱ったり諫めたりもしながら、優しく指を伸ばして撫でてやる。
 だからこそドラゴンはビュウが大好きでたまらない。もうそれは例外なく。けれどこんなことを、考えるドラゴンも、いるわけで。

――私は、皆よりお姉さん。あんなに子供っぽくなんてないわ。だから子供っぽいことなんてしないの。だって私はお姉さんなのだから――

 まだ彼と会って日の浅い、優美な菫の肢体に怜悧な頭脳をも兼ね備えた、一匹のドラゴン。彼女はいつもそんな風に考えていて、考えすぎていて、いまだにどうやって彼に接したものかと二つの頭を抱えていた。
 彼女を育ててくれたパパは、ビュウに対して『てれやさんだから!』なんて紹介をするものだから、内心きゃあと悲鳴を上げそうになったものだった。初対面がこんな具合だったので、余計にどうしたら良いものやらと考えあぐねていた。
 実際ツインヘッドは他のドラゴンたちに比べて、多少はずかしがりやさんでてれやさんなところがあったりするけれども。それは他の子たちがあけっぴろげすぎるのだと彼女は理解している。それに、そんな性格を分からなくしてしまうくらい、彼女はとても頭が良くて優秀で、申し分の無い能力を持っていた。他のドラゴンたちからも、お姉さんみたいに扱われることも多々で。だから、私はお姉さんだとずっと考え込んでいて。そのため、こういう時、どうしたら良いのかわからなくなってしまう。


 どうしたら。どうすれば。
 考えれば考えるほど、彼には近寄りにくくなってしまって。思わずおすまし顔なんてしてしまう。そしてふと我に返ると、目の前にいつの間にやら彼女をすぐ側で見上げる、ビュウの姿があって。一瞬飛び上がりそうにびっくりしてしまった。最初の時みたく、きゃあと喉の奥に悲鳴を押し込めると、四つの瞳を真ん丸にして彼から後ずさりしそうになる。けれども。
「おいで、ひいゆ」
 びくりと強張りかけた体を、あたたかく撫でさするように。両腕をいっぱいに伸ばしたビュウが、彼のあの声で。あまく、穏やかで、胸の奥にぽ、と快いぬくもりを灯す声音で彼女の名前を呼ぶ。勿論、あのたまらないくらい優しい微笑ををたたえて、やわらかに細められた碧眼で見つめてきながら。
 それはもう彼女だって大好きで大好きでたまらないビュウの仕草であったから。遂に『おねえさん』な留め飾りはぴん、と自然に外れて。
 甘えた鳴き声も、ビュウを挟むようにしてやおらゆるゆると下ろされた二本の首がおそるおそる頬擦りするのも、ごく当たり前のように流れ出た動作だった。
 よしよしと優しく撫でてくれる手の平の感触に目を細めながら、彼女は自分の行動に驚きながらも、もう飛び退ろうとはしなかった。ただ居心地良くて、ここでずっとこうしていて欲しくて。こころが溢れるように満たされる、あまい幸福感をおぼえた。それはもう二度と忘れられない、陶然とした感覚だった。
「甘え下手なんだな」
 ビュウの微苦笑するような声が、すぐ側で聞こえる。低く、囁くようなトーンは、なおも彼女をうっとりさせるものだった。だから自然に、もっともっとと二本の首を使って、甘えてみせる。そんな『おねえさん』に、他の子たちはちょっぴり抗議するように、不平そうな鳴き声を上げてくるけれど。彼女は悪戯っぽく目を眇めてみせるだけ。『佳い子』と呼びながらやさしく撫でさするそのやさしい指は、いまだけは彼女のもの。

――今までこんなの、知らなかったの。私は皆のお姉さん。けれどもビュウの前でだけは、お姉さんじゃあ、なくなるのよ――

 この後、今までの分を取り戻さんばかりの勢いで甘えてくるひいゆと、それに対抗するがごとくますます甘えてくる五匹のドラゴン。ありあまる熱烈なあまえたさんたちの攻勢に、やっぱりビュウは大きく腕を広げて、待ち構えてやるのだった。当然、いつもの淡い微笑を忘れないで。



2005年06月01日(水) 『幸福な夢追うひとをくるむ天球はねぶとん』



ドラゴン十匹計画細々と進行中。どれだけの時間で書き上げられるでしょう……。
それ以前の問題として、どれだけの方が分かってくださるのでしょう(笑)


こんばんわ、こりもせずに。もえぎです。
バハラグ再プレイ初めて一ヶ月弱というところでしょうか。
体調とかその他はメタメタだったりしますが書いています。
バハラグ二周目も、見たいイベントは大体見終わるところまで行けましたしね。
イベント見たさに三周目に入りましょうか(笑)スパイ大作戦まで!

