samahani
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2004年10月25日(月) |
さすがにプロだなと思った人 |
地域のボランティアグループ主催のお料理教室に参加した。講師もボランティアであるから、本職がある。20年以上前からアメリカに住み、大学で教育学も修めたという今日の講師、ヒロミさんの本職は、「通訳」とのことだった。彼女はもともと料理好きということもあるけれど、ご主人の仕事の関係で一度に30人とか40人とかの大人数を自宅に招いてパーティーをすることもあるそうで、手際よく短時間に何品もの料理を作ることができる。サーモンのキッシュ、白菜のサラダ、マッシュルームのリゾット、豚ヒレ肉のトマトソース煮、デザートの林檎のケーキまでが、本当にわずか1時間で出来上がった時、参加者から感嘆の声が上がった。
けれども私はそれ以上に彼女に感心した事があった。彼女が完璧な日本語を喋ることである。日本人なんだから当たり前と思われるだろうけれど、決してそうではない。ヒロミさんのご主人はアメリカ人だそうだけれど、大学生の頃からアメリカに来ていてアメリカ人と結婚しているような多くの人は、当たり前のように英単語交じりの日本語を話す。そういう単語が分からなくて、私は、クヤシイとか悲しいとかいう気持ちになることが間々ある。
英単語交じりの日本語を話す人には2種類あって、ひとつは簡単な単語でも英語で言う人。例えば、こんな人。これはただの“カッコウツケ”である。そういう人ってちょっと笑えるけど、こっちは、余裕だ。 もうひとつは、私の息子もそうだけれど、難しい単語だからこそ英語で言う人。英語でその単語を覚えたから、それに相当する日本語を知らない。または、英語で言い慣れている単語なので、しばらく考えないと日本語が出てこない。アメリカに長く住んでいると、だんだんこうなってくる。
最近、息子と会話していて、ときどき交じる英単語の意味が分からなくて「何それ? 分かんないよ」と訊いても、「僕も、これの日本語、分かんないよ」と言われ、会話が成り立たなくなってしまうことがある。そんなときはすぐに辞書を引いて、日本語でなんと言うのか調べれば、彼の日本語も完璧になるのに(もちろん反対に私の英語も上達するのにとも言えるのだけど)、まだ日本語に危機感を抱くほどではないらしく、そのつど辞書を引くようなことはしない。
そういう言葉の一つ一つを、きっちり意識して、日本語を日本語として話せるヒロミさんは、さすがにプロだと思う。
だってね、日本人と日本語で話をしているのに、難しい英単語を使われるから、話が分からないなんて悲しいよ。喋っているほうは、気づいていないかもしれないけど。
お料理教室の帰り、高速道路を運転しながら、一緒に行ったユウコさんと、「今日はとっても楽しかったね」と話していて、それが習ったお料理の所為だけではないと気づいたとき、通訳だから言葉に敏感なだけでなく、おもてなしの基本マナー(参加者のことを気遣える)を心得ているヒロミさんのことを、素敵な人だなと思った。
べン・バウンダーさんと日本語のレッスンをするために、ボーイング社のオフィスに出向いているのだけれど、最初の頃 私は、受付のおばさんにいつもクスクスと笑われた。「さとこは、いつも走ってやってくるね」と言うのだ。遅刻しそうだと思わず走ってしまうのだが、余裕のあるときでもやっぱり私は走っている。受付簿に名前を書くときも、IDを提示するときも、せかせかと忙しそうにしている私に、「ちょっとくらい遅刻しそうでも、走らなくってもいいのに」と、小錦くらい太った黒人のおばさんに言われ、ああ、私ってやっぱり日本人なんだなあと再認識できたことが、(笑われてるのに)ちょっと嬉しかったりする。
夏休み前、夫のオフィスの近くに出かけていたので、「お昼まだだったら一緒に食べない?」と電話したとことがある。私は、オフィスとはホワイトハウスをはさんで反対側にいたので「10分ほどで着くよ」と言ったものの、工事中で、廻り道しなければならなくなった。走って持ち合わせ場所に行ったのに、夫はまだ来ていなくて、きょろきょろと夫の居るビルの方を捜していたら、夫が社長出勤ですか?というような悠長さでゆっくりと歩いてこちらに向かっていた。
「どうして遅刻しているのに走らないの?」と言うと、「アメリカでは走ってはいけないんだよ」と夫は答えた。(まさかぁ!? 学校の廊下じゃあるまいし)と私は思ったけど、夫が言うには、走っているところを見られたら、大物と思われないからダメなんだそうだ。(私なら、遅刻したら走ってきてくれたほうが好感持てるんだけど・・・)
「あなたも、偉くなったのねぇ」と言うと、夫は、てへっ(^^;;)と照れて「そんなことないよ」と言った。(あのーぉ、褒めてないんですけど??)
プレゼンテーションでも普段の態度でも、いかに自分をアピールするか、いわば自分が商品、高く売るってことが大事なのだとか。 ふーん、そうなのかと分かったような分からないような気持ちだったが、そうやって見てみると、どこにも走っている人なんていないのだった。
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