ふつうっぽい日記
もくじ過去未来


2007年11月27日(火) ある市民の感情曲線

学校現場でのボランティア。
子どもと関わるというのが内容。
対象は市民。

「負担」とは何か。

ある人にとっては、交通費を負担せねばならないことで、ある人にとっては、活動日誌を付けること。


「初の試みです」
「皆さん、学校からの反響は予想以上です。学校にとっては競争率は2倍です。どうか皆さん、無理のないように頑張って下さい」




よく分からないまま、現場へ派遣された。


たしかに、現場では歓迎を受けた。

でも。
「何か質問は?」と言われ、そこまで高まっていない現状で何が質問できるんだろう。

「やってみないと分かりません」
そう言ってみた。

そしたら、「やってみてからだね」と所属長は言った。


「参考になるような本とかあれば貸して下さい」と言えば…

経営案集と新任教師のための手引きだった…



税金で運営される場に、民間人が入る。市民が入る。
補佐的な事をする。

人を遣う事、負担じゃないですか?
本当、私、役立ってますか?
プライド傷つけてませんか?あなたの教員としてのプライドを。


派遣元に「資格とかそんなのないのに、いいんですか?こんな感じで。初の試みなのに、報告書とか書かなくてもいいんですか?不安とか知っておかなくていいんですか?」と伝えた。

すると、現場の職員やボランティアに負担をかけたくないから、日誌は不要です。
学生サポートの例で進めていまして、学生にも日誌は書かせていないもので…
学校とコチラも活動開始と終了の簡単な報告、それだけです。
とにかく、週2回がきついなら1回にしてもらうとか、負担にならないことを第一に…
そんな感じでいいですかね…
何かあれば担任、教頭、校長に相談を…
あまり難しく考えずに無理せずに…
また何か不安があれば遠慮なく…


その程度のスケール。


来年度は、増えるのだろうか?
継続更新とか、ありえるのだろうか?


現場はスゴい!
楽しい!

自分のため。
そして、子どものために。
教養を広げよう。

あてになる大人になろう。



2007年11月08日(木) 「天国と地獄って本当にあるとかいな?」

今日は、天気もよかったので現場まで自転車で行った。
途中途中で、時計を見ながら、約30分くらい見ておけば到着するような感じだった。

学校の周りの道は少し狭い。
自転車置き場に近い門までは少し遠い。
まぁその内慣れていくかな。

本来は10時から2時までなのだが、今日は10時半から3時くらいまで活動。
所属長は、出張で不在。
玄関に配属クラスの女子が何人かいた。
「早く早く」
15分の中休みの時間帯で、職員室に行くと少し先生方がおられた。
持参したマイカップを洗うついでにそれでうがいをした。
時間の余裕もそんなになかったのでお茶は取らず、教室へ。
間もなく図工の時間が始まった。

なかなか集中できない「彼」
彼は、多動の傾向がある。衝動的に暴力や暴言を発する。
少しずつ少しずつ、自分の思いついたところから版画の木版を彫る。
「三角刀が一番使いやすい」と、多少広い場所でも三角刀で彫る。
まぁ、決まりはない。

3、4度目かの休憩が終わって(彼は「疲れた」と言って、後ろをみてしゃべったり隣の子にちょっかいをかけたりする)「ボクの家には秘密があると。それもイヤァ〜なひみつ。」
「何?」と彼に聞く。
「○○(配送業者)と電話番号が似ているか知らんけど、名前も言わんで電話をかけてきて、勝手にしゃべりだす。この前なんか、歯磨きしている時にかかってきて、ボクが出たら何も言わんで切れた」


そして、また何度かの休憩の後に、「ボクが生まれた時、白目剥いて気を失っていたってお母さんが言いよった。腕になんか刺していたやつが取れて、血がたくさん出とったって。
おじいちゃんは、右手が一時動かなかった時もあるっちゃが。ボクは頭を縫ったことがあるとゼ」
隣の席の女子が「アナタ、本当にケガすることばっかりしてるのね」
そして、何やらゲームの話を近くの男子と一緒にしゃべり始めた彼。
隣の席の女子は「私なんてピコピコするゲームはしたことがないよ〜DSはお父さんが持ってるし」彼は「お父さんの名前なんて言うと?」女子は「ノーコメント」。
彼は「ゲーム買ってくれって頼めばいいのに。」女子は「だって、使わないから欲しくないんだもん。それにお父さんが持っているから2つもいらないわ」

そして、また作業に戻り、ふと、「天国と地獄って本当にあるとかいな?」
続けて、「多分、オレが思うに悪いことばかりしていたら地獄に行くっちゃん」


---

前回の給食時間、彼は騒動を起こし、しばらく尖っていた。
今日の給食時間は、落ち着きはなかったものの、大きな騒動もなく時は流れた。
今日の昼休みは、学校内の施設の紹介を女子2名がしてくれた。
ざっと、所属長から案内は受けていたが、子どもからの説明も有意義だった。
「先生は知らないかもしれないけど、ウチの学校には障がいのある人たちのクラスがあるんデス。」

施設紹介の時間を終えて、教室に戻ると、「はないちもんめ」が男子2名と女子4名くらいでされていて、その中に私含めて3人は仲間入りした。
予想通りに、私は取り合いになり、何度もジャンケンをすることになった。
教室内には、担任の先生もいて、ノートの添削などの雑務を立ちながらこなしていた。
途中「ちょっと、うるさすぎです!」と声をかけられた。
来週は、外で遊ぼうと思った。

