おひさまの日記
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2010年10月13日(水) |
ばいばい、お父さん<呼ばれたね編> |
よく話に聞くように、親族が亡くなった後の手続きはてんこ盛り。
あれこれこなしながら車で走っていたら、ふと、
「歴史民族資料館に行きたい」
そんな気持ちになった。 そこは、私の生まれ育った町の昔の記録などを残していある資料館。
いや、やることいっぱいあるし、 そんなトコ今じゃなくてもいつだって行けるよ、と思いつつ、 以前どこかで読んだ記事を思い出す。
ひらめきや直感はそこに思考が入らないんだって。 でも、ああだから、こうだから、と、そこに自分の思惑が入った時点で、 もうひらめきや直感じゃないとか。
ひらめきや直感に従うってのは基本中の基本(笑) それに、その時いた場所から車で2〜3分、 いいや、行っちゃえ、そう開き直って、予定とは違う道に入った。
駐車場に車を止めて歩いていく。 歴民には、昔の店や民家などを再現した建物があり、まずそこに入る。 なつかすぃ〜看板や駄菓子屋さんを再現した店内になんだかワクワク。 タイムスリップして子供に戻ったみたい。
ふと、目をやると、壁に昔の市内の地図が貼ってある。 大正6年の地図。 こんなの残ってるんだと感激。
ウチを探してみる。 あった、大正6年の我が家(笑) 祖父の名前と、店であることが書かれている。 そう言えば、おじいちゃんは商売人だったと父から聞いたっけ。 こんなところで改めて自分の家系のルーツを見るなんて。 なんかうれしい。
本館に入る。 すると、向こうから見たことのある人が歩いてくる。
その人は、私がディーラーの営業だった時に車を買ってくれた人。 昔のお客様。 ここにいるのは知っていたけど、まさか入ってすぐに遭遇するとは。
「おー、久しぶり!」
「お久しぶりです。 先日父が亡くなって、手続きとか色々やってる途中で、 この近く通ったらなんとなく寄りたくなって」
「お父さん亡くなったんだ」
「はい、先日」
「お父さんにはお世話になったよ。 お父さんの撮った写真も使わせてもらったりね」
「ああ、そんな話、母から聞いたことあります」
「あ、そうだ、お父さんの写真、見る?」
「父の撮った写真、あるの!?」
その人が出してきたのは、 一冊の小冊子で、町の松の見える景色の特集をしていた。 その中で、父が撮った風景写真が2枚使われていたのだ。
「フィルムがなかったんでね、 写真を接写してそれを使わせてもらったんだけど、 ほら、これと、これだよ」
心臓がドクンドクンと鳴った。 モノクロの松のある風景写真だった。 私の中から言葉がさーっと消えていった。 ただ写真をじっと見ていた。
その人が言った。
「呼ばれたね」
私ははっとして顔を上げた。 そして答えた。
「ホントだ、呼ばれましたね(笑)」
「お宅にもこの冊子を渡してあるから、 家でも見られると思うよ」
私はその人にお礼を言い、歴民を後にした。
そして、思った。
「そうか、このために来たのか…」
なぜか急に歴民に行きたいと思った。 理由もなく。 頭で考えて判断したらまったくムダな行動だし、 その気持ちを即座に打ち消していただろう。 実際一度打ち消したし。
けれど、そういう意味のない衝動が大好きな私。 それに従うというだけでワクワクしてくるタチ、そんな行動自体が楽しい。 なもんで、ふと浮かんだ考えに従ってみたのだった。
そして、その先で私を待っていたのは思いがけないもの。 父が撮った写真。
「俺の写真見てくれよ」
父がそう言ってくれたような気がして、すごくうれしかった。
不思議だけれど、不思議じゃない、 つながってる、そう感じさせてくれる出来事。
私はこわがりで、小さい頃よく父と母に言っていた。
「お父さん、お母さん、 死んでも絶対おばけになって出てこないでね」
父はその約束を守って、私の第六感ルートにシグナルを送ってきたようだ。
よく話には聞くけど、こういうことってあるんだね。
日常の中でもよくある。 ふと浮かんだアイディアにあれこれ理屈をつけずに従うと 思わぬ素晴らしい展開がある、とかね。
それに、偶然に起こった出来事によって思わぬ素晴らしい展開がある、とかね。 セレンディピティって言葉でもよく言われてるみたいだけど。
ああ、だから生きるって楽しい。
歴民を立ち去る前に、元お客様(笑)が言った。
「そうだ! もし家にお父さんが撮った写真のネガがあったら借りられるかな。 色々な資料に使わせてもらいたいんだよね。 お父さん、写真たくさん撮ってたみたいだから」
「あるかも。 帰ったら探してみますね」
ネガがあるかどうかはわからない。 母に尋ねたらないと言い切る(笑) でも、探してみよう。 探してほしいでしょ?お父さん。
今日はお父さんが大好きだったパン屋さんのあんぱんがお供え物っス。 父よ、くらえ、あんパンチ。
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