月の輪通信 日々の想い
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ゲン、中学入学式。 早朝ギリギリに、お下がり制服のズボンの裾あげも仕上がった。 お隣のお兄ちゃんから頂いたお下がり。オニイの時にはダブダブででか過ぎだったのに大柄なゲンにはウエストぴったりで、裾はかなり長め。悲しいかな。 バタバタしていると珍しくゲンが早くに起きてきて、 「なんだかドキドキするわ」とそそくさと制服に着替え始めた。 ズボンのベルトの通し方がわからなかったり、セーターの下に着たポロシャツの裾をズボンの中に入れるのかどうか迷ったり。初々しい右往左往。 でも、君。出かけるまでにはまだ2時間もあるよ。
学校まで徒歩では30分。「15分くらい余裕を見てでるといいよ」のアユコのアドバイスで、「うんうん、あと30分したら出るよ」と余裕で2階へ上がるゲン。 バタバタと朝の片づけをして、アユコにお昼ご飯の段取りを伝えて、ふと思い立って実家の母に電話して、「うん、そうなのよ。今日はゲンの入学式。もうとうに出かけて行ったよ。天気もまあまあだしね・・・。」とおしゃべりをして。 「さぁ、そろそろ、私も支度を・・・」と思ったら、階段のところに出かけたはずのゲンの通学カバンが置いてある。 え、まさか、カバン忘れた?あ!靴もある! 「わぁ〜!しまった!ぼ〜っとしてた!」 と2階から怒涛の如く転がり降りてくるゲン。 え?え?初日から遅刻ギリギリですか? あんなに早くから準備できていたのに? しょうがないから駅まで車で送って、「ここから走れ!」と置いてきた。 甘甘なおかあさん。
ゲンが行く公立中学には、近隣の3つの小学校から生徒が集まってくる。ゲンの母校からも3クラス分が進学するのだが、最近は私立に進学する子も増えた。この春ゲンの仲良しさんたちの多くが私立へ行った。 「なんたって生徒数が倍になるんだもの。きっとまた気の合う友達が出来るよ」と言いながら、私自身は密かに気にかかっていた。 中学になると男の子は部活つながりで友達を作ることも多いが、ゲンは剣道を続けるので運動系のクラブに入るつもりはないらしい。唯一候補に上がっている美術部は今のところ女子部員ばかりだ。 ゲンはここでもちゃんと友達を作れるだろうか。
入学式を終えて1年生の教室へ。 担任はオニイの時に見覚えのある英語の女の先生。 真新しい制服のまだ幼い顔つきの子どもたちがワイワイがやがやと新しい教科書を数えている。 次から次へ配布物が配られて、連絡事項が伝えられている。 新学期のなじみの風景。 ゲンはと見ると、出席番号順に割り当てられた一番後ろの席で、隣の小柄な男の子とひそひそ話をしたり、笑ったりしている。 「ねぇねぇ、あの子、うちの小学校の子だったっけ?」 と隣にいた同じ小学校区のおかあさんに訊く。 「いや、見かけた顔じゃないし、他の小学校の子じゃない?」 「でも、なんだかとっても仲良しさんみたいなんですけど?」 なにやらとても楽しそうで、見ているとひそひそ話に気を取られて一つ二つ先生の指示を聞き逃した模様。 おいおい、大丈夫か。
心配するこたぁ、なかった。 あとで聞くと、隣の男の子とはやはり初対面で、だけどなんだかかなり気の合いそうな子なんだとか。 人懐っこく、何事にも「第3の道を切り開く男」のゲンのことだ。 新しい環境に入っても、そこそこ居心地のいい場所を自分で見つけてしっかり根を下ろす。友達もきっとたくさん出来るだろう。 親がいちいち心配して、手を引っぱってやるお年頃でもなくなってきたらしい。 「おかあさん、なんかワクワクしてきたわ。」 これから始まる中学校生活に、胸を膨らませるゲン。 入学おめでとう。
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