■あんただけにそっと■

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2010年10月29日(金) モテ期意味無し

35歳、既婚子持ち、精神病棟入院中、モテ期到来しました。
い、意味ねえ〜〜〜!!!
というか、これはモテに数えないとも思うが。

始まりは病棟で一番おかしな感じのカクさん。
その言動がちょくちょく私のツボに入るので、
キモカワだわ、と私も憎からず思っていたのだが、
ある日唐突に私の電話番号と住所を聞き出そうとし、
うっかり答えそうになる私を、友達が個人情報だから教えられないよ、と言うと、
電話帳を開いて「ぴー田、ぴー田・・・」と探している。
おいおい、こえーよ!

その後も何歳?と聞くので35、と答えると
「35歳??35で独身なのっ!?」「いや、結婚して子どももいます」
「えっ!?亭主いんの??やばいなそりゃ」と慌てるカクさん。
これで終了かと思いきや
「亭主が居てもね!聞いちゃうからね番号ね!じゃ、ここに書いて」ずっこけるわ。
そして看護士さんに注意を受けながらも、
時々意味のわからない手紙をくれたり、
売店で買ったらしいガムを唐突に「はいっ!」とくれたり。
ガムは部屋に返しに行ったのだが
「なんでもいいです!なんでもいいです!」とよくわからない
返却の仕方をされ、も、もらっちゃった・・・。いいか、もう。

そのうち電話ボックスで電話帳を開きどこぞへ電話をかけ
「探偵ですか?○○市のぴー田さんの電話番号を調べて下さい」
というのが漏れ聞こえて、私も一気に怖くなり看護士さんに話す。
するとカクさんは違う病棟へ移され、もう顔も合わせる事も無くなった。

そして一ヵ月後の夕方、面会や休憩に使うラウンジで偶然2人きりに。
「あ、カクさん・・・」と、もう忘れてんだろと高をくくって言ったら
「あっ、ぴー田さん、これ以上近づくと行けないからここに座ろう」と
私からちょっと離れた場所に座り、私の情報を色々と思い出し話していた。
私の父親の名前まで覚えてて驚愕。カクさん節は変わらず、
「こんな所でお茶を飲むなんて、天皇陛下みたいだよね!」等と言ってた。
全く意味がわからないが「うん」と同意しておいた。

カクさんのいなくなった病棟では、今度はマサオさんという中年男性に好かれ、
気がつくと隣に座ってる。
「今年は水着着たの?見たいなあ」などのセクハラ発言や、
ふと見ると乳の辺りをガン見してたりと、もーどうしょうもねえ。
気を抜くと触ろうとしてくるので「さわんなマサオ!」とか
乳モミモミの動作をしてニヤついてるので
「そのワイセツな手付きやめろ」とか、わりとすぐに慣れて
こっちも言いたい事言っていた。
「電話番号教えて〜」「そいつぁ〜教えらんねえなあ」など。

小柄で、か細く汚い言葉など全く使わない雪子ちゃん、
「しい子ちゃん・・・あのおじさんと仲良いの・・?」と戸惑う。
「仲良いというか、私は平気だけど、雪ちゃんは逃げた方がいいよ」
雪子ちゃんにはダメージが強そうだと思って言ったのだが、
じゃあなんで私は平気なんだろうか・・・。あれえ?

その後新しく入ってきた岡田さんという男性。
小柄で小太り、頭はつるっとはげ、両脇だけ少し髪が残り、
何故かうなじはモジャモジャ。
お目目は二重でクリクリと輝き、両手を頬に当てて、
困ったような顔をしてウロウロしている。
私がその様子にすっかり魅せられ、超可愛い、携帯ストラップにしたい、と思い、
雪子ちゃんに「岡田さん愛くるしいよねえ」と漏らした。
すると雪子ちゃん、何を勘違いしたのか、私と岡田さんを引き合わせてくれた。

私も岡田さんも状況が飲み込めずパニック。
「す、すいません、私結婚してるんですが、岡田さんがあまりにキュートなもんで・・」
「あ、そうなんですか、いや、まさかお話できると思ってなかったんで」
とかなんとか、お互いワタワタと言葉を交わし、別れる。

その後、岡田さんは友達にはなってくれますよね、と言い、
もちろんですもちろんです、と私は言い、
しかし何故か岡田さんは2人きりで話したがり、中庭でお話したり、
ロビーでお話したり。
しかしそうするとマサオさんがやってきたり、躁状態の男性が来たり、
結局5人くらいで話すことになってしまい、岡田さんショボーン。
岡田さんは病院にいることがとても辛いらしくて、外泊も使い切り、
毎日外出してなんとか過ごしていたらしい。
それで、私といるとホッとするとかで、ちょこちょこと話をしていた。
私の退院が決まり、電話をくれないか、といわれたが、
番号もらってもこっちからはまずかけないだろうし、
それは岡田さんを傷つける気がして、
辛くてしょうがなくなったらかけていいよ、と自分の番号を渡した。
今のところ電話は無い。
頑張ってるのか、忘れたのかわからんが、とりあえず良かった。

そして、もう一人。加藤さん。
この人は私が入院した日に見かけてから、いいなあと思っていた人。
背はやや高め。線が細くて、顔が好み。
大人しくて、はにかんだように笑う。
喫煙室で談笑しながら煙草を吸う姿や、
肩甲骨の浮いた背中が色っぽくて、ついつい目で追ってしまっていた。
そこまではただの一ファンだったのだが。

何か気になると確認しないと気が済まない強迫症状のあるモトカちゃん。
調子が悪いと性的な事に特化してしまい、
ある時「私に良くする体位は?」等と聞いていた。
答えつつ「私だから聞けるんでしょ?加藤さんには聞けないでしょ?」と
喫煙室にいる加藤さんを眺めながら聞くと「そりゃそうだよ〜」
なんて言うので「なら私にも聞くな〜」とか笑っていたのだが。
「・・・しい子ちゃんがそんなこというから、気になってきちゃったじゃん!」
えっ?ええー!!

