月の輪通信 日々の想い
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朝からアプコはお菓子作りの教室。ゲンは剣道朝稽古。 二人ひっくるめて車で送る。 今日も暑い一日。
アプコの教室が終わって、ゲンを迎えに道場へ。 3時間の稽古でクタクタのゲンが乗り込んでくると、小さな軽自動車の車内にむっと汗の匂いが充満する。 最近ゲンの汗の匂いが変わった。グイッと背が伸びて、いつの間にか私やアユコの身長も超えた。声変わりも近いようだ。 稽古のあとの汗の匂いも、オニイと同じように、大人のオトコの獣臭いにおいに変わっていくのだろう。 次に竹刀を新調するときには、一サイズ長い大人用のを買うのだという。 ケラケラとよく笑う天真爛漫のイタズラ坊主のゲンも、これから少しづつ気難しく無愛想なたくましい青年に成長していくのだろうか。 なんだかまぁ、嬉しいような寂しいような。 これが男の子の当たり前の成長。
途中のスーパーで昼ごはんの買い物を選んでレジに並ぶ。 「喉が渇いた」と物欲しそうなゲンとアプコに、 「大サービスで、ジュース。二人で一本選んでおいで」と小銭を渡す。 普段は水筒持参でめったに外では買わないペットボトル飲料。ま、厳しい稽古に頑張ったゲンと外の暑さに免じてのサービスだ。 それなら一人に1本づつ好きな飲み物を選ばせてやればいいようなものだけれど、そこはケチンボ母さんの意地の悪いところ。 あえて二人で1本。お互いの嗜好をすり合わせて一本の飲み物を選ばせるのが面白い。 炭酸好きのゲンと柑橘系嫌いのアプコが二人で選んだのはファンタグレープのボトルだった。
子ども達がまだ小さかった頃、この手の「わけあいっこ」は楽しい遊びの一部だった。 2人に缶ジュースを1本ずつとか、3人で一つのアイスクリームとか、わざと一人1個ずつ買い与えないで、子ども達に自分達でわけあいっこをさせる。ひどいときには4人にマックシェイク3つとか、4人に5個のドーナッツとか、わざと分けにくい数の好物を買って来て渡したりする。 子ども達は小さな頭をそれぞれに思い巡らせて、公平な分け方を考え込む。 一本のボトルをグルグルとみんなで回し飲みしたり、じゃんけんぽんで残りの一個を取り合ったり、わずかな出費でずいぶん長い時間楽しむことが出来たものだ。
車に戻って、久々にゲンとアプコの「半分こ」 どんな風に分けるのかなとみていたら、助手席に座ったゲンがキュッとペットボトルの蓋を開け、後ろに座ったアプコにひょいと渡して 「ホイ。アプコの好きなだけ先に飲みな。残った分をボクが飲むから」 と、いう。 お、ちょっと大人の発言じゃん。
年下のアプコと本気でじゃんけんをするでもなく、それでも先にアプコに飲ませてやればまさかアプコが自分の分よりたくさん飲み干してしまうことはないだろうということを十分に計算に入れて、兄さんぶって妹に先を譲る。 アプコはアプコで、少しでもたくさん自分が飲みたい気持ちと稽古で汗をかいてきたゲンにぃにたくさん飲ませてあげたい気持ちを天秤にかけて、チビチビと甘いジュースを味わう。 二人の微妙な気持ちの駆け引きがそれとなく伝わってきて、「上手に分け合える兄弟」に成長したのだなぁと嬉しくなる。 たった100円の炭酸飲料。 ゲンとアプコの互いを思いやる優しい気持ちと、「半分こ」を楽しむ遊び心の成長が見られた分、とってもお買い得の100円だった。
BBS
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