愛より淡く
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☆正解者には「女体盛り」
新しく始まった古館伊知郎氏司会のクイズ番組に出場していた。
ルールも何もわからないままに気がついたら出場していた。
いろんな色のワインの入ったワイングラスが飛んできて、それをクイズの参加者が必死で受けとめていた。
わけのわからないままに私も、マスカット色のワインの入ったワイングラスをキャッチしていた。
「あのこのあとどうすればいいんですか?」
と、となりにいた、派手な巻き髪の50代の女の人に尋ねてみた。
「さあ私もようわかりませんねん」
と言われてしまった。なんじゃらほい。
そうこうしているうちに古館伊知郎氏がクイズを読み上げた。
答えがさっぱりわからなかった。
向かいのバイオレット色のワインの入ったグラスを持った金髪が全然似合っていない40代の女の人が叫んだ。
「女体盛り!!」
間髪入れずに古館伊知郎氏が叫んだ!!
「大正解!!!」
するとどこからろもなく巨大な「さしみ盛りの船」が運ばれてきて、見るとその船の上にはさしみではなく、ビキニ姿のぴちぴちギャルが乗っていた。
「正解者のあなたにはもれなくこの女体盛りを差し上げます。ご自由にご賞味ください」
古館伊知郎氏がハイテンションで叫んでいた。
なんなんだろうこのクイズ!ととまどっていると、すでにもう次の問題が読まれてしまっていた。
「その昔大ヒットした、毎回家族がお月見をしながら言い争いになって終わる究極のホームドラマ月はなんでもお見通しの主人公を演じた俳優の名前は?」
斜め向かいのごっつ厚化粧の30代女の人が叫んだ。
「田中健!」
「おしーーでも違う。田中健さんは、主人公の弟でした」
と、思いっきりオーバーに残念がる古館氏。
何を血迷ったのか次の瞬間、私は叫んでいた。
「ガッツ石松!!」
すかさず古館氏も叫ぶ!!
「大正解!!」
するとどこからともなく森の石松に扮したガッツ石松氏が現れた。
「正解者のあなたにはもれなくガッツ石松さんを差し上げます。おめでとうございます」
☆それでも妻は牛乳を買わない
ボクが仕事から疲れて帰ってくると
妻は
「おかえりなさい」
の代わりに
「牛乳は?」
と たずねる
ボクは我が家の牛乳係
毎日牛乳2パック
毎日牛乳2パック
買って帰るのが役目
うっかり忘れてこようものなら
妻の発作が起きる。
「牛乳!牛乳!」と叫びながら走る
家の周りを三周半
その後何事も無かったように
落ち着きを取り戻すけれど
夜になると
「あたしは牛乳がないと生きてゆけない、生きてゆけない」
そう寝言でぶつぶつくり返す。
ボクは我が家の牛乳係
毎日牛乳2パック
毎日牛乳2パック
買って帰るのが役目
時々ボクは思う。
ああ妻よ。
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ありがとうございましたゥ
2003年02月27日(木) |
深層心理? 自分の中の母性と女 |
どこかの駐車場に止められた車から、
とある往年のアイドル歌手が出て来た。
「あ、おかあさんだ!!」
彼女を見るや否や思わず
そう声をかけそうになる自分がいた。
夢の中で、自分は彼女を母親だと認識していた。
夢の中での彼女は、遠い昔に自分を捨てた母親だった。
彼女は、こちらをちらっと見たけれど、気づかずに行ってしまった。
遠い昔に捨てた我が子のことなど、もう忘れてしまったようだった。
女として輝いている彼女の
屈託のない笑顔があまりにまぶしく
そして
哀しかった。
その夢の中で私は
捨てられたことよりも、忘れ去られることの方が
もっともっと傷つく
子供心というものを
思い知った。
私は、夢の中だけの幻の
母親の後姿に別れを告げた。
雨のしとしと降る駐車場の片隅で。
テレビを見ていて、あるシャンプーーのCMが流れた時に、夫が急に思い出したように言った。
「そういえばお父さんには、学生時代にモデルのガールフレンドがいたんだ。ものすごーーーく可愛かったんだぞおぉぉぉぉ。」
下の子は、「うっそだーーー」と信じなかった。
上の子は、ゲームボーイに夢中で聞いていなかったので無反応。
「うそじゃないよ、テレビのコマーシャルとかにも出ていたんだぞ」
「いっしょに歩いていたら、みんな彼女の方ばっか見るんだ。すっごいすっごい可愛い子だったから、まあそうだろうなあ。なにしろお父さん、あの頃は、気が狂ったようにめんくいだったからなあ。」
としみじみと言うのだった。
なんだか、なんだか、またまた、おもしろくなかった。
そばに私という伴侶がいながら、そんな話をするなんて、なんというデリカシーのないやつ!!無神経にも程があるんじゃあーーりませんか?
私は、私は、少なくとも子供たちの前で、昔好きだった男の子の話をしたことなんて、一度もなかった。ってまああたりまえ?
