Journal
INDEXbacknext


2001年05月14日(月) なんだかんだ言って、わたしは仕事が好き、らしい。

 新作の、最初のスタッフミーティング。
 演出家が演出プランを発表。稽古を始める前の初心表明のようなもの。これでスタッフ全員が共通言語を持ち、現場に向かう。
 この日がくると、いつも「さあ、やるか」という気持ちになる。
 明日からはいよいよ歌稽古。苦労して作ってきたスコアが、俳優たちの声に乗り始めるという、なかなかわくわくする日である。
 ボーカルナンバーのある出演者たちは、本当に様々な世界からの寄せ集め。寄せ集めと言ったらことばは悪いが、とにかく全然毛色の違う人たちが一堂に会する。
 中には、六本木でジャズクラブを経営している歌手もいる。彼女には冒頭の1曲だけを歌ってもらい、その後はお店に出てもらうという変わった契約。それはそれで、なんともかっこいい。演技ははじめてという大歌手もいて、明日はその人との個人レッスンもある。さてどんなアプローチでいこうかと、わたしは楽しく悩んでいる。明日からの闘いに備えてゆっくり風呂にでもつかって、おおらかにプランを練ろう。

 新しい現場に入る楽しみは、もちろん純粋な仕事の楽しみでもがあるが、未知の人たちと出会う喜びでもある。出会ったら別れ、出会ったら別れ、の繰り返しだが、だからこそ、なのかもしれない。名刺をためるのは好きじゃない。名簿とかも、ついついどっかにやってしまう方。まあ、そういうわたしのへそ曲がりは置いといて。とにかく。明日走り出したら、8月末まで止まれない、濃密な時間が、新しい人たちと始まる。

 すでに新しく出会いを果たして仕事が進んでいる、作曲家、翻訳家、作詞家のお三方は、もうすっかりわたしの大好きな人たちとなっている。40代、60代、50代、と年齢は様々だが、一緒に過ごす時間は、この上なく楽しい。ファックスのやりとりをしていると、なんだか大好きな人と文通をしているように、返信をもらうのが楽しみ。
 ずっと仕事をし続けてきて、新しい現場にはいるたびこうしてウキウキできるのは、やっぱり、いい。これがその内、眠りを削り、精神を削り、大変な修羅場になっていくのだと、重々承知してはいても。
 普段は、恋人がいない、ギャラが安い、時間がない、と、なんだかとっても恵まれてないような気がするのだが、こうして書いていると、「なんだ、わたしってけっこう幸せなんじゃない!」と思えてくる。

 ああ、欲がないな、わたしは。だから出世しないのかもね。


MailHomePageBook ReviewEtceteraAnother Ultramarine