月の輪通信 日々の想い
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師走。 年末仕事に追われる父さん。 クリスマスプレゼントの皮算用をはじめた子どもたち。 お歳暮や年賀状の手配に忙しい私。 なんとなく気ぜわしい。
ご近所のNさんのおうちが今年もクリスマスのイルミネーションを始められた。 2階の窓から道沿いのフェンスにかけて色とりどりの電飾が取り付けられ、明かりがつく前からなんだか楽しい。特別な趣向や仕掛けがあるわけではないけれど、カラフルな色彩が冬枯れの道には華やかでよく似合う。 暗くなってから外出する機会の少ないアプコは、昼間まだ明かりのついていない電飾を目にするだけでもう「きれいねぇ」と夢見る瞳。 我が家の前の道は、ハイキングコースにつながるどん詰まりの道。 夜になると帰宅する住人のほかには、ほとんど人通りも途絶え、せっかくイルミネーションを施しても見てくれる人もないので、わが家も含めてご近所でも簡単なリース以外の飾りつけをするおうちは少ない。 だから、Nさんのお宅のイルミネーションが始まると、アプコは勝手に自分ちのイルミネーションのように決め込んで、手をたたいて喜ぶのだ。 日が短かくなって、街灯を頼りに暗い道を自転車で突っ走って帰ってくるアユコにとっても、坂道をぐんぐん登ってきた先に明るく輝くNさんちのイルミネーションの明かりは、なんとなく心温まる嬉しいものらしい。ありがたいなぁと思う。
Nさん宅はNさんご夫婦と高齢のおばあちゃまの3人家族。 休日には、ご夫婦で庭木の剪定をしたり、山の斜面沿いにブロックを組んだり、仲良く作業をしていらっしゃる姿をお見かけする。ちょうど数年前まで曾ばあちゃんと3人家族だった頃の実家の父母の姿が重なって見え、普段通りがかりに挨拶をするとおおらかな笑顔で声をかけてくださるNさんのお人柄にどこか懐かしいものを感じたりする。 冬枯れの山道にNさん宅のイルミネーションが灯ると格段に嬉しい気持ちになるのは、遠くに住む父母の暖かい見守りにも似たぬくもりを感じることが出来るからかもしれない。
「おかあさん、見てみて!きれいきれい!」 習字の稽古の帰り道、夕日の残る風の中、Nさんのイルミネーションが早々と点灯されていた。夜の闇に浮かぶイルミネーションもきれいだけれど、黄昏時の電飾もほのぼのと暖かくうれしくて、車のスピードをうんと落として通り過ぎる。 「今年もありがとう」と、手を合わせる気持ちで・・・。
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