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くもりのち晴れ
美雨
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2001年12月05日(水)
マザコン男にワガママ女

 
 彼のどこが好きだったんだろう。
 
 とにかく優しかった。親想いで、周りにも気を配って。(裏をかえせば、優柔不断でマザコンで、八方美人ともとれるけれど)
 悪口は言わなかった。私も言わない方だけど、たまにふたりの共通の敵(笑)に対して批判すると、「でも、彼の気持ちもわかるし・・・」と悲しそうにしていた。
 それから、メールの返信のタイトルに、一回も「Re」を使ったことがなかった。毎回、きちんとタイトルをつけてくるので感心していた。(もしかして、「返信」の仕方を知らなかったのかも・・・)
 電話で話してると、「くふん」と笑う、その声がセクシーで好きだった。

 そんな「優しい」彼だったので、私はよくいらいらした。
 しょーもない会社のやぼ用につきあわされ、デートの約束ができなかったり。会社や母親の用事を優先できるように、私との計画を立てようとしなかったり。
 彼にとっては世の中は、「会社」と「親」と「趣味」と「友達」と、そして「彼女」でできていて、どれも「普通に存在しているもの」であって欲しかったそうだ。どれが一番というものでもなく。
 
 私はそれががまんできなかった。私が一番であって欲しかった。結婚してから、あるいは、付き合って数年が経ってからならまだわかる。数ヶ月にしかならないのに、まだ蜜月なのに、そんな風に遇されても困る。悲しかった。そんなに好かれていないのかな?軽んじられてるのかな?そんな想いが募って、つい彼を束縛した。「いつ逢えるのか、時間をはっきり決めて」−たったそれだけの希望だったのだけど、彼にはそれが苦痛だったらしい。

 あることがきっかけで、彼の私への熱が冷めて以来、その「束縛感」は彼の中でますます強くなっていったようだった。
 
 ある日彼からメールが届いた。「別れよう」という内容だった。信じられなかった。冷却期間はおいていたけど、それは今後に繋げるためのものであったはず。そんなに簡単にあきらめるの?あっけにとられた。そして、メールで終わらせようとする彼にあきれた。男を見る目がなかった自分にもあきれた。
 すぐに「わかった。さようなら」と返信した。ほかに何が言えるというのだろう。冷めてしまった気持ちを繋ぎとめることはできない。それは自分の経験からわかる。
 でも、それが間違いだった。納得できなければ、納得のいくまで話し合うべきだった。
 4ケ月経ったある日、彼と話をする機会があった。彼は、別れのメールを見た私から、当然「納得できない」という電話があるはずと思っていたそうだ。(そんなことできるはずもないのに。)
 そして、私が今でも彼のことを想っていること、メールでの別れに納得がいっていないことを知って、4時間近く私に付き合ってくれた。
 お互いの気持ちの行き違いについて。話しながら、私は彼がそんな風に思っていたとは思いもよらなかったし、ひとりで勘違いして苛立っていたことにも気づいた。彼もまた、彼の理想の彼女とのギャップを埋める努力をしなかったことに気づいた。
 もっとあんな風に話したかった。溝を埋めていきたかった。でももう遅かった。「もう一度やりなおそう」という私に、彼は「ごめんなさい」と言った。「もう気持ちが冷めてしまったから」と。気持ちが冷めてしまっては付き合えないのはわかる。だから、あきらめた。悔しいけど、友達になることにした。
 「なんでこんなひどい、あんなフリ方をしてあなたを傷つけたヤツのことを好きでいてくれるの?」と彼は言った。ほんとになぜかわからない。彼のことを軽蔑すらするのに、まだ好きな自分ををバカだと思う。あきらめたつもりでも、「あのとき"別れない"ってがんばっておけば・・・!」なんて思って悔やんでしまう。
 逃した魚はでかい。私はただ単に、彼と付き合っていた頃の幸福な時間を惜しんでいるのかもしれない。彼に大事にされていた自分がなくなったことが悲しいのかもしれない。だから、時間が経って、彼のことをなんとも思わなくなるまで待つしかないのだと思う。みんなそうやってきているのだし。
 
 「酸っぱいぶどう」ではないけど、彼と私はたぶん根本的なところで理解し合えなかったんだろうと思う。たとえば彼はよく「○○してあげたい」と言っていた。私は「自分が○○したいから、する」の方が好き。彼は「守ってあげたい」と思うらしいが、私は別に守ってもらいたいとは思わない。「自分がしたいこと」をして欲しいのに、いつのまにか「私のために○○しなくちゃいけない」になって、そして彼はひとりで疲れてしまったらしい。私はただそばにいて欲しかっただけなのに。
 
 でも、私の話に4時間付き合ってくれた彼に感謝している。ちゃんと話をしてくれてありがとう。結局ふたりはうまくいかなかったんだと自分を納得させることができました。依怙地で理屈っぽい私が優しい彼を疲れさせたんだと自信をなくしていたので。
 
 別れ話は相手が納得するまで、が相手に対する礼儀だと、あらためて思った次第です。