月の輪通信 日々の想い
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2004年01月23日(金) 働くおじさん

寒い。
家の中にいても冷蔵庫の中みたい。
山の谷あいにある我が家は日照時間が短く、風が強い。
コタツから出られない、ストーブから離れられない、家のなかでもコートが脱げない。
いったい何、この寒さは?

朝、子ども達が起きてくる時間が確実に遅くなる。
うううっ、寒いよ、やだな、外へ出るの・・・。
風の強い日陰の道を毎日駆け下って登校する子ども達。
「アユコ、重ね履きのパンツ、履いていきな。オニイ、手袋持ったか?ゲン、今日こそは上着着ていってな。アプコ、今日はタイツ履く?」
いつも薄着の子ども達に一枚でも余分に着せようとする母。
「やだな、今日、運動場での体育だ。」
「僕だって、体育館の体育!日が当たらないから体育館の方が寒いんだよ。」
「アタシ、毎日マラソンがあるよ。寒いんだよ。」
それぞれが今日の寒さ自慢。
はいはい、判った。みんな頑張ってるね。

「うわっ!お湯が出ない。」
外付けの給湯器の配管が凍ったらしい。
おろおろ騒いでいたら、父さんがやかんにお湯を沸かし、外の給湯器の管を温めてお湯が出るようにしてくれた。
ありがとね。
寒いから外へ出るの、いやだなと思ってたら、父さんがさっさとやってくれて、なんかとっても嬉しかった。

「うわっ!ロッキーさんの水ががちがちに凍ってる。」
外の犬小屋で冬を越す我が家の愛犬ロッキーくん、さぞかし夜は寒かろう。
「犬って、えらいモンだなぁ。人間だったら凍死しちゃうよな。」
しっぽを振って散歩をねだるロッキーさんにドッグフード大盛りのおまけ。
せいぜい腹一杯にしてこの寒さを乗り切ってくれ。

数日前から我が家の周辺の水道管の工事をやっている。
うちの前の道は細い一本道で迂回路もないので、大きな工事をするたび、車両通行止めになる。
それでも近所の人たちにとって、この道は一本きりの生命線。
車を止められると、たちまち陸の孤島になってしまう。
だから「車が通れない」と言われると過剰なほどに権利を主張する。
「緊急車両が入れなかったらどうする。」「年寄りの送り迎えはどうする。」「宅急便は?生協は?デイサービスの車は?」
それで、今回の工事では、民家と離れたところでは、車の往来の少ない夜間に大部分の工事を行うそうだ。
冷たい川風の吹く真っ暗な山道での夜間工事。
山火事が怖いので安易にたき火をするわけにもいかない工事現場で、どんなお人がどんな顔をして、工事に取り組んでおられるのだろう。
夜、耳を澄ますと遠くで聞こえる工事の音。
きっと寒いだろうなぁ、手も足も冷え切ってしまうんだろうなぁ。
熱いお茶の一杯でも入れて上げたくなってしまう。

「寒いから幼稚園お休みしたい。」
むくむくとおさぼり心がのぞきき始めたアプコに、工事のおじさんの話をする。
「あ、ゴミのおじさんもきたよ。寒いのに今日も元気にゴミ持っていってくれて良かった。ゴミのおじさんも頑張ってるねぇ。」
私が今コタツのなかでめくっている朝刊も、真っ暗な山道をバイクで配達してくれる人がいる。
みんな偉いなぁ。
「さぁ、アプコ、暖かくなるお薬あげる。」
アプコの口に昨日買ったばかりのいちご味ミルキーの一粒を入れる。
「今日も頑張って歩こうかね、それとも車にする?」
「・・・歩いていく。」
アプコも偉いなぁ。
寒さのなか、働くおじさん達の頑張りをちゃんと感じることが出来るようになったんだな。
いちごミルキーの甘さに勇気百倍。
北風の中を走り出すアプコの背中は、ほんのちょっとだけ大きくなった。

偉い、偉い。
みんなも偉い。
オカアチャンも頑張るぞ!
山盛りの洗濯物を抱えて、ベランダへ上がる。
谷筋にある我が家のベランダは、吹きっさらしで格別寒いんだ。
凍える指で全部の洗濯物を干し終わって、最初に干したタオルを見たら、
凍ってるじゃん!
この寒さって、どうよ?


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