--
その後、ティームティーチングスタイルの算数の時間。
評価テストというのを子ども等は、受けて、終わった子どもは別の教室(TTルーム)に行く。
途中から私もTTルームに行って、邪魔をしないように様子を観察した。
なかなかテストができない子は教員の声かけや説明を受ける。
やがて、TTルームの席は埋まっていく。
TTルームではそれぞれの課題プリントをこなす。プリントは後方のラックに順番にセッティングされていて、ファイルに綴った自分の計画表に合わせてプリントを出し、問題を解き、自分で答え合わせをして点数を集計シートに記入して、次の課題に進んだり、同じ問題を100点が取れるまでやったり、速くできるように挑んだりする。
そのプリントの枚数を時間の最後に教員が尋ねて、○枚以上何人、最高何枚と黒板に記録される。

「彼」はTTルームに来たものの、落ち着きなく友達にちょっかいをかけたり、ウロウロして課題には挑まなかった。取りあえずは、担任からは教室の様子を見守って欲しかったと言われていたので学習支援等には関わらなかった。

そして、帰りの会へ。
彼等はその後、クラブ活動でそれぞれの場所へ行く。
帰りの会では、明日持って来る物の伝達などで、子ども等はそれを連絡帳に書く。
彼は教師の机の上でそれらをメモっていたようだった。
やがて、終わりの挨拶。
彼の頭をポンポンとなでた。
途中まで一緒に階段を降りていき、私が「じゃ、またね」と手を出すと、彼もまた小さな手を広げて、私の手にタッチしてきた。「オう!またなっ!」

一応、今日の私の見守り中は、大きな騒動は起きなかった。

--
活動して、今日で2回目。
特にレポートや報告書を書く、という流れはないのだが、何かに書き留めて記録を残しておこうと思う。


2007年11月07日(水) ガリレオを見てないことだって、たいしたことじゃない。

「オレも大阪行ったことあるで」
彼は、聞いてないフリしてしっかり私の自己紹介を聞いていた。
それは、図工で彫刻刀で木版を彫りながらの台詞だった。
「大阪のどこ?」
「大阪府」
そのあたりが無邪気である。
子どもらしい。

別の子どもが言った。
「ワタシ、親に怒られたことも、叩かれたこともないよ〜」
それを聞いていた彼は「ウソやん。信じられへん。母ちゃんにバカ!って言ったら絶対に怒られるよ」


彼は、おじいさんと母親の3人暮らし。
おじいさんと母親はたいそう、厳しく彼を教育しているようだ。
家庭の教育力が低下、と言われている中、ちゃんと子どもと向き合っているのだと思う。
それが情報や価値観が多様化している社会の中での、本来の姿、なのかもしれない。
有害と言われるメディアには遠ざけ、環境も気にかけて。
そこまでできる親の力は感心。

また別の子どもが言った。
「昨日の、ガリレオみた?」
「見た見た」という声や「ビデオに撮った」という声。
それはドラマである。
彼は「ガリレオって何?ああ。ドラマや。なんだ、ドラマか(けっ…)」
「お前、見とらんとや〜?」

おそらく彼の家ではドラマの類いは見せられてはいないのだと思われた。

彼はぼそっと言った。
「オレは世界一の王様だ。」

私は週2回、ボランティアで彼の学習支援に関わっている。

初めの一時間は、グループ学習で状況が分からない私は、文句をとくに言うでなく助言をするでなく、耳を立てて彼等の言葉を聞くことに集中した。
次の時間が図工だった。
まだ未熟な手先。
手元は危なっかしい。

彼等の間で彫刻刀で削ったカスの長さを競うのがブームらしかった。
木版の裏面で「練習」することは許されていて、練習を楽しんでいた。
「ちょっと、先生も練習してもいい?」と聞くと、「ええで」と彼は言った。
一応、大人。
一応、手先は普通に操れる。彼は、私の手元をしっかり見ていた。
削りカスは彼の記録を更新。
彼は「スゲー」と言った。
「オレ様」な彼から褒めの言葉をもらえるとは思っていなかった。
それを見て、頑張る彼。
やはり不器用な結果になるのだが、その削りカスの形をみて、「長くないけど、鳥に似とう、ここ、ここ」と私に見せる。「ホンマや」と私も認めた。

やがて図工の時間は終わり、片付け。
机の上には誇らしげな削りカスがいくつもあった。
彼はそれを「取っとく」と言って、筆箱に大事そうにおさめていた。
「これも、取っとく?どうする?」と言えば、「それは、丸い形で面白いけん、取っとく」と筆箱にしまった。


個性とはなんだろう。

ガリレオを見る環境にある子ども。
それを見させてもらえない子ども。
ガリレオを見てない子どもに自慢する子ども。
見たいとも親に言えない子どもの辛さ。
厳しい保護者のもとで暮らす子ども。
いたずらをするけど、しっかり怒られて、謝る子ども。
親の前では「いい子」でいたい子ども。

全てが彼のような家庭環境だったら、厳しい保護者の元で育つ子どもだったら、おそらく「問題」は表に出ないのだと思う。
ガリレオを見てないことだって、たいしたことじゃない。

厳しすぎるのと厳しいとの境目は、見えない。
そしてそれを教育者といえども指摘されるのはプライドが許さない(そう思って欲しいと願う)
厳しかったかも?と振り返って分かるセンスはきっと親にもあるはずだ。

問題はそこじゃない。
きっと。


KAZU |MAIL