子供たちが寝に行ってから、私も何か言い返してやらねばと思って、あれこれ頭の中で過去の出来事を検索していた。
すると、あ、あった。
「ねえねえ。社員研修の時にいっしょだった埼玉のAくん覚えている?」
と夫に話しかけた。
「ああ、ああ、あいつな」
「私な、あの人の友だちに、実はAくんあなたのこと思って、夜も眠れないほど悩んでいるんだよ、わかってあげてねって、打ち明けられたことあんねんで。この私にも、私にも、夜も眠れないほど思ってくれる人がいたんやで〜」
そしたら夫は、ボソっとこう言った。
ふうん、変わった奴だったんだな
それからなぜか、その時私やAくんといっしょのグループだったIさんの話になってしまった。
「いい女だったよな〜Iさん」
そうなのだ。Iさんは、ちょうどあの、「少し愛してなが〜く愛して」のCMの頃の大原麗子さんを雪国生まれにしたような美人だった。
彼女とは研修の間、何度か同室になったことがあるのだけれど、 なんだか、女の私でもムラムラきそうなほど妖艶で魅惑的な雰囲気をかもし出していた。私はひそかに彼女にあこがれていた。
シャワールームに入った時、偶然垣間見てしまった、彼女のまばゆいばかりに美しい裸体の後姿が今でもこの目に焼きついている
なんで話がそっちにいってしまったのかよくわからないのだけれど
気がついたら、私とAくんの話は影も形もなくなっていて、Iさんがいかにいい女だったかということで、盛り上がってしまったのである。
2003年02月25日(火) |
夫を誘う年上の女(元同僚) |
あれはたしか、まだ下の子が生まれていなかった時のこと。
私は、上の子と夫の単身赴任先についていって、しばらくそこでいっしょに暮らしていたのだった。
古い木造の平屋建ての一軒家を借りて、洗濯機や冷蔵庫は、そこの近所にあったリサイクルショップで安く買ってきて使った。
家事に育児にめいっぱい、いそしんでいたころだ。
なつかしいなあ。そこは日本海側にあって、静かでよい町だった。
ある日、その家にひとりの女性が訪ねてきた。夫の同僚だという人で、夫よりかなり年上の女性だった。その人は、その昔ワイドショーのコメンテーターとしてよく登場していた音楽ジャーナリストの女性にどことなく似ていた。
用事でちょうど近くを通ったので、いるかな?と思って寄ってみた。
ということだった。
私とは玄関先で、挨拶程度の短い会話を交わしたように思うけれど、詳しいことはよく覚えていない。あいにく夫が不在だと知って、その日はそのまま帰りはった。
実は、夫はその女性から、あることにしつこく誘われていたのだ。
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仲よきことは美しきことなり、仲よきことは心地よいことなり。
仲よきことは、むふふふふふゥ あ〜快感。なり。
2003年02月22日(土) |
私が壊れるに至るまで 不思議 |
その病院は、たしか5階建てくらいの高さだったと思う。正確なことは覚えていないけど。
窓から突き落とされた時、そこは、もっともっと高いところだった。
気が遠くなるほどの高さだった。
そのような高い場所から、まっさかさまに落ちてゆく時の感覚と恐怖が、今でも生々しく残っている。
私は、途中で気を失ってしまった。
次に気がついたのはいつだろう?それがどうしても思い出せない。
記憶の破片があっちこっちに散らばっていて、収拾がつかないのだ。
どうやら私は病室のベッドの上でさまざまな幻覚を見ていたようだ。
これまで遭遇してきた全てのことも、幻覚あるいは夢であったに違いない。
そう考えるのが一番妥当なところだろう。
しかし、幻覚だったにせよ、夢だったにせよ、
自分があまりにも鮮明にそれらの出来事を記憶しているということが、今でも不思議でしょうがない。
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2003年02月21日(金) |
脅迫メール?でネット恐怖症気味 |
昨日、夫が子供たちを床屋に連れて行った後、適当に家事をすませ、
パソコンのメールをチェックしたら、妙な件名のメールが目についた。
なになに?と読み進めていくうちに、わなわなと震えてきた。
内容は、かなり脅迫めいていた。
「先日あなたが閲覧したアダルトサイトの情報料が未払いになっていますので、期日まで下記の口座に振り込んでいただけないと、家に押しかけてでも、いただきます。 その際の交通費及び諸経費もいただきますので、必ず振り込んでください云々」
というようなものだった。
私には、全く身に覚えがない。
さては・・・・・・・
と、思い浮かんだのは、夫。
きっと彼が、真夜中にこっそり鼻の下を伸ばしながら、
その手のいかがわしいサイトをこっそりのぞいていたに違いない!!
なさけなかーーーーーーーーっと頭に血が上った私は、
すぐに「チョッキンさとう(仮名^^)」に電話した。
電話するも、興奮していて、声がうわずってなかなか上手く話せなかった。
「あの、あの、子供、子供が二人いる親を呼んでいただけませんか」
なんかしどろもどろにわけのわからんことを口走ってしまっていた。
落ち着け落ち着けと自分に言い聞かせながらも、落ち着けなかった。
でも、なんとか伝えた。
すると店の人は
「ああ、お父さんなら用たししてから戻ってくると出ていかれましたよ」
あちゃーーなんという間の悪いことよ。
仕方ないので、上の子を呼び出してもらって
「ええか、お父さん迎えにきたら緊急事態やから、いったん家に戻るように言うて、わかったね、必ず家に帰ってくるんやで」」
実は、床屋のあと、父子3人で、ラーメン屋さんに行くことになっていたのだ。
待っている間に、よかならぬ想像がどんどん膨らんでいって、顔面蒼白になり心拍数もあがり、呼吸も苦しくなった。
我ながら、この大げさな性格に辟易するも、どうしようもなかった。
待つこと30分少々、夫と子供たちが帰ってきた。
「なんなのきんきゅうじたいって、いったい?」
子供たちは、わけがわからず、おもしろがっていた。
「ええから、あんたらは、ちょっとあっちにいってて」
そう言い、子供たちを向こうの部屋に行かせて
「あんたちょっとこれ見てみ」
と例のメールを見せた。
「なんだこれ!!」
夫の顔色が変わった。
「あんた、夜中にこそこそっと起き出して、やらしいサイトでも見てたん ちゃうん?」
「知らんぞ」
「ごまかしなや。夢中になって、知らん間に妙なところでも ダウンロードしたんちがうん?」
「知らんぞオレ、ダウンロードなんてしたことないし」
「無意識のうちに、ついつい押してしまうってこともありえるやんか
ほんまに身に覚えないの?」
「知らんもんは、知らん、ほっとけよそんなん」
「せやかて、払わんかったら、家に押しかけてくるって
書いてあるやんか、どないするのん」
「来たら、来たらで、知りません、って言えばいいじゃんか」
「言い合いになっているうちに、殺されでもしたら、どないすんのん」
完全にエスカレートして、すっかり被害妄想状態の私^^。
「あーー話になんねえ」
そう言い捨て、夫は部屋を出て行ったのだった。
中略
落ち着きを取り戻してから、あちこち検索して手がかりとなる情報を探るうちに、こういうことはけっこうよくあることなのだと、知った。
いわゆる迷惑メールのいっしゅのようなもののようだった。
え?遅れてますか?
