思えば私は やはり少し調子に 乗っていたのかもしれない 私達は生まれると 画一的な教育を受け 義務教育を終えて わずかなモラトリアムを経て 社会に放りだされ 民主主義の元に 競争社会に強制参加 勝ち抜いていく者もあれば 脱落するものもあり されど 社会において 立ち止まり 手を貸し 後ろを振り返ることは許されず 我々は留まることなく 波に飲まれ 出る杭は叩かれ 出ない杭は容赦なく排除され ゴールの見えない その狭間において 考える事も 思い悩む隙すら与えられず ただ ただ漠然と 漠然とした なにか に向かって 走らざるを余儀なくされ ほんの少し 束の間の休息 今年に入り 気づけばもう5月 私を取り巻く環境は 一向に変わらねど 私の精神状態はひとえに良く 束の間の休息が心地よかった あまつさえ 見えない漠然としたなにかでさえ 悟ったような気もしていた しかし 慣れが来ると ついだれてしまう人間 自分でも気づかない間に 束の間の休息の心地よさに 胡座を掻いてしまい やはり 調子に乗っていた ということだろう 久々に 出る杭を叩かれ へこんでいた私に 一本のAVが焼きついた 毎年何人もの女性が AVに出演し 何人もの女性が消えて行く 運良く頂点に輝いた女優ですら その寿命は蝉の様に短いもので 当然年間の出荷量は想像を超え 当然ビデオ屋の棚には 随時新作が週変わりで入れ替わり立ち代り その都度新作は めまぐるしく旧作へと変化し 挙句棚から消えてしまう そんな中 たまたま旧作の ジャンル分けも 名前分けもされず その他の雑多コーナー ニューハーフモノと 獣姦モノの間に挟まれていた そのAVは もう10年近くも前の作品で 当時から 自分にコンプレックスを抱き 不安神経症の影が見え隠れしていた頃 ビデオの中で彼女は 私同様ちんこコンプレックスに悩む モザイク越しでも 決して大きいとは言えない 相手の素人の男性に 笑顔で言い切った 「大丈夫。そんなこと気にしなくても 君のは十分大きいんだよ。 十分気持ちいいんだから。」 その一言は 画面を通り越し 私の心にガツンと響いた 何か心がちんこ以上に 熱いものを感じた 彼女はその後数本のAVに出演し そして消えた。 今 十年近くの年月を経て 調子に乗り走りすぎて 壁にぶつかり へこむ私の目の前に 普段はその他コーナーなど 気にもせず 新作ばかり狩りまくっていた私なのに なぜか引き付けられた 十年近くの時を経て出会う 邂逅 だったのだなと思う 十年近くの時を経ても ビデオの中の彼女は 笑顔で 「大丈夫。そんなこと気にしなくても 君のは十分大きいんだよ。 十分気持ちいいんだから。」 と言い切っていた。 初心忘るるべからず そう ちんこに 私に 戒めながらも 彼女に答えたい やあ久しぶり 僕のちんこは相変わらずだよ。 それでも意外と どうにかなってるよ。
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