喫煙室から出てきた加藤さんを呼び止めるモトカちゃん。
やめてくれ頼むと哀願する私。
「加藤さん、下ネタ平気っすか?」
「モトカちゃんやめてええええ」
「?、平気っすけど・・・」
「加藤さんの好きな体位ってなんすか?」
「うわあああっモトカちゃん!!!
 いい、いい、加藤さん!!答えなくていいですから!!」
「え〜、なんですかねえ・・・」
「(モトカちゃんにやにや)」
「加藤さん、いいです!言わないでいいです!」
「なんですかねえ、ん〜、乗っかられるのが好きですかねえ」
「!!!!(妄想ボワンワンワーン、鼻血出そう)」
「騎乗位、と(書き留めるモトカちゃん)」
「そこ!メモ取んな!!!」
「逆に、何が好きですか?(いきなり私に振る加藤さん)」
「ぅえっ、私すか?せ、正常位すかね??」
 って何私も答えてんだよ!!!そこ、メモ取んなって!
「正常位、マレですよね〜」
何を感心してるんだか加藤さん・・・。

まあ、そんな馬鹿な事を経て、挨拶したり立ち話をするようになり。
お互い早朝覚醒してしまうのもあり、朝4時頃〜夜明けまで、
ホールで雑談したりしていた。
すると、同じく早朝組のおばちゃんおじちゃんも寄って来て、
不思議なグループを形成。
私、いつも気が付くと変な人に囲まれてグループになってたりするんだよな。
道を聞かれやすいとかと、関係あるのだろうか?

加藤さんとは、お互い好意があって、連絡先を交換。
加藤さん退院後もメールや電話をしていて、
部屋に遊びに行ったりして、グダグダ話したり。

って、これ、不倫じゃん!浮気じゃん!
即効でぴーにばれるし!!
しかし自分以外の男と性交渉を持つ、というのに興奮してしまう、
変わった性癖を持つぴー、ちゃんと帰ってきてくれるならいいよ、と。
その刺激により、セックスレスも解消され何がなんだか。
加藤さんとは性交渉ほとんど無いに等しいんだけどな・・・。

ぴーの実家とうちを行き来しているモリオ。
こないだ電話をくれて、切るときに「ごめんください」と言って切った。
おばあちゃんかよ!

「左のさ〜」などというので、驚いて「左って何?」と聞いたら
「左って、右だよ!」とやれやれ何もわかってねえよ、みたいに言われた。


2010年10月25日(月) 戻りました

8月23日〜10月23日まで、ぴったり2ヶ月の入院を経て、
めでたく家に戻ってきました。
急に決まった退院だったのだけど、まあなんとかかんとかなっとります。

だってさ、外泊中10年ぶりにカッターでの自傷がぶり返しての診察で、
先生「病院に居すぎたね、退院のタイミング逃したね」とか言うんだもん。
なぜかえらい慌てて「あ!じゃ!次の土曜に退院します!」なんつってしもうた。
てかよ、教えてくれよそのタイミングってやつをよう、先生さんよう。

自傷は足を殴りつけるのはずっとしていたけど(痣だらけで紫陽花みたいよ)、
カッターを使って切ってしまうのは本当に久々。
というか、まさかまたやるとは思わなかった。
35にもなって。思春期か。
しかも血を見てものすごくホッとしてしまい、
クセにならないように気をつけねばならん。

退院は、家で一人になることが怖いのと、友達と離れるのが辛かった。
175の長身で度々私を抱きしめてくれたタキちゃん、
みんなのお母さん的存在の村田さん、
ふざけも深刻もどっちもガッチリいけた文子さん・・・
ウツや統合失調症、適応障害などを抱えながら、
みんな健気に病気と現実世界とをなんとか引き受けようとしていた。

若い女の子でソープ嬢をやっている葉月ちゃんという子は、
もう結婚してるのだが、旦那は薬の運び屋で捕まり刑務所にいるという。
ドラマ有り過ぎ、と思っていたのだが、葉月ちゃんの両親がまた
辞書で「ヤクザとその情婦」と引いたら図解で出てきそうな二人で、
葉月ちゃんの自傷の跡を見て、継母さんは「もうショックで・・・」と泣き
お父さんは「そんなことしてお前、絶対跡が残るんだからな、
子供出来たとき困るぞ、なんて言うんだ、甘えてんじゃねえぞ」
などと、こっちが口を挟みたくなるような言い方をする。
それを葉月ちゃんはウンウンとただ聞いている。
2人が帰った直後、葉月ちゃんは「はづ、あの人達大っ嫌い」と
買ってもらったジュースをドボドボ捨てながら言っていた。
お父さんにひどい言われ方してたけど、大丈夫?と聞いたら
「はづも言い返したい事いっぱいあるよ、何もわかってないって。
でもそしたら100倍になって返ってくるし、あの人すぐ殴るから」と。
若いのにものすごく我慢強くて、一番ダメージの少ない方法を見付けていたのだ。

みんなみんな、幸せになって欲しいと改めて思う。
人ってみんな健気だな、と思う。
生まれてきたから、死ぬまで生きる。
なんの為にとか、生きる理由とか、自分の価値とか、考えるのよそう。
ただ、生きるのだ。


モーリー・しい子(藻)