こういうことは初めてだったもので、あたふたしてしまいました。
そういえば二年前にも、メールでとても恐ろしい思いをしたことがあることを思い出しました。
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2003年02月19日(水) |
私が壊れるに至るまで 殺意 |
ある時、ふと気がつくと、病室の片隅に、長身のスラリとした白衣姿の女性が立っていた。私が、目を覚ましたことに気がついたその女性は、こちらに近づいてきた。その女性は、金髪だった。
女性は、親しげに英語で私に話しかけてきた。やたらと早い英語で、何を言っているのか、さっぱりわからなかった。
にもかかわらず私は、そんな彼女に流暢な英語で応えていたのだ。
私は、自分で自分の話している英語が、さっぱりわからなかった。
にもかかわらず私は、その女性と英語で話し続けていたのである。
次から次へと驚くほど流暢な英語が出て来た。自分でも意味のわからない英語が。
私がそんなに流暢に英語がしゃべれるわけがなかった。
またもや、何かの霊が私に憑依してしまったとでもいうのか?
もしかして、憑依した霊は異国の人?
なにゆえに?
混乱しながらも、私はその女性と英語で話し続けていたのである。
その女性は、吸い込まれそうなほど深くて、どこか悲しい青色の目をしていた。
それからしばらくして私はその女性に
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2003年02月18日(火) |
私が壊れるに至るまで 逢いたい人 |
あの個室の中で起こった出来事は、いったいどれが夢でどれが現実だったのかの、区別がつかないのだ。
できる限り区別をつけたいと思うのだけれど、思い出せば思い出すほど混乱するばかりで、うまくゆかない。
個室にいた時は、「今」が朝なのか昼なのか夜なのか、全くわからなかった。
ある時、私はベッドの上で、天井を眺めていた。
私は、小さい頃から天井を見るのが好きで、ヒマさえあれば、よく家の天井を見ていた。私の見ていた天井は、木の天井で、さまざまな形の木の模様があった。じっと見ていると、それらは、何かの物体に見えてくるのだ。
また、それらの物体は、日によって全く違ったものに見えた。
渦巻状の模様がいくつも重なって、怪しげな生き物がうごめいているようで、今にも飛び出してきそうな迫力にわくわくしたものだ。
個室の天井は、たぶん、コンクリートの天井だったように思う。薄汚れていて、ところどころひび割れていた。
その記憶は、かなり意識が鮮明な時の記憶だった。
その天井をたどってゆくと
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2003年02月17日(月) |
私が壊れるに至るまで 「輪廻転生?」「絶対禁止事項」 |
☆「絶対禁止事項」
その見知らぬ女性は、私の足をさすりながら涙を流し、
「私、アナタヲ助ケマス」「私、必ラズ、アナタヲ助ケマス」
そうカタコトで何度も何度も繰り返していた。
その女性は、ひどくやせていて、肌は浅黒く、目が落ちくぼんでいて、髪はバサバサでかなりの分量の白髪が混じっていた。
この人は何者?なんでこんなところに?
いったい全体どうなっているのか、自分でもさっぱりわからなかった。
不思議に、恐ろしくはなかった。それに、彼女に足をさすってもらっていると、妙に安らいだ気持ちになれて、非常に穏やかな気分になれた。
自然に、私は、彼女に問いかけていた。
「アーユーマリア?」
彼女は、何も答えずに、ただただ私の足をさすり続けていた。
「私、アナタヲ助ケマス、大丈夫、アナタ必ズ助カリマス」
彼女は、同じことを繰り返して、私の足をさすり続けていた。
「タダシ約束ガアリマス、コレダケハ絶対守ッテクダサイ、二度ト コレダケハシナイデクダサイ。絶対ヤメテクダサイ」
彼女は、涙を流しながら、私に約束させたのだ。
私が、それ以後絶対にしてはいけないこと、それはズバリ
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☆「輪廻転生?」
自分がベビーベッドの上にいるという感覚だけが、宙に浮かんでいた。
なつかしい感じがした。遠い遠い遠い昔に、ここで眠っていたような。
あたりはセピア色のイメージだったけど、はっきりとは見えなかった。
ただ、自分はここにはいられない。いられないのだ。という思いだけが強くあって、帰りたい、帰らなくては、と、どこかであせっていた。
またもう一度赤ん坊からやり直さなければならないのかと思うと、うんざりした。もう何度も何度もこういう目にあっていたような気がしていたのだ。
あのままあのベビーベッドの上で過ごすことになっていたら、もしかしたら、今頃私はここにはいなかったかもしれない。
それではどこにいたのだろう?
