こしおれ文々(吉田ぶんしょう)
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2007年08月16日(木) |
吉田サスペンス劇場【夏美】 第6話『必要なもの』 |
吉田サスペンス劇場【夏美】 第6話『必要なもの』
大学生殺害の重要参考人だった35才の主婦は 容疑者となり書類送検されることとなった。
その後の捜査で 死体解剖により大学生の性器から 別の人間の体液が検出され、 主婦のDNAと99.98%の確立で一致した
家族は最後まで無実を訴えたが 犯行現場となった大学生の部屋から多数検出されたの指紋、 99.98%同じDNAの検出、 この2点から結果を覆すことは困難であった。
結局二人の関係はわからないままだが、 テレクラにデリヘル、 素性を知らない者同士が出会い、 性行為に及ぶルートはこのご時世ではいくらでもある。
警察の見解は以下のとおり。
被害者は自宅に容疑者を招き入れ性行為に及ぶ。
行為後、何らかのきっかけにより主婦が逆上し、 被害者は鈍器のようなモノで後頭部を強打され、 まもなく死亡。
容疑者は逃走し、いつもどおりの生活を送るが、 罪悪感にさいなまれ事件から一週間後、 自ら命を絶った。
状況証拠ではあるが特段筋道に問題はない。
また、主婦の保有していた口座を調べた結果、 最高で二百万円程度あった残高が ここ2ヶ月の間に数回にわたり数十万円単位で引き落とされ、 残高がほとんどなくなっている。
ギャンブルもしくは衝動買い等により貯金を使い果たし、 困ったあげくに風俗もしくは売春で工面しようとしたが、 客として出会った大学生を殺害してしまった。
筋は通っている。 筋は通っているのだが、 今ひとつ腑に落ちない。
言い方を変えれば、 筋が通りすぎているのだ。
警察の見解では突発的で無計画な殺人となっているが、 まるで主婦が大学生を殺すためのストーリーが 事前に出来上がっていたかのようだ
【誰かが主婦を殺人犯に仕立て上げた】という可能性も 決して否定できない。
現に大学生の後頭部を正確に2回殴った謎は いまだ明かされてはいない。
しかし、主婦と大学生を繋ぐ糸が見えない以上、 その糸を繋いだ【誰か】を見つけだすのは到底不可能である。
結局いまの私に出来るは、 主婦が犯行に及んだ経緯を 【筋が通りすぎている】と思わないことだけである。
なぜなら、 私を含めた『警察という組織に必要なもの』は、 犯行に及んだ経緯に【論理的に問題のない犯人】だけなのだから。
2007年08月15日(水) |
吉田サスペンス劇場【夏美】 第5話『重要参考人』 |
吉田サスペンス劇場【夏美】 第5話『重要参考人』
友人から大学生殺人事件の話を聞いてから 数日たったある日、 私は再び友人に呼び出された
『忙しいところ悪いな』
彼の顔を見てすぐ、 明らかにいつもと状況が違うことがわかった。
『いきなりどうした?今月は負け込んでるから金ないぞ』
借金の話じゃあない この前話した大学生が殺された事件覚えてるか?
『あぁ、不思議な事件ってやつだろ。 犯人は見つかったのか?』
犯人とは決まっていないんだが、 重要参考人であることは間違いないな 『ふ〜ん 俺を呼び出すことと関係あるのか? そういや指紋があるんだよな 重要参考人ってのはその指紋の持ち主か?』
あぁそうだ 警察本部のデータにしっかり残ってたよ ただしすでに死んでるんだよ
『なんだ 生き返って殺したとでも言いたいのか? まだホラー映画の時期じゃないぞ』
都内に住む35才の主婦だよ この前○○海岸で自殺してるけどな
『おい!それってまさか・・・』
そのまさかだよ 犯人だとしたら大学生を殺して一週間後に自殺ってことか
『主婦とその大学生につながりはあるのか? 知り合いなのか?親戚って事はないだろ? そもそも大学生を殺す動機はなんだ?』 いいから落ち着けよ それを今から調べるんだろ 被害者が持っていた携帯電話に主婦の番号は登録されてないし 電話会社に問い合わせたところ電話かけた履歴も残ってない 現時点で被害者と主婦のつながりはわかってはいない
『その辺の主婦がなんらかの衝動で殺したとすれば 指紋がベタベタ残るような素人くさい犯行現場の状況も つじつまが合うってことか』
なおかつ衝動的で無計画な犯行であるからこそ 犯行後精神的に追いつめられ、挙げ句の果てに自殺した あくまで状況証拠でしかないけどな
昨日まで普通の生活を過ごしていた主婦が 理由もなく面識のない大学生を殺すわけがなく、 そこには必ず両者をつなぐきっかけと 大学生殺すに至った動機があるはずである。
この国の1/4の人口が住むこの街で いままで交わることもなかった糸が 突然何らかのきっかけにより交わることがある。
その交わりが引き起こす犯罪は 結局は私利私欲から生まれる憎悪や遺恨がもたらす。
つまり、一見すればただの偶然でしかない事由は 私利私欲からの必然的な結果でしかなく 神がかった【運命】とはまったく別次元なのである。
ただし、その必然性の中で 初めから二人の行く末を全て操っていたとするならば 【夏美】とはある意味神に近い存在であるのかもしれない。
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