おひさまの日記
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2011年01月29日(土) |
宇宙でいちばんおいしいたこ焼き |
土曜の昼下がり、 部屋でカタカタとキーボードを打っていると、 ドアを、コンコン、とノックする音がした。 誰じゃ(って、家族の誰かなんだけど・笑)。
仕事を区切りたくない時だったので、
「はい?」
そう言ってぶっきらぼうにドアを開けると、 階段を上がってきた母親がいた。
そして、私にたこ焼きを差し出す。 黙って、ほれ、ほれ、って。 びっくりして受け取ったたこ焼きは、すごぉくあったかかった。
灯油節約だってんで、 ストーブ消して、厚着して、指先のない手袋して、 パソコンいじってたもんだから、 私の体、特に手は冷えきっていた。
そんな手に乗せられたあったかいたこ焼き。 手に伝わるたこ焼きのあったかさが、 私をはっとさせた。 うまく言えないけど、真人間に戻ったような感覚だった。
「何これ? 食べていいの?」
そう尋ねる私に、母が言う。
「うん、食べなー」
よろよろと階段を下りる姿を見て思った。 お母さん、年を取ったな…
足腰の運動のためによく歩きに出る母が、 その途中にわざわざたこ焼きを買ってきてくれたのだった。
チクショー。 なんだか泣けるじゃねーかよー。
誰かが自分をあったかい気持ちで見ていてくれる… その気持ちで、時に、自分の知りもしないところで、 自分のことを思って何かをしてくれている…
それ以上のことってあるだろうか?
私はたこ焼きを冷えた両手で包むように持って、 少しの間その場に立っていた。 たこ焼きのあったかさが手から全身に広がるようだった。
それは、あったかくて、やさしくて、やわらかい、 「お母さん」そのものだった。 それに包まれる時、自分の周りに高く築き上げた険しい壁が、 ふにゃふにゃとやわらかくなり、なくなってしまう。
歯を食いしばって、武装して、強く、強く、 折れないように、強く、強く、 そんなふうにぎゅっとしていた自分がいたことに気づく。
あれ… ああ、そうか… 私は何になろうとしてたんだ? ちょいと立派になろうとしてなかったかい? 人様の立派と自分の立派は違う、 人様のいいところをいただいて、 あとは私は私でいいんだよなぁ… 私ができることをすればいいんだよなぁ…
そんなふうに思ったら、また泣けてきた。 悲しい涙じゃない、ほどける涙。
よく同じところをうろうろし、 よくくよくよし、 よく泣き、 そして、よく立ち上がるセラピストでございます(爆)
あったかいたこ焼きはおいしかった。 いつもはカロリーが…なんて考えてマヨネーズはつけないんだけど、 今日はもらったたこ焼きに添えられていたマヨネーズを、 たっぷりつけて食べた。
おいしい…
私は今日の母のようなセラピストでいようと思った。
お母さん、たこ焼きごちそうさまでした。 宇宙でいちばんおいしいたこ焼きだったよ。 今日まで私を育ててくれてありがとう。 私はもうずっと愛を受け取り続けてきているんだね。
私はあなたの娘です。
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