黒い縁取りのある写真の中だろうか? ぞ。
あの時私の魂は、赤ん坊だった頃の私の身体に戻っていたようだった。
私は、例の二つのことばを、うわごとのように繰り返していた。
「永劫回帰」「○○ちゃん(友人の名前)」
何度目かに友人の名まえを唱えた時、ふっと、また、個室のベッドの上の自
分に戻っていた。
はっと、気がつくと、私の足元のあたりで、
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2003年02月16日(日) |
私が壊れるに至るまで 死の直前に見るパノラマ現象? |
パノラマ現象というのをご存知だろうか?
死の直前に見るものだと言われていて、幼い頃からの記憶が順を追って
まるでスクリーンに映し出されるように、次々と目の前に現れるという現象のことだ。
私もその個室で、パノラマ現象だと思えるようなことを体験した。
その時出て来た場面で、今も私が覚えていることは
缶けりをしていて転んだ拍子に、缶のギザギザが目にあたって、目のまわりを数針縫うというけがをした幼い時のこと。
「あんたいったいどないしたん」
「これはたいへんや、すぐ病院つれていかんと」
母と祖母で、二人して私の顔を心配そうにのぞきこんでいる
その時の二人の顔がありありと浮かんできた。
病院に連れて行かれた私は、手術台に上るのが怖くて、病院のトイレに逃げ込んで、なかなか出てこようとしなかった。
大人たちは、そんな私をなんとか説得して、トイレから出てこさせようとしていた。
トイレの隙間から外をのぞいていた時のことなどが、さーっと現れてきたのだった。
あとは銭湯に通っていた頃のことや、幼稚園の頃、いつもスクールバスの窓から見ていた景色で、ういろ工場の煙突から出る煙など。
そのうちだんだんとあたりが薄暗くなり、ふいにその現象は途絶えた。
次にはっと気づくと、私は、ベビーベッドの上だった。
そして
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2003年02月15日(土) |
私が壊れるに至るまで 記憶の断片 |
個室にいた時に起こったことについて、いったいどの順番に起こったことなのかは、さっぱりわからない。
だから私は記憶の断片を思い出した順にたどることしかできない。
それらの記憶の断片を文章にすると、かなり支離滅裂で意味不明のものになると思う。
しかし私は、文章が破綻するのを承知の上で、できる限り正確に自分の記憶をここに再現していきたいと思う。
個室のベッドの上、朦朧(もうろう)としている意識の中で、さかんに、二つの言葉を唱えていたことはよく覚えている。まるで何かの呪文を唱えるように。
その二つの言葉とは、「永劫回帰」と「○○ちゃん(友人の名前)」だった。
その二つの言葉を繰り返し、繰り返し、唱えていた。
あとぼんやりと覚えているのは、
「○○ちゃん(友人の名前)あんたそんなでたらめなことしてええと 思ってんのんなんたらこうらたら・・・」
という友人への罵倒だった。
私は、その友人のよき理解者のつもりだった。だけど心の底では、彼女の行為を許しがたいと思っていたようだ。そういう感情を思いっきり抑圧してその友人に接していたものだから、
抑圧していた感情が一気に噴出してしまったのかもしれない。
意識が混濁していた時は、自分が水槽の中にいるような妙な感覚があった。
水槽の中からあたりの景色を眺めているような感じだった。
とても息苦しかった。
その時の私は、自分で自分の発する言葉が、聞き取れなかった。
ある時、水槽の向こうに、ぼんやりと弟の姿が見えた。
弟が何か私に向かって声を発していたのだけど、何を言っているのか聞き取れなかった。
私も弟に向かって何か声を発していたのだけど、自分で自分の発する声すら聞き取れなかった。
音がすっかり消されてしまったという感じだろうか?
しかし
後になってわかったことなのだけど、その時私は、弟に対してもとんでもない暴言を吐いていたのだった。
せっかくわざわざ見舞いに来てくれたのに、弟はひどく気を悪くして帰っていったそうだ。
しかし、本当に本当に私は何も覚えていないのだ。というか本当にあの時は、聞き取れなかったのだ。
まさかまさか、そんなひどいことを言っていたなんて!!
自分でも信じられなかった。って今でも信じられない。ショックだった。
だけど事実なのだ。私が弟にそんなひどいことを言ったのは、消しようのない事実だった。
2003年02月14日(金) |
私が壊れるに至るまで イタコな私? |
最初は、自分が自分の意志でしゃべっているのだと思っていた。
が、どうもそうではないらしい、ということが、時を追うごとに、だんだんとわかってきた。
誰かが、私の身体に入り込んで、勝手にしゃべっているのだ!!
こういう感覚って、実際経験した人にしか理解していただけないと思うけれど、あの時確かに、自分の中に、別の誰かが存在していた。しかも男。
そのうちだんだんとその男の素性がわかるようなっていった。男の情報が、いつのまにか私の感覚にインプットされていったのだ。
彼は、修行僧だったようで、志(こころざし)半ばで病に倒れ、女を知らずにその短い生涯を閉じたようだ。それゆえに女体に対して未練ありありのようでもあった。
どうも彼は、病院の中を浮遊している間に、美・ナースを見初(みそ)めてしまったようであった。なるほど納得、お目が高い^^。
ゴーストに完全に占領されていたわけではないので、本来の私というのは、片隅に追いやられて、そのゴーストの話す言葉を聞いている。そんな感じだろうか?
