おひさまの日記
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2009年08月13日(木) 生きてきた証

年齢を重ねるということは、わかることが増えるということだと思う。

今日は迎え盆、家族でお墓参りに行った。
その時、父の兄、私にとってはおじさんに当たる人、宏兄さんの話になった。
彼は戦争で亡くなった。
海軍にいて乗っていた船が撃沈されたそうだ。

彼が亡くなった朝、父は夢を見た。

電車に乗った宏兄さんが、

「俺は遠くに行かなくちゃならない。
 お父さんとお母さんを頼んだぞ」

そう言って窓から手を振った。
父は、

「兄ちゃん、行かないで!」

と、電車を追いかけたが、はいていた下駄の歯が折れて転び、
電車はそのまま遠くに走り去っていった。

そんな夢。

両親にその話をすると、縁起でもないことを言うなと怒られたそうだ。
しばらくして、兄の戦死の悲しい知らせが届き、
乗っていた船が沈没したのが、父がその夢を見た日だとわかったのだという。

私はその話を小さい頃に聞かされた。
この世にはそんな不思議なことがあるんだと感じ入ったものだった。

今、改めて、お墓に手を合わせ、そんな話を思い出す時、
私は小さい頃には感じなかったたくさんのことを感じる。

宏兄さん、戦争に行くのがどんなにかイヤだっただろう…
立派に出征したと聞いたけど、本当なら逃げ出したかったんじゃないだろうか…
乗っていた船が攻撃を受けて絶望的だとわかった時どんな思いだっただろう…
体験しない者には察することのできない壮絶な苦しみがあったはず…

そして、家族を戦地に送り出す家族の張り裂けそうな思い…
その家族が戻らぬ人となった時の言葉にならない悲しみ…
私が知ることのない痛みを背負ったおじいちゃんとおばあちゃん、父とその兄弟、
壮絶な体験と感情を背負いながら、みんなみんな生き抜いてきたんだ…

そうしたことに思いを馳せると、
胸が詰まるような感覚を覚え、目の奥の方が熱くなる。
お盆はひとつの行事とも言えるものだけれど、
それがとても大切で重みのあるものだと感じる。
大切にしていきたいものだと思った。

子供の頃はこうした考えも感覚も感情もなかった。
何もわからなかった。
でも、今は、昔わからなかったことがわかるようになった。
私は年齢を重ねたのだな…と思った。
それは、生きて多くを体験したことで、確実に積み重ねたものがあるということ。
それがその人に深みを与え、人生に重みが増すのだと思う。

わからないことがわかるようになる、それは、自分が生きてきた証だと思った。
自分なんてダメだ、そう思うこともまだまだある。
けれど、わかること、感じられることが増えた自分を知った時、
よく頑張って生きてきたね、自分にそう言いたい気持ちになった。
切なくてうれしい涙で目頭が熱くなった。


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