2001年08月07日(火) |
火曜日/午前:抱き締めてくれる? |
火曜日の朝。 待ち合わせの時間には少し遅れそうだったので、電話を入れる。 はじめて声を聞く。
おはよう。ごめん少し遅れる。今どこ?
ん?今、向かってる最中。
待ち合わせ場所のホテルのラウンジはガラガラで、 奥の方にひとりで座ってる人が見えた。
ああ、アレだわ。
彼の向いの椅子に座る。 『遅れてごめんね。おはよう。』 いえいえ、来てくれただけで、嬉しいです。
目の前の男の子は まだ男の子という感じで、 26と言う年令よりもずっと若く見えて 話す事はとても大人びていて いろんな話をした。
ほとんど、別れた彼の事だったかもしれない。 でも、それも嫌な顔をせずに、彼は聞く。 時折入る、感想はとても客観的で、私情をまったく挟まない。
そうやって、1時間半程すごして、あたしは一旦家へ帰る。 地下駐車場まで一緒におりる。
午後からどうする?午後も逢う?
俺はそうして貰ったら嬉しい。
じゃぁ、そうしましょう。
でも、どこへ行くかなかなか決まらなくて、 車の中で話をしようと、ふたりであたしの車に乗り込む。
どうするどうする? どうしよう。 とりあえず、2台で動くのはね。 じゃぁ、俺のうちの近くまで迎えに来て。 ん?いいよ。そのかわり、どこ行くか考えておいてね。
そうして話が決まった。
じゃぁ、そろそろ帰る。あたし。
うん。ありがとう。
あのさ。
ん?
あたしね、凹んでるの。抱き締めてくれる?
masayaは笑顔で頷く。 彼に抱き締められて、すこし落ち着いて、すこし泣きそうになった。
ありがとう。ごめんね。
いえいえ。どういたしまして。 俺が、抱き締めたかったから。 こちらこそ、ありがとう。
そう言って、もう一度抱き締めてくれた。 そうして、キスをしてくれた。 癒されるような気がした。�
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午後:=青い部屋=
午後3時半過ぎにmasayaの家の近くまで迎えに行く。 少し遅れてやってきた彼があたしの車に乗り込む。
ねぇ、どこ行く?
ん?結局考えてない。
うそ?
ほんと。
どうしよっか。
どうしよっか。
俺の家に来てもいいけど。暑いよ。エアコンないから。 そうなの?あたし大丈夫よ。扇風機の人だから。
そうして、あたしは逢った初日に彼の家に行く事になった。 どうしてだろう。 男と別れたからだろうか? 自暴自棄になってるのだろうか?
確かに、えいっと言うような気持ちはあった。 masayaといると単純に楽しいと思う気持ちももちろんあった。
築何年たつんだろう。 今どき珍しい文化住宅。 1階の端から二番目。
部屋に入ると小さな台所と、四畳半と六畳の和室。 奥の六畳間に入ると、そこは
=青い部屋=だった。
壁は青い砂壁。 ベッドとステレオとテレビと扇風機。 余計な物は何もない。 ベッドシーツも薄いブルーだった。
すごいね。青い砂壁だね。
そう言いながらベッドにもたれるように、あたしは畳の上に座る。 masayaもあたしの隣に座る。
抱き締められてキスされて 青い空間の中であたしは癒されてゆく。
ふたりでベッドに横になって 彼は延々とあたしを抱き締めて、キスをして 優しく撫でる。髪を腕を身体を。 徐々に落ち着いて行く。 傷付いてボロボロになっていた心が回復するような気がする。
慰めてくれてるの?
そう思いながら、聞けなくて。 そのままあたしは、masayaに抱かれた。
彼の愛撫は優しい。 彼のキスは優しい。
あたしの別れた男は、いつも責めるようなセックスで、 いつも犯されるように抱かれて そういうのにあたしは慣らされていて。 だから彼とのセックスは少し物足りないような気もして。 でも、穏やかに時間は流れていく。
彼のペニスがあたしの中に入って来る時 思わず呻き声をあげてしまう。すごい快感。 自然に身体が動く。 もっと奥へと彼が入って来れるように。
はじめてだと言うのに、あたしは恥ずかしい程の声をあげて 何度もイク。 あたしの汗とmasayaの汗と体液と粘液とが 卑猥な音を立てる。 部屋にはあたしの声が響いている。
あたしは、別れた男以外では もう快感を感じる事はないのではないかと そう思っていたのに。 荒々しいセックスに慣らされた躯は 普通のセックスでは満たされないのではないかと そう思っていたのに。
masayaに抱かれて、何度もイク自分を発見して 寂しいようなホッとしたような、そんな複雑な気持ちだった。
セックスが終わった後も 彼はあたしを抱き締めてくれる。 腕枕をして、抱き寄せて、キスして。 不思議な安心感。 いつも不安を抱えた恋をしていたあたしには とても居心地の良い時間だった。
帰り仕度をして、駐車場まで送ってもらう。
ありがとうね。
いえ、こちらこそ。
あたしはこれが最初で最後になるかもしれないと思って 『またね』と言う言葉を言わなかった。 彼からそう言われる事を少しだけ期待して。
でも、彼は『またね』とは言わなかった。�
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夕方:ごめんよ。
少しの失望感を抱えて家に帰ったあたしは、 いつものようにPCを立ち上げる。
メッセンジャーにmasayaがいた。
おかえり。 ただいま。
何を話したんだろう。 詳しい事は覚えてない。
ただ、あたしは、こう言った。
ね、またねって言わなかったよね。
あ。ごめんよごめんよ。忘れてた。
忘れてたの?
そうだよ。そういうとこにぶいんだよ。
じゃぁ、またね。はあるの?
とーぜん。
とーぜんなの?
ん?とーぜんでしょう。
そう言われて、ほっとするあたしがいた。
ありがとう。癒してくれて。
ん?そうか。そう思ってくれると嬉しいよ。
うん。すごく癒された。
俺は癒しているつもりはないけどね。
勝手に癒されてるの。
勝手に癒されてくれ。
あたしは、またすぐに逢いに行こうとそう思った。 彼に逢いたいとそう思った。 あの=青い部屋=にもう一度行きたいと。 水の中のような、あの青い部屋に。
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