おひさまの日記
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ゆうべ、アンナがベッドの中で「ママにお話したいことがある」と言った。
「ママはどうしてあんなに怒るんだろう、ってずっと考えてたんだよ。 アンナはママが怒っている時、言いたいことが言えなくなっちゃう。 こんなこと言ったらママ怒るかな、って思っちゃう。 ママがにっこりの時は言えるけど、怒ってるときは言えないんだよ。 ママが怒ってる時やこわい顔してる時、アンナとってもこわいの。 どうしよう、どうしよう、って思っちゃう。 今日ね、ぶくぶくのお風呂に入ったら、その気持ち思い出せたんだよ。 今まで心の奥にしまってあったの」
昨日、近所のお風呂屋で、アンナをだっこしてジャグジーにつかりながら、 いつも自分の機嫌でひどく怒ってしまうことで彼女の傷つけてると感じ、 いわゆる「だっこ法」のようなことをしたのだ。 ママに怒られると恐いね、イヤな気持ちだね、その気持ち感じてごらん、 そう言って、「こわい」と声に出して言わせた。 彼女はすくむように私にしがみつき「こわいよー、こわいよー」と繰り返した。 そして、悲しい気持ちになったと言った。 ママに怒られないように頑張って、こわい気持ちを忘れてしまってはいけないよ、 こわいっていうアンナの気持ちが一番大切だから感じてあげるんだよ、 私は彼女にそう伝えた。 アンナは私にぎゅうっとしがみつき、うん、と小さく言った。
そんな夜、アンナは急に語り始めた。
今まで怒られた時の「こわい」を感じないようにしていたみたいだ。 「こわい」を感じる前に、私の顔色を見て行動することに意識が向いていたのだろう。 「こわい」ことを認識してくれた彼女が嬉しかった。 ひどく怒ることはまだやめられないけれど、 彼女が感情を蓄積し、封印することを、少しでも止められたような気がして。
そんなアンナに私は言った。 「ママね、本当はアンナと仲良しでいたいのに、 なんだかよくわからないけど、アンナのこと怒っちゃうんだ。 ひどいことばっかり言っちゃう。 なんでそんなことしちゃうんだろう? ママもそんなことしたくないんだよ。 したくないのにしちゃうから、とっても辛いんだ」
するとアンナが言った。 「ちょっと待って。今、心に聞いてみるから」 そして、しばらく目を閉じた後、続けた。 「あのね、ママは、小さい頃じいちゃんにいっぱい怒られたでしょ? ママはちっとも悪くないのに怒られたから悲しかったんだよ。 だからだよ。 心がそう言ってた。 ママは悪くなかったのに怒られて悲しかったよね」
え!?という驚きと共に、私の中で何かが、ガシャン!、と音を立てた。 みるみるうちに涙が溢れ出し、私はうわぁーんと声を上げて泣いた。
「ほぉら、ママ、やっぱり悲しかったんだよ。 泣けなかったんだよね。 いっぱい泣いていいよ。 泣きな、辛かったね、悲しかったね、こわかったね」
小さな手が私の髪をなでる。
「アンナね、生まれる前、太陽にいてね、いつもママを見てたよ。 ママが小さい頃、じいちゃんに悪くないのに怒られて、でも泣けないのを見て、 ママを泣かせてあげなくちゃ、って思って、ママのお腹に入ったんだよ。 お空からいつも、ママ、頑張れ!って応援してたの。 ママはパパにも言えないから、アンナが来たんだよ。 他のお母さんじゃダメだったんだ、ママじゃなきゃ」
私はその言葉を子供の作り話だとはもはや思えず、 涙をぽろぽろこぼしながら聞き入った。 いや、作り話だっていい、 私の心の傷に染み渡り癒していくこの子の言葉は一体なんだろう!? 彼女の言葉が、私の心の一番奥にある扉を開いたように感じた。 誰かに言ってほしかったのだ、「お前は悪くないよ」と。 私はずっとずっとその言葉を待っていたのだと感じた。 涙が止まらなかった。 そう、私、悪くないんだ!
私は赤ちゃんのようにアンナの胸に顔を埋めてしばらく泣いた。 アンナの懐は、広い海のようでもあり、やさしく穏やかだった。 私はとても大きなものに抱かれているような気持ちだった。
しばらく泣いた後、私はアンナに尋ねた。 「じいちゃんに怒られて悲しかった小さい頃のママはどこにいるの?」
アンナは答えた。 「小さいママはうんと遠くでえんえんって泣いてたんだよ。 小さいママは大人になりたいの。 ママになりたいんだよ」
私が「小さいママをここに呼んであげて」と言うと、 「うーんとね…できないよ、すごく遠くだもの」 とアンナが言う。 「でもね、今は神様の所でにこにこしているから大丈夫だよ」
私は更に尋ねた。 「ママはどうしたらアンナをひどく怒るのをやめられるの? どうしたらいい?」
アンナはあっさり「わからない」と言った。 でも、こう続けた。 「ママ、アンナが『玉』を作ってあげるよ。 虹みたいな光の玉なんだよ」 そう言うと向こうを向いて、何やら作る仕種をしている。 「これには天使の心が入ってて、ママを幸せにしてくれるの。 これを入れてあげるよ」 そう言って、見えない虹色の光の玉を私の胸の辺りに入れてくれた。 「これで大丈夫」
小さな手で私の胸の辺りをなでなでしているアンナ。 なんだかふぅ…と力が抜けた。 彼女を抱きしめると、何度もありがとうを伝えた。 嬉しそうに笑っていた彼女は、やがて眠りに落ちた。
光の玉だの、天使だの、生まれる前は空にいて見ていたただの、 アンナはどうして不可思議なことを言うのだろう? 教えてもいないのに、みんな宇宙にいる、と言ったこともあった。 これを読んだ人は、ママがいつも言ってるから真似してるだけじゃ? そう思うかもしれないけど、私は普段そういうことを言わないのだ。 あまりにも意識が空ばかり向いた子になってほしくないからだ。
それに、私の父との出来事でのその時の私の気持ちを、 その時の恐れや、悲しみや、 「私は悪くない」と「私はダメな子」のハザマで苦しんだ私の気持ちを、 アンナはどうして知っているのだろう?
アンナは私の専属セラピストでもあるかのようだ。 彼女が太陽から私を見ていてくれて、そして、ここに降りて来てくれたから、 私はSunGoddess(太陽の女神)を立ち上げ、 こうしてセラピーを展開しているのかもしれないと思える。 セッションを、アンナと二人羽織りでやってるようなもんだ。 私は「太陽」との縁が深いのだと感じる。 よく「太陽っぽい」とか、「太陽のイメージ」と言われる。 それも、アンナが太陽にいたと言うように、太陽にゆかりがあるからだろうか?
「ママを泣かせるためにお腹に入った」 アンナの言葉が本当だとしたら、彼女は私を癒すためにこの世界に舞い降りたのだ。 そう信じているだけで、私は強くなれる。 親バカだと言われてもいい、私はそう信じていたい。 きっと世界中の子供がそうなのだ。 親を助けるために生まれてくるのだ。 親の気付きのために、自己回帰のために、自らの痛みもいとわず、 愛を届けに来るのだ。
私のアンナ。 時に崇高で、時に無邪気で純真な、私の宝物。 あなたに会えてよかった。
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