でもバハラグ終わったら次にすべきはFF6のクリアなのですよね。もう一息なので。
そしてその後は。どういう風の吹き回しなのか、FF4がしたいのです。
スーファミ版は結局未クリアのままですし……。
バブイルの巨人内部、という途方も泣く中途半端な場所で放棄しました。
『もうイヤだー!!』と半泣きになりながらコントローラーを投げたのです。
月から戻って途端にあれで。耐え切れなくなった模様です。
そしてこっそり申し上げますと、ライブアライブもしてみたいなあとか今更考えてみたり。
かと思うと夢にロマサガ風味のFF6ラストバトルとかが出てきて。
ラスボスまでの前哨戦で何故かアルテマウェポンが出てきて。
慌てて『リレイズ!リレイズ準備!!』とか思っている間にアルテマ発動。
メンバーばたばた倒れて二軍メンバーが代わりに参戦。
何故かロックとオルちゃん(味方なのかオルちゃん)
でもロックが何も魔法を覚えていない状態で、且つ装備無しの状態なのが、
非常にわたしらしいと思いました。どれだけロックに仕返しする気ですかもえぎさん。
そのくせオルちゃんはメテオが使えたりとかして大変感心しつつ目が覚めると。
友人M子から『ロマサガのミンスト貸そうか?』とのメールが来ていました。
何かの前兆だったのでしょうかこの夢。

……まあそれはともかくとして本日のお話。バハラグドラゴン十匹計画。
第二段は、ムニムニこと当家のうにむ、うにくんです。
うにくんの見た目って、ご覧になられた方ならすぐに思い浮かべることが出来るのですが。
相当に斬新なビジュアルをしたドラゴンなので、説明が難しいです。
気になる方はプレイをお勧めします(笑)いやあ本当に斬新です。
しかも鳴き声を擬音化するのが一番簡単な子です。『わん』って鳴きます。
力が強くて成長率もぴかいち、なのにとってもあまえたさんでちょっぴりおばかさん。
そんな子。可愛くて仕方がありません。
うちの編成では、神竜召喚部隊に、常につけていました。
しょうかん×2とアサシンズのパーティ。
アサシンを入れていたのは、万が一直接バトルを挑まれた際の警護の意味。
それと移動力を補足する人員としてです。
召喚は破壊力が破壊力だけに、人間の攻撃としてはかなりの戦力となります。
ので、魔法使い系のジョブなのに、よく敵の真っ只中に放り込んだりで(笑)
ある程度の移動力が欲しかったのです。でも前線送りはどうかなあと自分でも思います。
すぐさまナイト隊やらヘビーアーマー隊が盾に入れるようにはするのですが。
結構ずけずけ前に出してしまいますので、きちんと守らないとなのです。
とまれこうまれ。今日はうにくんのお話です。
おばかさんであまえたさん。けれどふと気付いた、この子の無言のかなしいこと。
それをこっそり書いてみることにしました。
あとあと、もう一つこっそり、こないだの十匹計画第一段に修正入れておきました。




『幸福な夢追うひとをくるむ天球はねぶとん』
(バハラグ。ドラゴン十匹計画。隻眼のあまえたさん)

 空を舞っていた。ほんの。ついさっきまで。ぼんやりと風を切る感覚を思い出す。その子はよく、偵察任務を課せられていたものだから。そして今回も危険な飛行を終え、異世界の魔物による侵攻の程度を確認し、帰還してきた。なので今は、漸く翼を休めて休憩中。けれどその子は、ただぼんやりとしているだけだった。元来ひとつきりしかない大きな瞳を、瞬きもせず、ただ空を見やっていた。
 いつもならば、任務を終えたその子に誰もが声をかけ、労をねぎらう筈なのに。このたびに限っては誰も声を発しようとはせず、またその理由を訊ねようとはしなかった。
 偵察飛行に出たのは一人と一匹。戻ったのは。一匹。


