月の輪通信 日々の想い
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2003年12月18日(木) キャラメル泥棒

「あ、私のキャラメル、食べたな!」

アユコが食品庫の前で、怒っている。

「誰?!」

とは聞かない。

ゲンに決まっている。

果たしてにやにや笑いながら逃げに入るゲン。

「やっぱりゲンや!」

我が家で一番の食いしん坊はゲンと決まっている。



「我が家の子ども達は分け合うことが上手」と誉めたばかりでなんだが、ゲンは時々、盗み食
いをする。

誰かが大事にとっておいたキャラメルとか、いつも剣道の稽古のあとに配る「飴袋」の中のキャ
ンデーとか、いつの間にかこそこそっと食べて、包み紙をポケットに隠していく。

翌日洗濯機の中からとりどりの包み紙が見つかって、

「やっぱり、ゲンや!」

と言うことになる。

兄弟の中で一番体格もよく、食欲も旺盛でエネルギッシュなゲン。

4人兄弟の3人目という「ワリを喰ってる」存在だけに、自分の欲しい物は自分で調達するとい
う自立の精神が確立している。

「おかあさん、これ食べていい?」

と、きまじめに聞いてから封を開けるアユコとは、アプローチの仕方が全然違うのだ。



そういえば、我が家の血液型は5人がA型。そして、ゲンだけが何故かO型である。

「やっぱりなぁ。」

どうも4人の子どもの中でゲンだけが毛色が違っていると思えることが多い。(もちろん4人とも
正真正銘父さんと私の遺伝子をもれなく受け継いではいるのだけれど・・・。)

身長順に並ぶと、いつも前から2番目か3番目の他の兄弟。後ろから数えた方が早いゲン。

他の3人が揃ってゲームをしているときにも、一人離れて、虫取りだか、さかなとりだかに行っ
てしまうゲン。

甘え上手で、父や母に思い掛けないちょっかいをかけてアピールするゲン。

良くも悪くも、妙に要領のいいゲン。

誰かが駆け込もうとしているトイレに横からひょいと閉じこもったり、誰かの失敗を抜け目なく見
つけてからかってみたり。

大概の場合、「おかあさ〜ん、ゲンが・・・」と誰かが訴えてくる事になっているが、三対一で「ゲ
ンが悪い」と言うことになることが多くて、はなはだ分が悪い。



一方、人なつっこく、外面の良いゲンは家の外では一番受けがよい。

おじいちゃんおばあちゃん達にも、お向かいの気むずかしいおじさんにも、なんとなく一番かわ
いがってもらえるゲン。

一昔前のやんちゃ坊主の風貌のゲンは、きまじめで取っつきにくいオニイ、オネエより面白み
があるのだろう。

「何とも憎めないヤツ。」

そんな要領のいい愛され方を身につけているゲンは、他の兄弟達には尺に障る存在になるの
かもしれない。



「この子は、不思議な事に、私が階段を上り下りするときには、必ず手を取って一緒に歩いてく
れる。」

95歳になるひいばあちゃんが、事あるごとにゲンを誉めて下さる。

以前には近所の一人暮らしのおばあちゃんがお散歩しているときに、ゲンが手をつないで歩い
てくれたと、嬉しそうに話して下さったこともある。

お年寄りの足下を気遣って、すっと手を出せるタイミングの良さと、屈託のない優しさ。

それは、要領よく誰かの秘蔵のお菓子をかすめ取ったり、けろっと笑ってごまかすこだわりの
なさの裏返し。

ゲンのもつ一番の長所でもあり、欠点でもあるのだなぁ。



今日、日記の過去ログを読み返していて、ゲンに関する記述が一番少ないことに気付いた。

兄弟が多いと、そのスナップ写真の量がどうしても不公平になると言うけれど、うちの場合はや
はりワリを喰っているのはゲンのようだ。

「何をやらかすか予測不可能」

かわいいけれどどこか親の予測範囲を超えているゲンの明日を、面白がって見ている私。

「アユコ、食べちゃった物はしょうがないから、他のをさがしな。」

ゲンの食いしん坊を本気で怒る気もなくて、適当にあしらう。

ゲンの小憎たらしい要領の良さが、実は私もたまらなくかわいいのだ


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