おひさまの日記
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今日は不思議な場所に行った。
なんだかウツウツした気分だったのでベッドにうずくまっていた時だった。
私の中に浮かんできたのは、 一面草花がいっぱいの場所で、地平線の果てまで緑。 その中に誰かが歩いて草が踏まれてできたであろう道がくねりながら伸びている。 左の向こうの方には、またこれも緑でいっぱいの、丘のように高い場所。 そのふもとには小さな小屋。
私は、その草原にいて、小さな小屋に向かった。 その小屋には、異国の女性、おばあさんがいた。 彼女は喜んで私を招き入れた。 なにやらしゃべっているけれど、どこの言葉なのか私には理解できない。 でも、満面の笑みを浮かべて、私をもてなす。 彼女は私をとても愛している。
少しして、彼女は私を2階の部屋に通した。 そこは私のために用意された部屋だった。
その部屋の窓から見えるのは果てしない草原。 吹き込んでくる風で髪がなびく。 私はそこでいつまでも泣いた。 悲しいんじゃない、ただただ涙があふれてきた。
なにもない。 なぁんにもない。 ただ草原に風が吹いてる。 心が洗われるようだった。 胸の中のわだかまりが解けて外に流れ出していくように、 私の涙は流れ続けた。
私は外に出てみたくて下に降りた。 おばあさんは行っておいでと言うように、 私の背中に手を添えてそっと押した。
私はどこまでも続く草原を歩いた。 ただ歩いた。 少し行くと大きな木があって、私はその木の下で休んだ。 木漏れ日がきらきらして美しい。 風に葉っぱが揺れてさらさらと音がした。 私はそこでも泣いた。 とても心地よくて、ただただ泣いた。
しばらくして小屋に戻ると、おばあさんはにっこりして迎えてくれた。 私をやさしく抱きしめて、またなにやら言っていた。 でも、やっぱり私のわからない言葉だった。 それでも彼女の愛が伝わってきて、とても安らかだった。
また2階に上がり、窓からずっと外を見ていた。
帰らなくちゃ…そんな気がして下に降りていくと、 おばあさんが私に手渡したものがあった。 サンドイッチだった。 オリーブオイルを塗ったパンに、 バジルの葉をはさんで塩をふっただけのシンプルなサンドイッチだった。 でも、とてもおいしそうだった。 うれしかった。
私達は言葉なく互いに手を振った。 またいつでもここに来ていいんだとわかった。 ここは、私のためだけに用意された特別な場所だということも。 私は愛されていた。 存在する全てのものに愛されていた。 なにもないのにすべてがあった。 また来よう、そう思った。
私は帰ってきた。 ベッドの中にいたけれど、その不思議な場所に行って、 そして、帰ってきた。
すべてはイメージの中で起こったこと。 けれど、間違いなく私に起こったこと。 かたくなな心が少しほぐれて、私はやっとベッドからはい出した。
現実は容赦なくそこにある。 何ひとつ変わりなく。 でも、それも私の中にあるものすべてを見せているだけの世界。 私の中は今すさんでいるのだろう。 愛を見失っているのだろう。 自分への愛を。
自分を愛したいので助けてくださいと、天使に願った。
うまく言えないけれど、 私はなんて愛されているんだろうと感じた。 いつもいつも大きな愛に包まれているんだと。 自分で自分を愛せない時も、 その絶対的な愛はいつも自分を包んでいるんだと。 その中でころころと転がりながら生きているんだと。
今はそれでよかった。 それを感じられるだけで。
あたたかくてやさしい、不思議なインナートリップだった。 また疲れたら行こう、あの場所へ。 あのおばあさんのところへ。
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