おひさまの日記
日記インデックス|前の日の日記を読む|次の日の日記を読む
この前のお休みに、約5キロ離れた実家まで歩いて帰ってみた。 そんな気分だったので。 実家の近くのお店で友達とランチの約束をしていたのだ。
カメラバッグをかついで、てくてく歩いた。 通っていた小学校、裏路地の通学路、遠い記憶がたくさんよみがえってきた。 今見るととても狭い懐かしい道を、写真に撮ったり。
そんな時、ひとりのおじいさんが道を尋ねてきた。
「あの、○○はどこですか?」
「その交差点を右に曲がってまっすぐ行くと右に見えますよ」
「ありがとう。 ところで、あなた、プロのカメラマンでしょう?」
「え? いや、まあ、趣味も兼ねて…」
意味不明な回答をした。
「僕は画家になりたくて若い頃にフランスに行ったんですよ。 芸術はいい、僕は才能ないからあきらめたけど、あはははは」
おじいさんは手を振りながら去っていった。
約束より早く行って写真を撮ろうと思っていたので、 実家の裏のお寺に寄ってみた。
そこでカメラを構えたら、後ろから声がした。
「あのー」
振り返ると、コンデジ(コンパクトデジタルカメラ)を持ったおじいさんが立っていた。
「はい?」
「プロのカメラマンだよね」
「え?」
「あのね、教えてほしいの。 このカメラね、息子に買ってもらったんだけど、使い方がわからなくて」
あら、同じこと言う人がふたり目。 面白い。 さっきのおじいさんと言い、このおじいさんと言い、 カメラ持ってるだけでプロに見えるのかな。
コンデジの使い方説明したけど、 わからないからもういいと言い出した。
「適当に撮ってカメラ屋に持って行ってプリントしてもらうべ」
うーん、いいなぁ、アバウトで(笑)
待ち合わせの時間になった。 ランチするお店に向かった。 結局、写真撮れなかった(爆)
友達とは数年ぶり。 お店の前で彼女は待っていた。 ふたりしてわぁーっと駆け寄った。
開口一番、彼女が言った。
「郵便局で働いてるってメールに書いてあったけど、 見えないよね、カメラマンって感じだよね」
あれあれあれ、同じようなことを言う人が3人目(笑) 面白いなぁ。
私達は上げ膳据え膳で和食を楽しみ、おしゃべりで大いに盛り上がり、 また絶対ランチしようね、って約束して別れた。
ほんのわずかの間に、全く接点のない3人から同じようなことを言われた。
これは私を見守る存在からのメッセージで、 写真の道に進むように言われてるんだ…とは思わなかった。
でも、偶然だとも、意味がないとも、思わなかった。 それは、私にとって、ひとつのスイッチだったから。
3人からの言葉は、まあ、私の受け取り方なんだけど、 ただ生活のために毎日をなんとなく過ごしている自分を、 きっぱりと否定してくれたように思えたのだ。 それ、仮の姿だよ、あなたはこう見えるよ、って。 都合のいい解釈かもしれないけど、すごく励まされた。 まだ行く場所があるよ、まだやることがあるよ、って言われたみたいで。
そして、それは私のセルフイメージを変えてくれた。 今の自分から、いつかここではないどこかにいる自分へと。
自分の中で、自分が誰であるかという部分において、 郵便局のおばちゃんが定着しそうになっていたし、 すっかり自分の世界すべてが郵便局になりつつあったけど、 それはプロセスであって最終的には違うことしたいんだよな… たとえ今はそれが何かわからなくても、どこかに向かって行きたいんだよな…
そんな大切なことをハッと思い出すこともできた。
セルフイメージが自分を作っていくという大切なことも忘れたまま、 望まない自分をセルフイメージとして持って、 いつの間にかそれが自分だと信じて、 信じたからそれが事実となって、 私は混沌の中にいたような気がする。
3人の言葉が他愛のない言葉遊びのようなものであったとしても、 私の内側の世界を大きく揺るがすには十分だった。
そういう意味では光の存在から与えられたギフトだと思っている。
帰り道は、来る時よりもうんと清々しかった。
それからも私の毎日はいつもと変わらず過ぎてゆく。 でも、私の内側は以前とはちょっと違っている。 自分がどうあるか、どうありたいかを、選び直せたような気がしたから。
それだけでこんなにも気分が違うんだね。 ここから始まる何か、感じていこう、体験していこう。
時々人生をリセットする時ってある。 まさに、今も。
|