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僕の、場所。

今日の僕は誰だろう。



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A rainy night

雨の中、君は濡れてやってきた。
あははと笑って、髪や顎や鼻や手から滴る水滴。
私は慌ててタオルを君に被せる。



「どうしたの?」

「や、お前に会いたくなってな」


だから、雨の中を傘も差さずに来たというの?

「前から思ってたけど、君って馬鹿だね」

長い付き合いだけど、本当にそう思う。
何を考えてるのかさっぱり分からない。
なんで、こんなに私の事を好いてくれるんだろう。こんな私なのに。


「馬鹿とかいうなよ、そこー」

いいながら髪をわしゃわしゃ。犬みたくて可愛い。

「いいよ、早く上がってよ。風邪なんてひかれたら困る」
「おーサンキュー」
「最初からそのつもりだったんでしょ?」
「へへ、まあな」
「もう…」

良いながら、私はもうカップに紅茶のパックを入れている。
この雨が降り出したのは10分前。君の家からここまで歩くと20分。走れば良いやとか考えたのが目に浮かぶ。

「っあー俺紅茶ってだめなんだけど」
「残念だったね、うちにはコーヒー無いんだ、分かってるでしょ」
「俺のために常備しといてくれないのか?」

そう言って、ふわりと湿ったバスタオルで包まれる。近くに君と雨の匂い。

「やだもーやめてよ、濡れてて嫌」
「良いじゃんかよ俺お前愛してるぜ」

「…もう。やめてよ、嬉しくなるでしょ。ていうか愛してるならその濡れたタオルちゃんと洗濯機に入れておいて」
「へーい」


ぺったぺったとお客さん用スリッパ。というか、既にあの人専用。
少し湿気のうつったTシャツにしかめっ面を作って、頭を振る。

どうしよう、まだ動悸がおさまらない。


「なー」
「え、何ー?」
「シャワー借りて良い?」
「…………うん良いよもう何でも勝手に使ってー」


蛇口をひねる音、が聞こえたと思ったら雨の音に同化してシャワーが床を打つ音。早い。


私は紅茶を入れて一人で君を待つ。
ちょっとだけ髪を手櫛で直す。変な服じゃなかったかな。良いよね普段着だもん。
放置してあった雑誌をラグへ。何に使ったかなと思いながら鋏を引き出しに。
BGMは何にしようかな、とCDラックと君の趣味とを頭に描く。


砂糖が溶けていく紅茶を見ながら、やっぱり次の買い物でコーヒーも見てこようと考えてみたり。
ほら、だってもう音がやんだ。さっきと違う湿気を保ったままの君が、もうすぐやってくるね。



こんな雨なら、降り止まなくてもいいかもしれない。


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