そうなのだった。
あの時の私は、まるで恐山のイタコさん状態。
その後も私は、その個室にいた間中
ありとあらゆる見知らぬ霊に
憑依され続けていったのだった。
。。
2003年02月13日(木) |
私が壊れるに至るまで 夫も子どもも忘れ女に走る? |
おかげさまで私は、個室で
「美・ナース」と二人きりの夢のような時間を過ごすことができた。
私は、彼女をうっとりと見つめ
「きれいやわあ、ほんまにきれいやわあ」
と感嘆の声を何度ももらした。
そのたび彼女は、困ったような恥じらうような顔をした。
その顔が、また、気を失ないそうになるくらい、美しかった。
「今度よかったらいっしょにお食事にでも行きませんか?」
こともあろうに私は、彼女を口説き始めたのだ。
口説きながら、私は、自分があまりにもヘンなことを言っているような気もした。
なんで私が、彼女をこんなに真剣に口説いているのだろう?
しかも、ここは産科の病室のベッドの上。
しかも、私は、女。
しかも、数日前に、母親になったばかりの。
おかしい、おかしすぎる、あまりにヘンだ。
どうなってしまっているのだ私?
なんでこんなこと言うんだ私?
この美・ナースを愛してしまったとでもいうのか?
美・ナースに一目ぼれしてしまったとでも?
夫のことも子供(←しかも生まれたばかりの)のことも忘れて、この、この世のものとは思えない美しい女性に魂を奪われてしまったとでもいうのか?
あんびりばぼー!!(そんなあほな!!)
そのうち私は、私の肉体を支配し始めている、
あるとんでもない存在に気がつきはじめたのだ。
それは
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昨日のゆうがた。
ドラッグストアに買い物に行った。
オリーブオイルと
天使のお菓子「エンゼルパイ」10個入りを買って
レジに並ぼうとしたら、目薬のコーナーが目に入った。
そこでピンク色の目薬を見つけた。
アスパラ目薬とどっちにしようかと
しばらく迷って
結局ピンク色の目薬にした。
レジの女の人が
「いっしょに入れてよろしかったですか?」
と言ったので
「その日本語ヘンですよ。いっしょに入れてよろしいですか?
ではないですか」
と言いたくなったけれど、まさか、言えるはずもなく
「ハイ」と言った。
いつもいつもいつものことだ。このお姉さんの口ぐせか?
2003年02月11日(火) |
私が壊れるに至るまで 彼女を傷つけて得た甘い倒錯の時 |
個室に移るまでの記憶が、全くなかった。
後から聞いた話では、私は数人の看護婦さんにやっとこさ抑えられて、鎮静剤を打たれたようだった。
中略
その個室で起こった出来事については、どこまでが現実で、どこまでが夢だったのかも区別がつかないのだ。
全く記憶に残っていないこともたくさんあった。
記憶にないことについては、もっとずっと後になってから、母から話を聞いたのだけど。
なんか申しわけないどころの話ではなかった。たとえ全然身に覚えのない話だったとしても、大いに懺悔しなければならないだろう。
例えばこんな話
私は、親身になって私の面倒を見てくださっている主任の看護婦さんに向かって、とんでもない暴言を吐いたのだそうだ。
「あんたみたいなブサイクな看護婦さんはいらん、あのキレイな看護婦さんがええ、あのキレイな看護婦さんに来てもろて、せやないとなんも言うこときかんから」
と、あつかましくも、例の「美・ナース」さんを指名したのだそうだ。
うっそーー、な、なんてことを言ってしまったんだ私。←全く記憶がない。
その主任さん、漫才師の海原千里万里さんの万里さんに似てはったことだけは覚えているけど、神に誓って、ブサイクなんてことは全然思っていなかった。なんでそんなこと言うてしもたんやろ?
もしかしたら、無意識のうちに思ってしまっていたのかもしれない、それを理性というもので、抑えていただけだったのかもしれない。
その時の私は、理性というものを完全になくしていたようだ。本来口にすべきではない、抑圧されたものが、一気に噴出してしまったようなのだった。
「ほんま、やらしかったで、主任さんきっとえらい気悪うしはったわ。お母さんどうしてええかわからんと、えらいすんません、とあやまっておいたけどな、やらしかったで」
と、ずっと後になって、実家の母が苦笑いをしながら教えてくれたのだった。
でも、その主任さんは、嫌な顔ひとつせず、ええんですよ、今は錯乱したはるから、と、な、なんと、その美・ナースさんを呼んできてくださったのだそうだ。
ああ、主任さん、あの時の私の数々の無礼をお許しください。心より心よりおわびします。
そんなふうに私ったら、自分に都合の悪いことは、全く覚えていなくて
あの、我があこがれの美・ナースさんと個室で二人きりになれた甘い倒錯の時間だけは、
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2003年02月10日(月) |
昔の名まえで出てみます。 |
☆
「怖くて眠れなかった」
昨夜は、日曜洋画劇場「羊たちの沈黙」を観た。
噂には、聞いていたけど、ひやーー恐ろしかった
猟奇的な連続女性殺人事件を捜査中のFBIの訓練生(ジュディフォスター)が、手がかりを得るために、以前に似たような殺人事件をおこし拘禁中の元精神科医でかつ殺人鬼のレクターに協力(プロファイリング)を頼むのだけど。
このレクターさん、狂気そのものの人で、とんでもなく恐ろしい人だった。しかも頭が切れすぎるほどに切れて、度肝を抜くような方法で、二人の看守を惨殺して脱獄し、厳重な包囲網を見事にくぐりぬけ逃走するのだった。
そのシーンが、あまりにもえげつなくて恐ろしくて、思わず目を覆ったので、はっきりとは見ていないのだけど、ちらっと見た時、画面は血、血、血でいっぱいだった。
ああ。思い出しただけでも、背筋が寒くなる。ぶるぶる。
連続殺人犯役の人もそれなりに不気味で恐ろしかったけれど、なにしろ殺した女性の皮をはいで、その皮で自分の着るドレスを作っているような人なのだから。
