月の輪通信 日々の想い
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2006年05月19日(金) そ〜ぉ?

昨日に続いてアプコのお話。

父さんのコーヒー用のシュガーポットのグラニュー糖が残り少なくなったので、代わりに小粒の角砂糖をポットいっぱいに詰めてテーブルの上に置いておいた。
「あ、コーヒーの砂糖、角砂糖になったんやね。」
と帰ってきたアユコが目ざとく見つけた。
「うん、かわったんよ」
と答えるのを、傍らでアプコがフムフムと聞いている。その生真面目な様子がおかしかったので、ちょっとからかってやろうと思って
「昨日、新しいお砂糖を入れてね、蓋を閉めるのを忘れたら、一晩で固まって角砂糖になっちゃったのよ。」
といってみた。
アプコ、一瞬目をまん丸にして、ぐっと一息飲み込んでから、
「そ〜ぉ?」
と、のどかなお答え。
決して母のほら話を頭から信じたわけではない。
かといって「うそ!」と直ちに切り返すわけでもない。

近頃、「そ〜ぉ?」はアプコの口癖。
一昔前のおっとりした良家の奥さんのような、のんびりと間延びした響きがなんともかわいくて、母はひそかに気に入っている。

「今日は長袖の上着着ていったほうがいいよ」
「そ〜ぉ?」(アタシは半袖で行きたいんだけど・・・。)

「菓子パン食べる?おなかすいてるでしょ?」
「そ〜ぉ?」(別にそうでもないけど、一応もらっといてあげる)

「アプコの絵、上手ねぇ」
「そ〜ぉ?」(それほどでもないんだけどね、照れちゃうわ。)

言われたことに納得しての返事でもない。
だからといって、「いや!」とむげに拒絶するわけでもない。
「別にいいけどね。」とか「そういう手もあるわね。」とか、ゆるゆると擦り寄るような鷹揚な返事が、おっとりマイペースのアプコらしい。

「角砂糖って、ほんとにサラサラのお砂糖を置いといたら勝手に出来るの?」
しばらく間をおいてから、アプコがおずおずと尋ねてきた。
「まさか、そんなこと」とは思いながら、母のほら話に「もしかして、ほんとに?」というひとかけらの疑念がアプコのなかに残っていたらしい。
「さぁね、どうだかね。」
意地悪い母は、最後までほらの種明かしをしない。

間延びしたアプコの「そ〜ぉ?」をもう一回聞きたくて。


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