おひさまの日記
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2004年06月19日(土) 犬の涙

今日、初めて犬の涙を見た。
ある家で飼っているタローという柴犬。

タローがいる家に用事があり行ってみると、
いまだにまだらに残った冬毛が、
夏毛と混じってでこぼこになっている。
そのみじめな様子が不憫になり、
飼い主の許可をもらってブラッシングをしてやった。

ずいぶん長いこと手を入れてもらっていない様子だった。
しばらくブラッシングを続ける。
とかす度にもこもこした冬毛がごっそりと抜け、
タローはだんだんスマートになってきた。
いつもはぴょんぴょん跳ねてじゃれてくるタローが妙におとなしい。
ふと、タローの顔を見て、私は驚いた。

つぶらな瞳がうるうるし、
両目から一筋の涙が伝って落ちていたのだ。
タローが泣いていた。
鼻がひくひくし、まるで人間と同じだった。
なんて悲しそうな顔をするのだろう。

私は知っていた。
タローはほとんど散歩に連れて行ってもらっていない。
いつも湿った薄暗い場所につながれている。
ほとんど人に触れてもらうこともない。
1日2回、決まった時間にドライフードと水をもらい、
つながれた場所でただ暮らす毎日。
体は汚れ、喉元は泥がついて固まり毛が束になっている。
だからとても臭く、体中がベタベタしている。

長い時間かけて、
触れて、ブラッシングして、
話しかけて、抱きしめて、
そうしていたら、泣き出したタロー。

犬も泣くのだ。
心が、感情があるのだ。
人間と同じだ。

私はタローじゃないからよくわからないけど、
タローは、寂しいかったんじゃ、辛かったんじゃないだろうか、
心に痛みがあったんじゃないだろうか、
そんなことを考えた。

飼い主にタローが泣いた話をすると、
彼らは興味がない様子だった。

彼らは彼らなりにタローをかわいがっているのだとは思う。
彼らなりに。

「犬はわからないんだから、いいんだよ」
散歩して、ブラッシングしたり、遊んであげたりしたら?
そう言った私に飼い主が返してきた言葉だった。

彼らなりの正しさのもと、タローを飼っているのだろう。
けれど、私にタローの涙はあまりに痛かった。

帰り際、また遊びにくるね、そう言ってタローを抱きしめた。
いつもはぴょんぴょん跳ねてじゃれてくるタローが、
あの悲しい顔のまま、動かず立ち尽くしていた。

許されるものならば、そのままタローを連れて帰りたい気持ちだった。


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