レクターさんに比べれば、かすんでしまった。なにしろレクターさんは死体を食べてしまうような人なのだから。殺した看守の顔の皮をはいで、自分の顔にかぶってマスクにしてしまうような人なのだから。
それにしても、ヒロインの勇敢なこと。たった一人で連続殺人犯の家に乗り込んでゆくなんて無謀だとも思ったけど、さすがFBI、かっこよかった。
怖かったですね。恐ろしかったですね。それではみなさん、またお会いしましょう。さよなら。さよなら。さよなら。
ああ、できることならそんなふうに、映画終了後の淀川さんのあの名解説をもう一度聞いて、恐怖を和らげたかった。
怖かった。怖かった。怖かった。
2003年02月09日(日) |
☆私が壊れるに至るまで 死神 |
出産5日目に起こったことを、なるべく順を追って、思い出そうとしているのだけれど、どうもうまくゆかない。
二人の看護婦さんにすがりついて
「死にたない。死にたない。助けて。助けて」
というようなことを叫んでいた記憶だけは、かろうじて、ある。
その時の看護婦さんの、困惑しきった目のことも記憶に残っている。
山本(仮名)さん、助けてください。
田中(仮名)さん、助けてください。
二人の看護婦さんの名札を見て、彼女たちの名前を叫び続け、何度も何度も命乞いをしたのだった。
あの時の私は確かに死神の気配を感じていた。死神が自分の魂を奪いに来るという妄想に取り付かれてしまっていたのかもしれない。
死神が迫ってきている。ああ、助けて。助けて。怖い。こないで。逃げなくては。でも身体が動かない。助けて。助けて。苦しい。怖い。
そのうち、だんだんと意識が遠のいてゆき、目の前が真っ暗になっていった。
自分の叫び声だけが、闇の中にこだましていた。
そのうちだんだんとその声も遠ざかり、私は完全に意識を失った。
気がついた時は
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2003年02月08日(土) |
私が壊れるに至るまで 壊れる日の朝 |
出産後、眠れない日々が続いた。
私にとって、3時間おきの授乳タイムは、かなりのハードワークになっていた。 授乳室には、スリッパを脱いで入室しなければならなかったのだけれど、
その脱いだスリッパをそろえることさえ、ものすごく難儀だった。
私は、もっと強く自分の苦痛を訴えるべきだったのだろうか?
「身体が身体がホンマにゆうこときかないんです。ホンマにしんどいんです。おかしいんです。休ませてください」
でもまたあの年配の助産婦さんに 「みんなしんどいのは、いっしょや。何甘えたこと言うてるの」
などというようなことを言われるかもしれないと思うと、
弱音を吐くようなことは、言いたくなかった。妙なところに意地を張ってしまっていた。
出産後3日目から4日目頃の記憶は、とても断片的にしか覚えていない。
ずっと眠れない間、ノートにいろんなことを書き綴ったような記憶が残っているけど、どんなことを綴っていたのかは、全く思い出せない。
そのノートは、結局私の元に帰ってこなかった。
私が巻き起こしてしまった「とある騒ぎ」のどさくさにまぎれて紛失してしまったようだ。
その日の朝、いつもと違ってこの目にふれる全ての言葉が、異様な新鮮さでもって、この胸に迫ってきたのだった。
うまく言えないけれど、目にふれる全ての言葉が、この私に強く語りかけているように感じた。どの言葉も何か強烈なメッセージを放っているように思えた。
それだけでなく、文字そのものが、浮き上がっているようにさえ見えた。
全ての言葉たちが、魂を持って存在しているように感じた。
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2003年02月07日(金) |
うつろいゆくもの 春の予感 |
☆
ゆうがた。車の中で「ライドオンタイム」を聞きながら仕事場に行った。
このごろ春めいてきて、なんだかとってもよい感じ。
日の暮れもだんだんと遅くなってきて、わくわくしながらも
妙に感傷的になってしまったりして。
ライドオンタイムさまよう思いなら、優しく受け止めて、
そっとつつんで〜♪僕の♪輝く未来♪今、回り始める♪
私には、もうそれほどの輝く未来もないようだけれど。
とほほほほほほほほほほ。
なんてね^^。
交差点で信号待ちをしている時に仰ぎ見た夕陽が
とても柔らかで美しかった。
春よりも春の予感のする今頃の季節が好きだ。
春そのものも、花粉が飛ばなければ、 もっと思いっきり文句なしに好きなのだけど・・・。
今年も、甜茶エキスとしその葉エキスと気合いで乗り切るぞーーーー。
☆
行く川の流れは絶えずして、しかも元の水にあらず。
夫と二男が、縄跳びをしていた。
「昔は二重飛びなんて、何度でもできたけどなあ。だめだなあ」
と夫が言った。
「頭では昔どおりに飛べると考えていたも、
身体がそれについていていけないようだ」
なるほど。
ああ無常。
うつろいゆくものに対して、妙に感傷的になっている、今日このごろ。
最近、昔のことばっか思い出す。
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2003年02月06日(木) |
私が壊れるに至るまで 妖気 |
昨夜は、けったいな夢を見なかった。ほ。
その代わり、目覚ましの音にも気づかずに熟睡してしまっていた。
おかげでぐっすり眠れたけれど。大慌て。
以下、回想。
出産後、感覚が異常に研ぎ澄まされていったように思う。
霊感のようなものも強くなったように思う。病室で金縛りにあったのもそのせいかもしれない。
もともと金縛りには、中学生くらいから、わりとよくあっていた。最初にあったのは、お昼寝している時だった。恐ろしかった。まあ、それはおいておいて。
授乳室に行くのに、新生児室の前を通るのだけれど、新生児室は、ガラス張りになっていて、ある一定の時間ごとに、赤ちゃんをすらりと並べて、外から見てもらえるようになっていた。