「うにむ」
 さくり、と軽く草を踏む音。優しくかけられるその声は、いつもならその子がすぐに飛びつきかかるくらいに、大好きな人のもの。だのに今、その子は、まるでまどろんだように霞んだ視線を、けだるそうに彼へと向けただけだった。ビュウはそれに気付かないわけがないのに、やんわりとした微笑をそのままにしていて。ただ少し、ちくりと一瞬眉をひそめただけだった。
「偵察ご苦労様。報告もきちんと受け取ったよ。よく頑張ったな」
 ビュウにだけ出来るのだろう、どんなドラゴンでもついつい擦り寄ってしまう撫で方でゆっくりさすってやっても。そしてどれだけ柔らかな口調で包んでやっても。どうしてもムニムニは自分から甘えてこようとはしなかった。普段なら、全てのドラゴンの中でも一、二を争うあまえんぼうなのに。
 ただただ、その子は。遥かに茫洋とした空を見つめるばかり。

 そんな様子を見て、ビュウは遂に、感情を隠し通すことが出来なくなってしまった。穏やかな笑みをはらりと脱ぎ捨てて、苦渋と哀惜に満ちた蒼い眼を痛ましげに伏せた。
 そして彼は、出来うる限り両腕を大きく広げて、ムニムニを抱き締めるようにしてやると、力強く、一言口にした。
「お前は悪くないよ」
 たったそれだけの言葉に。短くも、鋼の剛健さをもってドラゴンを護ろうとするような声音と腕に、ムニムニはかあっと大きく隻眼を見開いた。
 おおきなおおきな、ひとつきりの視界に。その子がただ見ていたものは。


『いつか、ドラゴンになるのが夢なんだ…!約束するよ!お前と!』
 ちょっと照れくさそうに、秘密めいて話してくれた、明るく笑う人。どういう意味なのか、その子には正直よく分からなかったけれど、ただクルーがとっても楽しそうに約束してきたものだから、その子もうきうき嬉しくてたまらなかった。
 約束以後、その子とクルーはとても仲良しになり、度重なる偵察任務にも一緒に赴いた。一人と一匹きりで空を舞うたび、彼は繰り返しわくわくしながら夢を語った。その内容はやっぱりよく分からなかったかもしれないけれど、それでもその子もどきどきしていた。
 だからムニムニもこっそり約束していた。
『キミがドラゴンになれたなら、ボクと一緒にたくさん飛ぼうね……!』と。
 人と、竜では。なかなか上手に言葉は通じない。だからお互い、それは擦れ違いな遣り取りだったのかもしれない。けれどもおかしな一人と一匹は、とびきりの仲良しだった。

 けれど今日。いつものように翔けて行った空。偵察任務。未知の敵の趨勢を探るため。そこで一人と一匹は、苛烈な追撃を受けた。全てが謎に包まれた敵の術や技、それに翼。たった一匹のドラゴンで倒すことが出来るような相手でも数でもなかった。その状況を打破する唯一の方法は、ただ一心にその場から逃げ去ることだった。
 危険なのはいつものことだったから。一人は、一匹を駆ったまま、そっと呟いた。その子は必死に翼を動かし、風を読み、降りかかる魔法の刃をかわし続けていた。偵察の内容は、万が一の事態に備えていつも紙に記されていた。もしクルーが口頭で報告できないような状況に陥った場合でも、支障をきたさないように。そのことをぽつり、とムニムニに対して再度確認してきたクルーに、その子は気が気ではなかった。そんな命令なんて、はなからないものだと思っているのだから。その子はただ、何とかしてこの一方的な戦闘を回避し、安全なおうちに戻ることだけを考えて飛び続けていた。自分の体に少しずつ傷が増えていっても、そんなのどうでも良かった。
 ぐんぐん速度を増して、仲間の待つ艦へまっしぐら。もうすぐ。もうすぐ。その言葉だけがぐるぐると頭の中を回って、他のことは分からなくなってきた。あと少しで、あの雲を抜ければ、遠くに艦影が見える筈。そしたらこんなやつらすぐにやっつけて、それから、それから――
 その子の翼のすぐ側で、空が爆発した。

