サミー前田 ●心の窓に灯火を●

2006年12月02日(土) 宝箱の続報

 1/13発売のエンケンの10枚組ボックス『遠藤賢司実況録音大全1968−1976』の曲目がエンケンのオフィシャルHPで発表されて、掲示板もかなり盛り上がってる。
 73年、74年あたりのエンケンの過激ぶりは、村八分や頭脳警察の比ではないかもしれない。73年の大晦日に1万人が集まったフェスでエンケンは年越し直前に出演(今でいうカウントダウン)し、最後に「歓喜の歌」を歌うまで、「満足できるかな」を16分以上歌い、体制や政治家に対して怒りまくり、興奮してステージにあがった客をぶっとばし、掲げてあった巨大な日の丸を燃やしたという。CDの音源だけでもそんな様子が伝わってくる。
 そして74年になり福島の公演後、突然暗闇で数人の暴漢に襲われ、瀕死の重傷を追ったエンケンは、入院してた病院を抜け出し、松葉杖、包帯だらけで「春一番」に出演。傷口が開いてしまうほどの熱演で、血だらけになっても歌い続けた。これも伝説のライブである。
 
 まだ商品じたいは完成されていないが、中身ばかりか、ブックレットの充実も含め、自分にとってもこれ以上はないってくらいの宝箱。で、ブックレットにはこんな序文を書きました。


「歴史を超越した宇宙の叫び」

 膨大な記録テープがエンケンさん宅の押し入れに眠っているという話を聞いたのはもうずいぶん前の事で、そのほんの一部は1990年に『黎明期LIVE!』という1枚の素晴らしいアルバムとして世に出た(『黎明期LIVE!』からは本箱に全曲収録)。それらの音源をまとめて箱シリーズ化できないものだろうか?という話が浮上したのが3年以上前のことである。さすが、デビューから現在まで、一貫して自信と責任を明確に持って活動してきたエンケンさんだ。「過去のライブ演奏や未発表録音を箱にいれて年代順に発売したい」というやや強引なこちらのお願いをやさしく許可してくれた。
 曲順は、一部をのぞき時系列に並べてある。元々の録音状態やマスターテープの劣化などの問題もあったが、厳選に厳選を重ね、貴重度や音質本位ではなく純音楽魂本位で選曲させていただいた。DVDはテレビの公開録画とはいえ、まさしく73年のエンケンさんのライブだ。
 この『実況録音大全』の登場は、確かに日本のロック史の潮流としても重要な意義を持っている。しかし、我々エンケン・ファンおよび純音楽愛好家たちはそのような聴き方を越えなければならない。エンケンさんを歴史や時代性というような次元で語るレベルでは日本のロックは終わってしまうのだ。歌いたいことを歌い主義主張することが、極めて独創的な芸能として昇華されているエンケンさんの希有な音楽に触れればわかること。選曲作業中、これは時空を超えて永遠に瞬く「宇宙の叫び」なんだと、私は何度も何度も実感したのだ。
 まずは第一巻である。今回は、エンケンさんがギターを持って間もない頃の68年から、「ハード・フォーク」を打ち出していた76年までの収録となった。
 
 不滅の純音楽道、大河の如くまだまだ続きます。

 2006年11月10日(アルバム『満足できるかな』発売日からちょうど35年)   
 サミー前田


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