それぞれの赤ちゃんが寝かされているケースには、例えば、「山田春子べビー」や「田中夏子ベビー」というように、それぞれの母親の名前の後にベビーと記されている札が付いていた。
新生児室の前あたりに、ガラスケースに入った人形が置かれていた。おかっぱ頭で着物を着た市松人形のような人形だった。
初めてその人形を見た時、背筋がぞっとした。
「なんでこんな気味の悪い人形を置いているんやろ」
そう思った。
それからその人形の前を通るたびに、全身にただならぬ気配を感じた。 不気味な気配だった。 そしてその気配は、そこを通る回を増すごとに、だんだんと強くなっていった。
私は、その人形が、ただただ、恐ろしかった。
だから、そこを通る時は、なるべくその人形を見ないように見ないようにしていた。だけど目をつぶっていても、気配というのは消えてくれなかった。
いや、かえって意識してしまうことで、よけい強くなってしまったような気もする。
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まんてんは、やはり陽平さんと結婚することになった。
すっごい急展開。いやきっと知らず知らずに
二人の間に愛が芽生えて育っていったのだろう。そりゃあ同じ屋根の下で暮らしていて、同じ夢を持っていれば、なおさら。
エイジさんがなんとなくかわいそう。
彼がまんてんをあきらめる時に放ったセリフが印象的だった。
「恋人同士の時は、お互いがお互いを見ていればそれでよか じゃばってん、結婚となると、お互いが同じ方向を向いてないと うまくいかんとよ」
うちの夫は、エイジさんがかわいそうでかわいそうで仕方ないと言っていた。
「二年以上も待たされて、待たされて、結局なんもなしで、別れるなんて そりゃあ、あんまりだ。かわいそすぎる。ひどすぎる。せめて・・・」
というようなこと。
なるほど。
お互い同じ方向か。
夫に言わせると、私は、まんてんに似ているらしい。 なんも考えずに思いつきで行動してしまうところとか、天真爛漫なところとか、がさつでそそっかしいところとか。知らず知らずのうちにまわりに迷惑をかけてしまうところとか。などなど。
この人は、私のことをそんなふうにとらえていたのかと、興味深かった。
少なくとも、自分では、天真爛漫とは、全然思わないけど。
でもまわりのみんなにもよくそう言われる。
なんでだろう?
2003年02月04日(火) |
私が壊れるに至るまで その9 恥ずかしくてでも重大なこと |
出産後、自力で尿が出せなくなってしまったことも大きなストレスになっていた。定期的に導尿してもらっていたけれど、そのうちに尿意さえ感じなくなってしまっていた。
看護婦さんたちは、そんな私のことを気にかけてくださって、ことあるごとに私に、
「どうですか、出ましたか?」
などと尋ねてくださったのだけど、そう尋ねられたびに、とても恥ずかしい思いをしながら、私はクビを横にふった。
もう少し様子を見て、まだ出ないようであれば、泌尿器科の先生に診てもらうということになっていたのだけれど。時すでに遅しだった。
その先生に診てもらう前に私は、
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☆猟奇的なあまりに猟奇的な
昨夜は、早めに床についた。
たくさん眠れば眠ったで、妙な夢ばかり見る。
実家の近くにあるジャスコ前商店街に私がいて、そこにある薬局の店主の噂話を、その薬局の向かいの雑貨屋の店主から聞いているのだ。
なんでも薬局の店主の奥さんは、絶世の美女だけど、近来まれに見る変わり者だそうで、カンシャク持ちでもあったそうだ。
一度カンシャクを起こすと、手に負えないほどヒステリックになるとのこと。
「あの奥さん、一度、ケンカして、実印を投げつけて、実印を欠けさせたんだってよ」
雑貨屋の店主が、私に教えてくれた。
「あ、その話、知ってる、前にも聞いたことがある」
と夢の中の私は、そう答えていた。たしかに、どこかでその話は耳にしたことがあったのだ。もっと以前に見た夢でのことだったのか、それとも本当に聞いた話だったのかは、わからない。
今、その絶世の美女の店主の奥さんは、家を出て、関西の一等地で優雅に暮らしている。とのこと。
薬局の店主も知らないし、その奥さんももっと知らない。
実際にはどこにも存在しない人々の噂話を聞いている夢も、なんだかすっごい妙だ。
その後、また別の世にも恐ろしい夢を見た。
我が家に殺人鬼が侵入する夢。我が家といっても、夢の中の我が家は、なぜだか見たこともない古びた洋館だった。
殺人鬼は、緑色の顔をしていて、二階の部屋に立てこもるのだった。
見知らぬ男(いったい誰かさっぱりわからない)が、鉄の棒を持って、殺人鬼が立てこもったドアを叩き壊そうとしているのだが、先に部屋の中からドアを押し破られて、その殺人鬼に襲われてしまう。
すぐ近くでその一部始終を見ていた私は、
「あああ、この人もうあかんなあ」と思いながら階段を下りるのだった。
場面は変わり、私は小さな子供になっていて、どこか小屋の中に隠れているのだった。
「ここなら、見つからない。ここなら、あの怖い人も追ってこない ここでじっとしていさえすれば」
そんなことを思いながら、息をこらして、じっとそこに隠れているのだ。
だけど、ものすごく心細くなってしまって、小屋から出るのだ。
少し歩いているうちに、自分の家、さっきの古びた洋館に戻ってきてしまっていて、はっと見ると、子供たちがいる。
「あんたらもう寝に行かんとあかんよ」
そう声をかけていた。
子供たちは、二階に向かった。二男のズボンが裏返しだったのが印象的だった。
その時私はまだ気づいていなかった。
二階には、あの殺人鬼が立てこもっていたということを。
そう、目を覚ますまで気づかなかったのだ。
1階の居間では、もっと猟奇的で恐ろしいことが起こっていた。
あまりに恐ろしくどうしても詳細を記すことができない。
ただそこに絶望的な光景が広がっていたとしか。
私は、意外と冷静だった。取り乱すこともなかった。たぶんその光景を目にしたとたん、感情が死んでしまったのだろう。か?