 途端に風が向きを変える。羽が気流に持っていかれそうになる。体が揺らぐ。
 次の瞬間、背中にいた筈の仲良しが、目の前の宙に浮かんでいた。

 それはそれは不思議な光景だった。根無し草のラグーンが浮かぶ、果てない空。オレルス。その只中に、翼持たない人間がぽっかりと飛んでいるのだから。
 けれど翼無きものが空に飛び出してどうなるのかなんて、結果は明らかで。
 今までにないくらい、限界まで開かれた大きな瞳が、瞬間、クルーと視線を繋げた。感覚が痺れたように動けない一匹の仲良しに、一人の仲良しは、微笑んで見せた。いつも彼が空で夢をきらきらみつめていた、あの笑みだった。ギャアギャアと耳障りな鳴き声が、彼の影から膨らむように響いてきた。
 唇が動いた。微笑をそのままに、幸せそうに目を細めて。仲良しに向かって。
『いけ』

 それからどうなったのか、その子はぼんやりとしか思い出せなかった。いくら考えようとしても、記憶の糸をたぐろうとしても、浮かぶのは仲良しとの楽しい時間だけだった。
 だからその子は知らない。世界がひっくり返るような速度で、倒れるようにファーレンハイトまで帰り着いたことも。空が裏返しになるような速度で、仲良しが落ちていったことも。すぐさま視界から消えたはずのその体が、大きすぎるその子の瞳には、無慈悲な爪が貫き、切り裂き、真っ赤な華がぱあっと飛び散るように開くのまで見えてしまったことも。
 何も知らない。分からない。分かりたくない。

 そんなドラゴンに、大好きな人は囁いた。きつくきつく抱き締めて、強く強く言い聞かせるように。
『お前は悪くないよ』
 その言葉に、漸くムニムニは、全てを理解した。


 ほとほとと大粒の涙が次々と零れ落ちてくる。ひとつきりの瞳だから、一度に零せる涙は一粒きりだけれども、尽きることなく溢れてくるころころとしたものは、すぐさまビュウの金髪を濡らしてしまうくらいだった。
「――よく頑張ったな。よく、我慢してたな」
 もしボクがれらんみたいに速ければ、落ちてゆく仲良しを拾い上げられたかもしれない。
「でも悲しい時はうんと泣くんだ。それで、その後は、少し元気になろう」
 もしボクがるあろすみたいに賢ければ、あの時咄嗟に動けたかもしれない。
「佳い子だ。佳い子――お前は佳い子だよ」
 もしボクがぱさいるみたいに力が強くってとるらみたいに魔法が得意でひいゆみたいに――
「お前はお前。佳い子。お前は絶対に、悪くない」
 なおもぽろぽろと声もなく泣き続けるドラゴンを、ビュウはしっかりと抱き締め続けていた。人間に対してすっかり甘える癖のあるこの子が、よく見えすぎる目を持ってみてしまった、残酷な別れ。それによりどれだけ傷つき、悲しみ、突然のことに悲しみ方さえ分からないでいたことを、ビュウは痛いほど感じていた。彼自身の行為と声が、どれだけ愛竜にとって慰めになるのかなど知る由もないけれど。どうしても。こうしないではいられなかった。
 繰り返し、繰り返し佳い子だと呼び。小刻みに震える体を撫で続け、お前は悪くないのだと言い聞かせ続けた。それはビュウの嘘偽りの無い本心であったから、自信を持ってそう口に出来た。
 それはゆっくりではあったけれど確かに効果を見せて。少しずつ、少しずつ涙はおさまっていった。ほのかにあたたかな腕と、その子の大好きな声が、幾度も幾度もだいすきだと告げてくれているようだったから。その感覚は、あまえたさんな子にとって、やっぱりとんでもなく嬉しいものであるから。限りない愛情に包まれて、やっと安堵出来たその子はまたぼんやりと考えた。今度はちょっと、赤くなった目を細めて。


 ねえ、もしキミがドラゴンになって帰ってくることが出来るのなら。ボクと一緒にビュウの側にいようね。ビュウならきっと、ボクらにうんとうんと優しくしてくれるから。たくさんしあわせに飛んでいられる。約束どおりに。
 ほんとだよ。ビュウの側なら、ボクらみんなしあわせにいられるから。
 だから今はお空の雲をおふとんにして、ちょっとだけおやすみしてさよならね?


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