DEAD OR BASEBALL!

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Vol.168 2004年プロ野球戦力診断 近鉄編
2004年01月28日(水)

<投手分析>
先発……岩隈、パウエル、バーン、高村、阿部健、香月、川尻、加藤、戎
右中継ぎ……岡本、愛敬、藤崎、宮本
左中継ぎ……吉田、小池、山本、栗田
クローザー……福盛

 一昨年は12球団ブービーだったチーム完投数9が、昨年1年で18に倍増した。チーム防御率もリーグ2位の4.30と、以前ほどの極端な打高投低ムードは薄らいできたように見える。その原動力は、昨期15勝の岩隈と14勝のパウエルという2枚エース。先発の軸がしっかりと確立できたことで、投手陣全体のムードがガラリと変わった印象を受ける。

 今年もその2人がエース。8勝から上積みが望めるバーン、昨期終盤に台頭した阿部健が続き、自由枠獲得の香月に阪神からトレードで移籍の川尻まで数えれば、先発陣の顔ぶれは相当充実している。若手、ベテラン、外国人のバランスも良く、様々な面から見て香月と川尻の加入は相当に大きい。特に期待したいのが川尻で、星野政権下では冷や飯を食わされた感があるが、持っている球自体に衰えは見られず、振り回すタイプの多いパ・リーグでは10勝しても笑えない力量はある。実績組の高村や加藤がこの競争に割って入るのは簡単ではない。強いて言えば、左投手が不足していることがネックか。

 昨年大塚を失ったリリーフ陣は、横浜からトレード移籍の福盛がどれだけ働けるかで陣容が変わってくる筈。もし福盛が軸として動ければそれだけで随分と遣り繰りは楽になるが、もし裏目に出れば昨年のように手を変え品を変えで凌いでいくことになりそう。

 昨期は小池が65試合、吉田がクローザー兼任で60試合に登板しブルペンを支えたが、年齢的にも同じ活躍は期待しにくいというのが本音。岡本が一昨年ほどの神通力を取り戻せれば話は早いが、そうでないなら右で最も安定感のあった三沢を失った以上、藤崎や宮本という新興勢力にかかる期待は途端に大きくなる。

診断……バランスの取れた先発陣は充実の顔触れで、大きな不安は故障以外に見当たらない。香月と川尻が額面通りに稼げば、ここ数年の先発陣とは様相を変えた投手力を見せつけるかも。確固たるクローザー不在のリリーフ陣は、福盛に対する期待値が大きいが、岡本の復調も同じぐらいに大きい要素。



<野手分析>
1(中)大村
2(遊)阿部真
3(左)川口
4(三)中村
5(右)磯部
6(一)吉岡
7(二)星野
8(指)北川
9(捕)藤井

控え
捕手……的山、長坂
内野手……水口、前田、永池、山下
外野手……下山、鷹野、益田、森谷、バーンズ

 最大の焦点はローズの穴がどのような影響を与えるか、ということ。結論から先に言えば、中村さえ復調すればそこまでローズの穴は目立たないと見る。昨期は中村がドン底から脱せない中、大村や磯部の復調があり、吉岡の.300到達や星野、北川ら控え層の活躍、阿部真の成長で打線の地力が底上げされた感すらある。ローズが抜けるのは確かに痛手だが、それが致命傷にはならないだけの層の厚さが「いてまえ打線」にはある。

 これまでとはイメージの違う怖さを感じさせた昨期の近鉄打線だが、それは中村が不振の中でリーグ2位の695打点を稼いだこと以上に、一昨年32で12球団ダントツ最下位だった盗塁数を83まで持ち直させた点が大きい。大村が走る意欲を取り戻し1盗塁→27盗塁と躍進し、走るイメージがなかった星野も2ケタ10盗塁で成功率は.909と新たな味を出した。大村は.300も復帰し、16本塁打に61打点の打棒を1年通じて発揮できれば、やっとリードオフマンとして収まるところに収まるかなという感。

 今年もこの流れが続くかは要注目ポイントだが、ローズの退団がそのベクトルを加速させる可能性は低くない。新外国人バーンズがローズと同じだけの数字を稼げれば話は別だが。

 正捕手が固定しきれない弱点は毎年言われていることだが、今年もその悩みは抱えたままシーズン開幕を迎えそうだ。昨期はバットで猛威を振るった北川が正捕手に収まれば手っ取り早いが、昨期は99試合出場でマスクをかぶったのは僅か15試合。キャンプで誰が抜け出すか、という問題ではなく、今年も複数体制で臨むことになりそう。

診断……ローズの抜けた穴はカバーできるだけの人材がいる。ポジション的にも、同じ左打者の川口がそのまま3番レフトに入れば話は早いが、下山、益田、鷹野、バーンズもいてこの競争は見所の一つ。捕手は心配だが、サブメンバーの失速があると方々の目論見が崩れそうなのは少し怖い要素。中村の復調は絶対条件。



<総合分析>
 投手力、特に実力派の右投手が揃う先発陣はかなり期待できるだけに、ここ数年の近鉄とは違う形の強さが見られる期待はある。岩隈や阿部健に象徴されるように、若手の抜擢に意欲と実績のあるチームだけに、地力がついてきた今年は不気味な怖さを感じる。

 ローズのことばかり言われるが、投手力や走塁力で一味違う近鉄というチームを見せられる下地は整ってきた。後は野手で若さが出てくればさらに勢いは加速する筈。今年の期待株は坂口、筧といった辺り。「いてまえ打線」という看板だけで今年の近鉄を見ていると、痛い目に遭わされること必至。



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