「とにかく、警察へ電話せんと」
私は、警察に通報しうようとしていた。
だけど、どうしても、どうしても
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2003年02月03日(月) |
私が壊れるに至るまで その8 奇形のいっしゅ? |
とにかく思うように身体が動かせないというのは、本当に歯がゆくて苦しかった。
出産翌日からは、3時間おきの授乳のために、授乳室に行かねばならなかった。
普通に歩くと病室から授乳室までは、2分とかからない距離だったと思う。
しかしに私にとってその距離が果てしなく遠く険しいものに感じられた。
一歩足を前に進ませるのにも相当の時間がかかった。やっとこさたどり着いた時には、もうクタクタだった。当然遅刻だった。
そんなままならない身体で、私は授乳に臨んだはずなのだ。
なのに授乳時の記憶がほとんど残っていないのは、いったいどいうことなのだろうか?
もっとも、この一連の出来事において、その時以外にも全く記憶に残っていないことがいくつかある。
まあそれは後に記すことにして。
ひとつだけ覚えている事は、なんとかお乳を飲もうと必死なのだけど、それがままならないで泣きそうになっている我が子の顔だった。
なんだか申し訳なかった。母乳は、それなりに出た。なのに私はそれを我が子にうまく与えることができなかった。
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2003年02月02日(日) |
私が壊れるに至るまで その7 病室での恐怖の一夜 |
☆「病室での恐怖の一夜」
出産後二日目の夜のこと。
なかなか眠れない私の背後に、突然異様な気配が漂いはじめ
どこからともなく、遮断機の音が聞こえてきたのだ。
カンカンカンカン
カンカンカンカン
カンカンカンカン
カンカンカンカン
カンカンカンカン
カンカンカンカン
カンカンカンカン
その音は、そんなふうにだんだんと大きくなって、私の耳元で鳴り響いた。
そのうちにその音に混じって、お経が聞こえてきたのだ。
ぞっとして、悲鳴を上げそうになったのだけど、
声が、声が、出なかった。
身体もすっかり硬直してしまって、動かなかった。
お経の声は、何重にも重なって聞こえてきた。
と、その時、
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2003年02月01日(土) |
私が壊れるに至るまで その6 動かぬカラダ |
出産後ずっと私は眠れなかった。いや、少しくらいは、うつらうつらと眠れていたのかもしれない。だけど、「眠れない。」という思いに絶えず煩わされていたことだけは確かだった。
ぐっすり眠れた。という満足感が全然得られなかった。
お産がすむと、日を追うごとに回復してゆくのが普通だろう。
なのに、私は日を追うごとに悪くなっていった。
自分でもおかしいと思った。
だんだんと、自分の身体を自由に動かせなくなっていった。
すぐ近くにあった、箸すら取れなくなっていた。
起き上がることすらままならなくなってしまっていた。
だるくてだるくて全身に力が全く入らなくなっていたのだ。
しかし、私は、ある年配の助産婦さんに病室のみんなの前で、一喝されることになる。
「あんた何甘えてるのん、お産みたいなんは、病気ちゃう。そんなボサーっと寝てんと、さっさと身体を動かさんとあかんよ。他の人見てみなさい。さっさと動いてはるでしょ。あんたもお母さんになったんやからもっとしっかりせんと云々」
その助産婦さんにしてみれば、私ひとりだけ、布団の中で動かないでいるのを見て、なんとも無気力で、ふがいなく感じたのだろう。
叱咤激励のつもりで言いはったのだろうけれど、私は、その助産婦さんの言葉に大いに傷ついた。
あの時、私のカラダだは、ホンマにゆうことがきかんかったんや。動きたくても動かれへんかったんや。
それでも私は、歯をくいしばって、起きた。もしかしたら、他の人もこんなふうに動かぬカラダを無理やり動かして、がんばったはるのかもしれないとも思ったし。
母になることは、たいへんなことなんだと身にしみた瞬間でもあった。
せやけど、ほんまにこんなにしんどいん?
一歩足を前に進めるのにも死ぬほど大変だった。
いくらなんでも、やっぱりおかしいで!!
その時病院の誰もが、そんな私の異常に気がつかなかった。
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