2002年10月15日(火) |
王宮日誌4(anotherside) |
「さて・・・これに署名をして・・・と」
総括書にサインをして、会議室に掲示する。
「これで、終わり・・・・かぁ・・・」
ほんの少しの間、正当な継承者のために「預かっていた」王位を、返上する日が近づく。 そのために、今まで自分が為したことを振り返り、記した。
「と・・・覗いて来るか・・・」
いつもの様に、大臣の執務室へ行く。
今日は閉じているはずのドアが開いている。
「ノックでーす」
『入ってくるなよ』
「なんだ、戦争でも始めたか?」
無言で睨み返してくる、が、直ぐに目を逸らす。
部屋はもの凄く散らかっている。
「まぁ、わかってはいるが・・・」
『・・・・』
珍しく『うーるーさーいー』と言って来ない。
少し拍子抜けしていると、こう続けた。
『繋ぎ・・・なんだよね・・・・』
「何を今更言ってる?」
『私たちがやってきたことは・・・・』
「だから何だって言うんで?」
『こんなに悩んで、こんなにいろいろ気配りして、でも、繋ぎ・・・』
「そうだな・・・」
暫し沈黙。そしてこう続けた。
『・・・これからどうするの?』
「お前はそのまま新しい国王に仕えるんじゃないのか?」
『あんたは?』
「さぁ・・・タダの農家にでもなろうかね?」
と言って一人で笑った。
笑わない顔が言った。
『結局・・・何も変わらなかった、何も変えられなかった・・・』
「ああ・・・そうだな」
『・・・・』
「さぁて、部屋の掃除でもしてくるか・・・」
重苦しい空気がイヤで部屋を出る。
言ってることはよくわかる、が、今は何も終わってないし、始まってもいないのだ。
これからが本当の始まり。
それはあいつも、本当はわかっている。
わかっているが、わかりたくないのだ。
わかってしまうと言うことは、今までの事が何も為さないこともわかっているからだ。
わしは、疏埜馥の待つ軍務司令室に行き、家に帰った。
直ぐ目の前にある、始まりに期待と不安を抱きつつ。
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